56 似ている理由
「このモンスター世界と人間界は50年前から繋がっているけどそれ以前にも繋がったり離れたりを繰り返しているんだよ」
「え? そうなんですか?」
「ああ、そして繋がる度に私はその時の人間界の権力者にモンスターと共存できないかと親書を送ったが答えは同じ。「化け物」と共存する気はないってね」
化け物って……
モンスターさんたちをよく知らないで差別するなんて……
「じゃ、じゃあ、もう人間との共存は諦めてしまったんですか?」
私は縋る思いで氷火様に尋ねた。
このまま未来永劫モンスターさんたちと一緒に暮らすことはできないのだろうか。
それはあまりに悲しすぎる。
「美音ちゃんはこのモンスター世界に来て人間界に似ているって気がしなかったかな?」
氷火様の言葉で私はこの世界に来た時のことを思い出す。
東京の街と間違うほどにこの街は東京に似ている。
いくつか違いはあるけどモンスターお役所だって基本はパソコンで仕事したりしてるしこの街で「人間」の私が生活が出来ているのだから人間界に似ているって言ってもいいだろう。
「そうですね。とても似ているって気がしました」
「そうだろ? その理由は二つの世界が繋がる度に人間の生活のいい部分をこのモンスター世界に取り入れて来たからだよ」
へえ、そうだったんだ。
だからこの街は東京に似ているのか。
「でも一番の理由は「人間」と「モンスター」が完全に「異質なモノ」になるのを防ぐためだよ」
私はハッとした。
人間は「自分と異質なモノ」を排除したがるがモンスターさんたちが自分たちと同じ「心」や「知能」を持ち「同じ文化的生活」をしていたら。
そうしたらまだ人間側もモンスターさんたちを受け入れられる可能性はある。
「それはいずれ人間とモンスターさんたちが一緒に生活をしても困らないようにですか?」
「その通りさ。今すぐは無理でも私はまだ人間との「共存」を諦めていない。まあ、妖月のように「人間」とは完全に縁を切った方がいいと言う者もいるけどね」
私は妖月様を見る。
妖月様は人間との縁は切った方がいいと思ってるの?
「人間との共存など「夢物語」だ。今回世界が繋がった時だって日本の首相とやらに親書を送ったが「共存はしない」と断られたしな」
妖月様は憎々し気な表情をする。
そうだったのか。日本の首相はモンスターさんたちとの「共存」を断ったのか。
「もしかしてダンジョンから人間がこちらの世界に来ないように戦っているのは「共存」を断ったからですか?」
私は妖月様に尋ねる。
「そうだ。正式に「共存をする」という約束が成されない以上、このモンスター世界に人間を入れるわけにはいかない。奴らは自分の利益となるなら平気でモンスターを殺害するだろうからな」
たぶん妖月様の言ってることは当たっていると思う。
同じ人間同士でさえ「利益」を求めて「争い」を繰り返しているのが人間なのは私も歴史を見て知っている。
人間はこのモンスター世界が手に入るなら平気でモンスターさんたちを「敵」と言って迫害するだろうことは容易に想像できる。
でも氷火様は人間との「共存」を諦めていないんだよね。
それが私には未来の希望に思えた。
今は無理でもいつの日か人間とモンスターさんたちが仲良く暮らして欲しい。
そして妖月様にも人間を好きになってもらいたいな。
「まあ、これが人間とモンスターの歴史だよ。でもこれは一部の支配者層しか知らない真実だからね。美音ちゃんも他のモンスターに話したらダメだよ」
「分かりました。氷火様」
私は氷火様の言葉に頷いた。
自分に何ができるか分からない。
でもモンスターお役所で働いてこの街で「人間」の私が生活することにはきっと意味があるはず。
私は強くそう思った。




