41 最強のモンスター
次の朝。モンスターお役所に出勤するために私は妖月様といつもと同じく車に乗っていた。
私の脳裏には昨夜現れた氷火様のことが浮かんだ。
氷火様はこの街で一番偉いモンスターだと言っていた。
そしてその存在は「王人」と呼ばれることも初めて知った。
私は昨夜自分の部屋に帰り氷火様が何の種族なのかモンスター解析書で調べたが氷火様の容姿とあう種族はいなかった。
もしかしたら氷火様も妖月様と同じように何かの種族の「亜種」なのかなあ。
「妖月様。訊きたいことがあるんですが」
「なんだ?申してみよ」
「氷火様がこの街で一番偉いモンスターの「王人」だということは聞きましたが氷火様は何の種族なんですか?」
妖月様はチラリと私を見た。
「……それを聞いてどうするのだ?」
「いえ、氷火様はたぶんすごく強い「力」を持っていると思うんですけど、すごく強いモンスターさんてどんな種族なのかなって思ったんです」
「……氷火の種族は「秘密」だ」
「え?」
秘密? それって種族が何か秘密ってこと?
「氷火様の種族は皆に秘密なんですか?」
「そうだ。氷火は私よりも昔から存在しているモンスターでこのモンスター世界で一番長生きしている奴だ」
「え? 氷火様はモンスター世界で一番長生きしてるんですか?」
「ああ。それ故に氷火はこの世界で唯一のある「特殊能力」を持つ存在だ」
氷火様はこの世界で一番長生きしてるのかあ。
妖月様でも千年生きてるのに氷火様はもっと生きてるってことだよね。
なんかそれって凄く気が遠くなるような時間な気がする。
それに氷火様しか持たない「特殊能力」も気になるなあ。
「その「特殊能力」も秘密ですか?」
「……ああ」
妖月様は短く答える。
たぶん妖月様は氷火様の種族や「特殊能力」の内容を知ってるんだと思うけど一般モンスターに秘密のことを私が聞き出すことはできないよね。
氷火様は姿も神秘的だし存在も神秘的な感じがする。
「……氷火のことが気になるのか?」
「え? いえ、妖月様と仲がいい方だと思ったのでこれからお会いすることも多くなるのかなあって思っただけです」
「仲がいいだと? 私と氷火が?」
「はい。とても仲がよく見えましたけど」
妖月様の赤い瞳に冷気が宿る。
ひえ! なんか妖月様の地雷を踏んじゃったかな!?
「私と氷火は仲良くなどない!」
え? でもそんな風には見えなかったけどな。
妖月様は氷火様のことが嫌いなのかな?
「妖月様は氷火様が嫌いなんですか?」
「……あやつはいつも私に面倒ごとを押し付けるのだ。そのくせこちらが反論すると「王人に逆らうのか?」って脅してくるし」
妖月様は何かを思い出したかのように赤い瞳に怒りの光を宿す。
氷火様って自分の仕事を妖月様に押し付けたりするのかな?
でもそれに反論する妖月様を「脅す」なんてそれだけ「王人」は偉いってことかな?
「妖月様。「王人」って妖月様も逆らえないんですか?」
「……「王人」に逆らうことは私でもできぬ。氷火は私が対等に話したりすることは許しておるがもし本気で氷火が私を殺そうとしたら私とて勝てぬ相手だ」
ひえ! 氷火様ってそんなに強いの!?
「氷火様って強いんですね……」
「……このモンスター世界であやつに勝てるモンスターなどいない。美音も気をつけよ」
「はい! 気をつけます」
氷火様を怒らせないように私も気をつけないと!
氷火様は「最強」のモンスターさんなんだね。




