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モンスターお役所~モンスターさんたちにも生きる権利はあると思うんです~  作者: リラックス夢土


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72 前兆の地震




「美音さん。この資料はとても見やすかったわよ」


「ありがとうございます。サヴァン主任」



 私はサヴァン主任に褒められて嬉しくなる。

 サヴァン主任はキョウカ主任が退職した後にキョウカ主任の代わりにこの係に異動して来た主任だ。

 サヴァン主任は女性だが種族が「岩鬼族」なので身体が大きく硬い茶色の皮膚をしている。

 基本的には人型ではあるものの見た目からしてなんかたくましい人だ。


 でも見た目は怖そうに見えるけどサヴァン主任はキョウカ主任と同じく優しい主任だ。

 キョウカ主任と別れた時は悲しかったけどこうやって別れの後には出会いもある。

 私だってずっとこの係にいるわけじゃないからいろんなモンスターさんとの出会いと別れを経験しながらこのモンスターお役所で働いて行くんだろうな。



「そういえばさあ、今日は何か変な天気だよね」



 私が席について仕事をしているとミツールさんが話しかけてきた。



「そういえば空がやけに赤いような気がしますね」



 今朝、出勤した時に空は晴れていたのだがいつも通りの空ではなく朝焼けのような薄い朱色がかった色をしていた。

 窓から外を見ると朝よりもさらに空が赤くなっている気がする。

 私はお屋敷を出る時に妖月様が空を見上げて厳しい表情をしていたことを思い出す。



 車の中でも妖月様は一言も口を開かなかったな。

 何かこの赤い空と関係あるのかなあ。



 その瞬間、グラグラッとモンスターお役所の建物が揺れた。



「きゃあ! 地震!?」



 私は思わず叫んだ。

 だが揺れはすぐに止まった。



「みんな大丈夫か!?」



 ブオン係長が周囲の係のモンスターさんたちに声をかける。

 みんな驚いたようだけどケガ人はいないようだ。



「美音さんも大丈夫か?」


「はい。ブオン係長」



 私は自分が無事なことをブオン係長に言った。



 ああ、びっくりした。

 この世界も地震ってあるんだね。



 私はただの地震だと思ったのだがブオン係長は窓から外を見ながら呟いた。



「この空に今の地震ってことは……もしかしたら……」



 ブオン係長は厳しい顔をしている。



 どうしたのかな? 今の地震ってただの地震じゃないのかな?



「ブオン係長。今の地震って普通の地震じゃないんですか?」


「ああ、美音さんは初めてかもしれないけど、私がモンスターお役所で働きだした頃にも同じように空が赤くなって地震が起きたんだ。そしてその時にモンスター世界と人間世界がダンジョンで繋がった」


「え? そうなんですか?」


「私も後で知ったんだが「赤い空」と「地震」が重なる時はモンスター世界と人間世界が繋がったり離れたりする前兆らしいんだ」



 え? 「赤い空」と「地震」が重なるとモンスター世界と人間世界が繋がったり離れたりするの?

 でも今は二つの世界は繋がっているからこの前兆は二つの世界が離れるってことになるのかな?



 私は以前から考えていたモンスター世界と人間世界が引き離された時に自分がどっちか選ばないといけないことを思い出す。



 本当に二つの世界は離れちゃうのかな。

 妖月様ならもっと詳しく知ってそうだよね。

 所長室に行って妖月様に聞いてこようかな。



 私がそう思った時に内線電話が鳴った。

 電話に出ると妖月様の声が聞こえる。



『美音か?』


「はい、そうです」


『至急、所長室まで来い』


「あ、あの妖月様! 今の地震は」


『その件で話があるのだ。時間がないから自分の荷物を持って早く来い』


「わ、分かりました!」



 私は電話を切ってブオン係長に所長に呼ばれたことを話して所長室へ向かう。

 所長室には妖月様がいた。



「妖月様」


「来たか。美音よ、今から氷火の屋敷に向かう。ついて来い」


「え? 氷火様のお屋敷ですか?」


「至急の用件なのだ。三日以内にモンスター世界と人間世界が引き離される」


「え?」



 私はブオン係長の言葉が頭を過った。



「もしかしてさっきの地震は二つの世界が引き離される前兆ですか?」


「そうだ。空が赤くなり地震が起こる時に二つの世界は繋がったり離れたりする。氷火も今の地震で確信しているだろう。これからどうするかを決めるために氷火に会いに行くのだ」



 そんな。二つの世界が離れる時にどっちを取るか私はまだ決められていないのに。



「私も一緒に行っていいんですか?」


「当然だ。美音が人間世界に帰れるチャンスは完全に二つの世界が離れるまでの三日間しか猶予がない。だから美音を呼んだのだ」



 妖月様はそう言って私を見つめる。



 せっかく妖月様のことが好きだって気付いたばかりなのに。

 妖月様と離れなければならないの?

 でも人間世界にはお母さんがいるし。



「行くぞ。美音」


「は、はい」



 私は妖月様と一緒に氷火様の屋敷に向かった。




 


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