65 堤防決壊
窓に強い雨が叩きつけて風も強まってきた。
窓ガラスがガタガタと揺れる。
「だいぶ雨や風が強くなってきましたね」
「そうだね。さっき防水係の管理室からも予想より早く天嵐の本体が近くまで来てるって情報が来てたもんね」
私の言葉にカイガさんも心配そうに窓の外を見る。
この部屋は「避難誘導係」の待機室だ。
私やカイガさん以外も同じ「避難誘導係」のモンスターさんたちが待機している。
私たちがこの防水係のある事務所に着いてからすぐに雨が降り出した。
そしてその雨は時間が過ぎるほどに強まっていた。
妖月様もきっと対応に追われてるんだろうな。
今日は妖月様とは朝の出勤以来会ってはいない。
だけどモンスターお役所の所長の妖月様が天嵐の対応に追われてるのは想像できる。
何も被害が出ませんように。
私は神様にお祈りをする。
その時待機室の部屋の扉が勢いよく開いた。
「管理室より連絡がありました! 街の東の地域を流れる「東川」で氾濫の可能性があります。東川流域のモンスターを街の中央まで避難させるように指示がありました! 避難誘導係は出動してください!」
その言葉で待機室のモンスターさんたちの動きが慌ただしくなる。
私も自分の荷物を持って指示されていた車に乗り込んだ。
何台もの車が「東川」の地域に向かって出発する。
外は私が部屋の中で思っていたよりも風も雨も強い。
カイガさんも私と同じ車に乗っている。
私の乗った車が「東川」の堤防の近くに到着した。
「急いで一般モンスターをバスに乗せて!」
「はい!」
東川に近い所に住んでいる一般モンスターさんたちは自分の荷物を持って避難誘導係の指示でバスに乗り始めた。
「美音さんたちは逃げ遅れてる一般モンスターがいないか家に声をかけて確認して!」
私の班の班長のモンスターさんの指示で私は一般モンスターさんの家に向かって大声で声をかける。
「誰かいますか! この地域には避難の指示が出ています! 今すぐ避難してください!」
「美音さん! 僕も手伝うよ! 家にいる方は避難してくださーい!」
私とカイガさんは二人で各家を確認していく。
風と雨はさらに強まる。
「よし、美音さん! もうこの辺の家にはモンスターはいない! 一度、みんなの所に戻ろう!」
「はい! カイガさん!」
私は吹き付ける雨風の中を歩いてみんなの場所に戻ろうとした。
その時に「ゴゴゴゴゴゴゴーー!!」という物凄い音が聞こえた。
「大変だあ! 東川の堤防が決壊したぞお!」
誰かの叫び声が聞こえて道の向こうの方から大きな津波のような水がこちらに向かってくるのが見えた。
私は近くにあった少し高台になってる部分を見つけてカイガさんに向かって言った。
「カイガさん! あそこに逃げましょう!」
「うん!」
しかし押し寄せる水のスピードが速くて私が高台の階段を上った時に後ろでカイガさんの悲鳴が聞こえた。
「うわああああ!!」
私が後ろを振り向くとカイガさんの身体を水が押し流そうとする姿が見えた。
「カイガさん!!」
私はとっさに近くの木の枝を片方の手で掴んでもう片方の手でカイガさんの手を掴んだ。
「美音さん!!」
カイガさんは水に押し流されそうになりながらも必死に私の手を掴んだ。
「ぐうううう!!」
私は自分の片腕にカイガさんの体重がかかり痛みを覚える。
でもこの手を離したらカイガさんが死んじゃう!
「美音さん! 美音さんまで死んじゃうよ! 手を離して!」
「ダメです! 諦めたら全てが終わっちゃうんです!!」
私は死んでもカイガさんの手を離すものかと必死に力を振り絞る。
段々と私の腕が痺れて限界になる。
だ、誰か! 助けてえ! 妖月様あああ!!
「美音!!」




