53 人間に対する感情
「僕は個人的には人間を憎んだりしてないよ」
「え? そうなんですか? 人間とダンジョンで戦っているのに?」
「それはもちろん知ってるよ。でも僕が人間に何かされたわけじゃないし。でも人間は僕らを見ると攻撃してくるからこちらも身を守るために反撃するのは当たり前でしょ」
「それじゃあ、人間側がモンスターを攻撃せずに「共存」したいって言ったらミツールさんは賛成ですか?」
私は若干の驚きを覚えながら言った。
「うん。別にかまわないよ。まあ、この街に住むなら「ルール」さえ守ってくれればいいんじゃない」
私はミツールさんのような一般モンスターさんは人間が嫌いなのかと思っていた。
そしてダンジョン内で知り合ったトカゲのモンスターさんの言葉を思い出す。
『人間はモンスターを見ると問答無用で攻撃してくるから話し合いにならないよ』
そうか。モンスターさんたちはけして人間に対して悪い感情を持っている者ばかりじゃないんだね。
身を守るために戦ってるだけか。
それなら余計に人間とモンスターが「戦う」のは間違っているよね。
「この街の「ルール」っていろんな種族のモンスターが「共存」するために作られたんですよね」
「そうだよ。だから本来敵対するような種族同士でもこの街では「平等」でありどのモンスターが一番とかはないからね」
「でもこの街には「王人」様みたいな方もいますよね?」
「ああ、だって一つの社会を形成するのに代表者は必要だもん。所長や王人様は「力」も持ってるし代表者としては適任なのは皆が認めてることだよ」
妖月様や氷火様は街の代表者として必要な存在ということか。
それにしても違う種族が「ルール」を守ることで平等になり共存しているなんて人間界よりもモンスター世界の方が進んだモノの考え方してる気がするな。
人間界では「人種差別」も「男女差別」もいつも問題にされていた。
なのにこのモンスターの街では「ルール」さえ守れば皆が平等に扱われる。
これってできそうでなかなかできないことだよね。
「それにさ。人間って美音さんと同じような姿でしょ?」
私はミツールさんの言葉にドキリとする。
「そうですね」
「だったら十分に僕らと共存できるじゃない。極端に大きな身体とか事務仕事ができないような身体しているならともかくこの世界だって「人型モンスター」は働くのに有利だもんね」
確かにこの役所では完璧な人型ではないものの人型モンスターは多い。
私だって仕事できてるぐらいだもんね。
「そうですよね。でもなら何で人間とモンスターって今まで「共存」しようとしなかったんでしょうか?」
「う~ん、僕もそこまでは分からないなあ。人間がこの世界に来ないようにしているのは上の人たちだからね」
上の人って妖月様や氷火様のことだよね。
やっぱり妖月様に人間とモンスターの歴史について聞いた方がなぜ人間と争うのか分かる気がする。
私は昼食を食べた後にまた体験宿泊の記事作成の作業をした。
それから数日後。
私は妖月様に言われた。
「明日は役所は休みだから美音は出かける準備をしておけ」
「どこかに行くんですか?」
「ああ。氷火の屋敷に行く」
「氷火様の?」
「あの屋敷に人間とモンスターの歴史に関するモノがあるからな」
氷火様の屋敷に人間とモンスターの関係を示すモノがあるのか。
私は人間とモンスターの歴史が分かることにちょっと緊張する。
それが分かればおそらく人間となぜ争っているのかが分かるに違いない。
「分かりました。準備をします」
「うむ。では明日は私が運転の車で行くからな」
「はい」
私はその日は気持ちが昂ってあまり寝れなかった。




