45 入札金額の汚職
帰りの車の中で私は思い切って訊いてみる。
「あ、あの、妖月様」
「なんだ?」
「さっき氷火様が「汚職」が行われてると言ってましたがどんな「汚職」なんですか?」
妖月様は私にチラリと視線を向ける。
「詳細はまだ調査せねばならぬが「入札」に関するもののようだ」
「入札ですか?」
「そうだ。普通は役所が発注する委託や工事などは「入札」が行われて一番安い金額を提示した業者がその仕事を請け負うのだ」
なるほど。確かに安い金額で仕事をしてもらった方がいいよね。
「その入札には予め役所側が設定した「入札金額」というものがある。業者はこの入札金額より安い金額を提示しなければその仕事は請け負えぬ」
「そうなんですね」
「入札金額は普通の入札では公表されることはない。だがその入札金額を業者から金を受け取り業者にバラした役人がおるようだ」
「入札金額がバレるとどうなるんですか?」
私は「入札制度」のことはよく分からない。
「例えば入札金額が金貨100枚だとしたらその情報を得た業者は金貨99枚で仕事を請け負うと提示することができる」
「それが問題なんですか?」
「……当たり前だ。入札金額を知らなければその業者が仕事を取ろうと思ったらもっと金額を下げるはずだ。金貨95枚とかな」
そうか。入札金額より安ければいいんだから入札金額のギリギリの金額を提示するってことか。
「本格的な調査はこれから行うゆえ、このことは誰にも話すなよ。美音」
妖月様の声が低くなる。
これは妖月様が怒っている証だ。
「はい! 誰にも言いません!」
「よろしい。それより美音の方は仕事は順調か?」
妖月様に言われて私は「宿泊体験記」の仕事を思い出す。
「実は今度ハコリン荘に行って「宿泊体験記」の記事を書く仕事があるんです」
「宿泊体験記?」
「はい」
私はブオン係長に言われた仕事について説明する。
「なるほどな。それで保養所の利用者が増えれば美音の成績が上がるぞ」
あ、そうか。このモンスターお役所は「勤務評価ランキング」があったよね。
「勤務評価ランキングが上がるということですか?」
「そうだな。確実に以前より上がるだろうな」
う~ん、以前は99999位だったからここから上がることはあっても下がることはないような順位だったよね。
でも勤務評価ランキングが上がるのは嬉しいことだ。
よし! 頑張って宿泊体験記の記事を書こうっと。
「あ、でもハコリン荘まで車で行くんですけど道が分からなくて。道路地図とかってありますか?」
「それならば「自動案内機」を車に付けてやろう」
「自動案内機ですか?」
「そうだ。目的地までの道路を道案内してくれる機械だ」
それって「カーナビ」だよね。
この世界では「自動案内機」って言うんだね。
「でも妖月様にまた買ってもらうのは……」
「別に新しく買うわけではない。他の車についてるのを美音の車に付けるだけだ」
そう言えば妖月様って何台も車を持っていたよね。
だったら少し借りてもいいか。
「じゃあ、お願いします」
「……美音が出発するまでにはつけておいてやる」
「ありがとうございます。妖月様」
やっぱり妖月様は優しいなあ。




