#124 ボーイ・ミーツ・ガール 8
休日の昼下がり
冬の割には人通りも多く
行く先々は人であふれかえっていた
どこへ行くでもなく
俺たちは二人並んで街中を歩んでいく
「で、どこいくつもりなんだ?」
人ごみに、少しうんざりしながら訪ねる
「なに?もう如何わしいこと考えてる?」
含み有り気に、ほくそ笑む
「帰る」
そこに突っ込む気力もなし
「え~っ!?つまんなぁ~い!」
子供のように頬を膨らませて言う
「そんなベタなこと言うやつは、一人で遊べ」
振り向くことなく歩き出す
「そこは突っ込んでよぉ~」
後ろから、抱き付いてくる
「こら!離れろって!」
暖かい温もりに焦る
「ふふふ~っ、嬉しいくせに~っ」
更にのしかかってくる
「で~、これからどうしようか?」
キョトンとした表情で聞いてきた
「やっぱり、何も考えてなかったな・・・」
わかってたけど
「考えてるよ~」
そうは思えない顔で言う
「とりあえず・・・」
今考えてるだろ
「歩こっ!」
手を引っ張って歩き出す
「家に向かってか?」
あきれながら言ってやる
「帰らないよ・・・!」
気のせいか、声のトーンが下がった気がした
「そうだな」
少し引っ掛かりを感じるが、そこは言うとおりにしておく
「とりあえず、何か食うぞ」
追い越しながら、繋がれた手を引っ張る
「・・・うん」
引かれた手に、少し戸惑いながらも
その表情は、いつもの笑顔に戻っていた
「もう、待てへんのか?」
縋るように声を荒げる
「既に、手遅れなのかもしれません・・・」
とあるビルの屋上から、人ごみを見下ろしながら言う
「この世界の彼女と、本来の彼女・・・」
「お互いは一つでありながら、その心は別の存在になってしまった」
嘘の存在と、真実の存在
望んでいたものを手にしたはずなのに、それはすぐに消えてしまう
「あの子は、望んだんや・・・」
同じように、人ごみを見下ろす
「初めて自分から、歩き出すことを」
それなのに、残された時間はもうない
あの子は残せるのだろうか?
自分が居たその証を
自分が望んだその場所で
「我々に出来る事は、一つだけです」
彼女の肩に手をかける
「苦しむことなく、全てを終わらせてあげる事」
「それが、ウチらの仕事やからな」
そこは幾度も味わってきたこと
そしてこれからも、やらねばならない事
「アンタは、ええの?」
改めて、たずねる
「なんでしょう?」
「自分のムスコが、苦しむことになるかもしれへんのやで?」
こんな仕事をするために
自分の家族に、全てを明かすことが出来ない
それなのに、自分の息子がそれに深く関わっているのだ
心境は複雑だろう
「信じていますから」
その表情は、誇らしげだ
「自慢の息子ですからね」




