57 かき氷の値段
氷火様のお屋敷で人間とモンスターの歴史を聞いた私は妖月様と妖月様の屋敷に帰ってきた。
帰りの車の中では妖月様は少し不機嫌そうだった。
妖月様が氷火様と違い人間と完全に縁を切ろうと考えているのかは分からない。
もしかしたら人間に嫌なことをされたことがあるのかも。
でも妖月様だって人間のことをよく知ることができたらきっと考えを変えてくれるかもしれない。
氷火様のように長い時間をかけても人間との共存が未だに叶えられていないのだからこの問題は一朝一夕で解決できるものではない。
それでも私は妖月様に人間を嫌わないで欲しかった。
次の日。いつも通りに妖月様とモンスターお役所に出勤した。
妖月様は特に不機嫌という感じはなくいつも通りに所長室に向かって行った。
私も自分の職場に出勤する。
「おはようございます。ブオン係長」
「おはよう。美音さん。こないだ書いてくれた宿泊体験記の記事が今度の会報誌に掲載されるからね」
「わあ、本当ですか?」
「ああ、明日には出来上がるよ」
私が初めて本格的に任された仕事だから早く出来上がった記事を見たい。
その記事を見て保養所のお客さんが増えるといいんだけどな。
保養所の運営も赤字ではやっていけない。
「きっと良い反応が来ると思うよ」
ブオン係長は笑顔を私に向けてくれる。
よし、今日も頑張ろうっと!
私は自分のパソコンで作業を始めた。
昼休みになり今日はキョウカ主任とモンスターお役所の外で昼食を食べることになった。
キョウカ主任が「奢ってあげるから一緒に行きましょう」と誘ってくれたのだ。
私は初めて職員食堂以外でお昼を食べることになった。
そういえばキョウカ主任って「かき氷」を食べてるってミツールさんが以前言ってたような。
私もお昼は「かき氷」になるのかな。
別にかき氷であれば食べられはするがそれが昼食となると午後からお腹が空くような気がする。
だからといってかき氷を大量に食べるわけにはいかない。
「こっちよ。美音さん」
「はい」
私はキョウカ主任とはぐれないように気を付けてキョウカ主任の後についていく。
モンスターお役所の外も大きなビルが立ち並ぶ都会的な場所だ。
キョウカ主任は歩いて近くのホテルの中に入って行く。
え? ホテルの中のレストランとかで食べるのかな?
ホテル内のレストランって値段が高くないの?
私は東京にいた頃を思い出す。
東京とかではホテル内のレストランはランチでもかなり高額だったはずだ。
いくらキョウカ主任が奢ってくれると言っても気が引けてしまう。
でもかき氷だったらそんな高い値段しないかも。
ああ、でもそうするとやっぱりお昼は「かき氷」じゃないとなのかなあ。
「ここよ」
キョウカ主任がホテル内のレストランの前で足を止める。
どう見ても「高級レストラン」の雰囲気だ。
「あ、あの。ここって値段もお高いんじゃ……」
「あら、気にしないで。ここは私が支払うから」
「でも……」
「さあ、入りましょう」
キョウカ主任は私の言葉を無視してお店に入る。
私もその後について行った。
店員の人が席に案内してくれた。
「さあ、何でも頼んでね」
私はメニュー表を渡されて驚いた。
え? 「ハンバーグ定食」が銀貨1枚!?
銀貨って銅貨の5倍の価値があるんだったよね。
こんな高いもの頼んじゃったらキョウカ主任に悪いよ。
私も「かき氷」にしないとかな。
そう思ってメニュー表の「かき氷」の値段を見て驚く。
か、かき氷も銀貨1枚!?
どんな「かき氷」なの!?




