#121 ボーイ・ミーツ・ガール 5
わたしは、夢を見続ける
自分の現実から逃げ出して
自分の名前も投げ出して
『嘘』の中で過ごしてる
わたしは、彼と出逢った
彼の瞳は、不思議な輝きを持っていた
全てを包み込む優しい瞳
わたしは望んだ
『この世界が自分にとって本当になる事』を
「ここに、アイツが・・・?」
真由美が持っていた、メモの住所を頼りに
たどり着いたのは、都内の病院
「ゆうきちゃんが、ここに・・・?」
不安そうに、病院を見上げる
「やめとくか?」
答えを知っていて尋ねる
「・・・・・・いく」
覚悟を決めて言い放つ
「いいんだな?」
念を押す
ゆっくりと、力強く頷く
院内の受付で、彼女の部屋を尋ねる
すると、急に受付内に緊張が走る
「来たのか・・・」
現れたのは、以前出逢った白衣の人物だった
「アンタは・・・」
相も変わらず、その表情は硬い
何もない部屋の中央に、彼女は居た
物々しい機械に繋がれて、ただただ眠り続ける彼女
いつもの笑顔が無いだけで、全くの別人に見える
「これがホントに、アイツなのか?」
思わず尋ねる
「信じられないのも、無理はあるまい」
腕を組みながら、淡々と受ける
「彼女は、自分の夢に逃げ込んだんだ」
眠り続ける彼女を、優しくなでる
「ゆうきちゃんは、起きないんですか?」
真由美が疑問を口にする
「こればかりは、彼女しか知りえない・・・」
「真由美?」
今度は優気が疑問を口にした
「アイツ・・・なんて言ってたんだ?」
尋ねた瞬間、真由美の表情が曇る
「バイバイ・・・って・・・」
その瞳に涙があふれ出す
「・・・・・・」
そのまま病室から出る
「優ちゃん・・・?」
呼び止める声も届かない
「・・・居るんだろ?」
空を見つめて呼びつける
「なんぞ、用か?」
現れたのは『死神』を名乗る少女
漆黒の衣に、少女の姿に不似合いな大鎌
しかし、人ならざる怪しき瞳を持っている
「アイツは、戻ってきてるのか?」
感情が高ぶるのを抑える
「どうやろな?」
どこかとぼけた表情で応える
「どっちが、ええ思う?」
逆に質問された
「このまま、覚めない夢を見続けるか」
「痛みを伴う現実に生きるか」
彼女の現実
痛みから逃げ出して、うつろな夢の中へ
「アンタなら、どっちを取る?」
「・・・・・」
彼女は、逃げることを選んだ
そして、手に入れたのは『嘘』という『夢』
でも、いつか夢から覚めないといけない時が来る
「いつか、俺は言ったよな?」
その答えは変わっていない
「それは、アイツが選ぶことなんだ」
眠り続ける彼女の病室に、視線を流す
「選んだ答えがどうであれ、その時は笑って見送ってやるさ」




