66 妖月の力
私は声の聞こえた方を見た。
そこには空を飛んでこちらにやって来る妖月様の姿がある。
「妖月様!」
妖月様の姿を見てホッとした瞬間、私が掴んでいた木の枝が折れた。
「きゃあああ!」
「うあわああ!」
私とカイガさんは川の水に押し流された。
水の中で必死に手足を動かして泳ごうとするが水の勢いが強くて泳げない。
く、苦しい! もうダメだ!
その時に私は妖月様と出会ってからの出来事やモンスターお役所での保養所係で働いていた日々が脳裏に浮かんだ。
ダンジョンを抜けて妖月様にモンスターお役所に雇ってもらったのにその恩も返せないで死ぬなんて。
ごめんなさい。妖月様。
次の瞬間、「ザバアーン!!」という轟音と共に私は自分が息ができることに気付く。
「ごほっごほっ!!」
「美音! しっかりせよ!」
自分の近くで聞こえる妖月様の声に私は苦しい息をしながらそちらを見る。
すると私の周囲に水がなかった。
いや正確には水があったのだが私と妖月様の周辺の水は水の壁のようになって何かにせき止められているようだった。
何で水が?
でもその理由はすぐに分かる。
妖月様の身体が赤い光のようなモノで包まれてその赤い光が川の水に触れて川の水の流れを押さえていた。
「美音! 私が水をせき止めてる間にそのモンスターを連れて高台へ行け!」
妖月様に言われて私は近くに倒れてるカイガさんに気付く。
「カイガさん!」
私は慌ててカイガさんに近付いて声をかける。
まさか、死んだりしてないよね!?
「う~ん」
カイガさんは僅かに唸って身動ぎをした。
大丈夫だ。カイガさんは生きてる。
「早くせぬか! 美音!」
「は、はい! カイガさん! しっかりしてください!」
「う~ん、美音さん……?」
「起きてください。手を貸しますから高台へ逃げましょう!」
私はカイガさんの身体を支えて立ち上がろうとするがカイガさんは私よりも弱っているようでなかなか立ち上がれない。
妖月様の方を見ると妖月様の今まで見たことのない必死な形相が見えた。
妖月様の力でもこれだけの水をせき止めるのは大変な力が必要なんだね。
急いで避難しないと妖月様も水に飲み込まれちゃうかも!
だけどなかなか私とカイガさんは立ち上がれない。
「クッ! 仕方ない!」
妖月様の切羽詰まった声が聞こえる。
私は妖月様を再び見た。
すると妖月様の身体が物凄い大きな赤いオーラで包まれる。
その瞬間、赤い光が大きく膨らみその光はせき止められていた水に向かって放たれた。
ジュワワワーーー!!
水が一気に水蒸気になって蒸発する。
川から溢れた水は蒸発して消えていく。
凄い! 妖月様の力で水が蒸発したの!?
そしてその赤い光はさらに大雨を降らしている空へとも向かっていった。
すると空の雨雲が渦を巻くようにして消えていく。
数分後。
川から溢れ出した水は消えて空を覆っていた雲も無くなった。
もしかして妖月様が雨雲を吹き飛ばしたの?
妖月様の力がそんなに強いものだとは知らなかった。
そして妖月様の方を見る。
妖月様の身体がぐらりと揺れてその場に倒れた。
「妖月様!?」
私は慌てて妖月様に近付いて声をかける。
「妖月様! 妖月様! しっかりしてください!」
妖月様の身体を揺さぶるが妖月様は目を閉じたままだ。
そんな!? このまま妖月様が死んじゃうってことないよね!?
「妖月様! 誰か! 妖月様を助けてえ!」
私は大声で助けを呼んだ。
「妖月!」
そこへ聞き慣れた声が聞こえた。
私がそちらを見ると氷火様の姿があった。
「氷火様! 妖月様が!」
「分かってる。私が妖月を病院に運ぶから美音ちゃんは他のモンスターと合流して」
「で、でも!」
「妖月のことは私に任せて。そっちのモンスターもケガをしてるんだろ?」
私はカイガさんを見る。
カイガさんは足を引きづっていた。
そうだ。妖月様はこれくらいで死んだりしない。
私にはモンスターさんを助ける使命があるんだ。
「分かりました、氷火様。妖月様のことお願いします!」
「ああ。分かったよ」
ふわりと妖月様の身体が宙に浮かび氷火様の身体が僅かに白く光ると氷火様の姿も妖月様の姿もその場から消えた。
妖月様。絶対死なないでください!
私は私の仕事を最後まで頑張りますから!
そして私はカイガさんに手を貸してみんなの元に戻った。




