73 私の決断
氷火様のお屋敷に着くと妖月様と私は氷火様の部屋に向かう。
だけどいつもは外で待機している界魔さんが一緒に私たちの後ろについて来た。
界魔さんがついて来るなんて珍しいな。
そう思ってるうちに氷火様の部屋に着いた。
妖月様は扉をノックした後に扉を開く。
「待ってたよ。妖月」
部屋の中には氷火様がソファに座っていた。
「やはり美音ちゃんも一緒か」
「当たり前だ。美音は一番の関係者だからな」
「それはそうだね。まあ、二人とも座って」
私と妖月様は氷火様に言われた通りにソファに座る。
一緒について来た界魔さんは扉の側に立っている。
チラッと氷火様は界魔さんのことを見たがすぐに私たちの方を見た。
「美音ちゃんは妖月から今回の件について何か聞いた?」
「はい。モンスター世界と人間世界が離れるって聞きました」
「そう。なら話は早いね。妖月の言った通りに三日後には二つの世界は引き離される」
氷火様も妖月様と同じ言葉を言った。
やっぱり二つの世界が離れることは事実なんだね。
私はどうしたらいいのかな。
「美音ちゃんには時間がないが選んで欲しい。このモンスター世界で生きるかそれとも人間世界に戻るか」
「あ、あの! もう一度二つの世界が繋がることはあるんですよね?」
「ああ。それはあるだろうがそれがいつかは分からない。それに私の経験では一度世界が離れると平均して約100年は離れていることが多い」
100年……そんなに離れていたらお母さんも私も次に二つの世界が繋がるまで生きてることはできないだろう。
私は思わず俯いてしまう。
「美音ちゃんがモンスターお役所で頑張って働いてモンスターたちとも仲がいいのは知っているが今回人間世界に帰らなければ人間世界の美音ちゃんの家族や友達とは会えないと思った方がいい」
「そうですか……」
「時間はない。美音ちゃんには酷な話だがすぐに決めて欲しい」
氷火様の言葉に私は膝の上で拳を握り締める。
お母さんか妖月様かすぐに選ばないといけないなんて。
それに妖月様にはまだ告白してないからモンスター世界にいても妖月様のそばにずっといられるとは限らない。
「美音よ。お前は人間世界に帰れ」
その時、妖月様が私に向かって言った。
「え?」
「人間世界には母親がいるのであろう? 親と離れる辛さは私にも分かるからな」
その言葉に私は妖月様が幼い時に妖月様のお母様と離れ離れになったことを思い出した。
あの時妖月様のお母様は自分の旦那様の方を選んで妖月様と離れてしまった。
その時に妖月様はきっとすごく寂しい経験をしたのだろう。
だから妖月様は私に母親のいる人間世界に帰れって言ってくれているんだ。
でも私がもし人間世界に帰ったら妖月様はまたあの広いお屋敷に一人で住むことになるのかな。
私はグッと拳に力を込めた。
「あ、あの! 私、一度人間世界に帰ってお母さんに会ってきます! そしてもう一度モンスター世界に戻ります!」
私はそう妖月様に向かって言った。
「それは時間的に無理だ。人間世界に帰るダンジョンを通って行くだけでかなりの時間を使う。それに世界が離れるまで三日というのも最大で三日ということで今すぐに二つの世界が引き離される可能性もある」
「そんな……」
妖月様が静かに私を見つめる。
私を見つめる赤い瞳には優しくてどこか寂しい光が宿っている。
やっぱり妖月様を一人にしちゃダメだ。
そんなことをしたら私は絶対後悔する。
でも私の脳裏にお母さんの顔が浮かぶ。
お母さん! 最後に会いたかったけどごめんね。
私の目から涙が零れ落ちた。
「やれやれ、やはり私の出番ですかねえ」
「え?」
それまで黙って立っていた界魔さんの声が聞こえた。




