38 ルール違反
私は妖月様の顔をチラリと見た。
「早くブレーキを踏め!」
妖月様の言葉に私は慌ててブレーキを踏んで車を停めた。
当然、後ろを走っていた車も急停車する。
「こおらあ! 急ブレーキなんてかけんじゃねえよ!」
うわあ! 後ろの車のモンスターさん、めっちゃ怒ってるよおお!!
妖月様はドアを開けて車から降りて後ろの車に近付く。
後ろの車のモンスターさんが二人とも車を降りて来た。
その二人のモンスターさんは顔は狼のようだが身体は人型だ。
ひえ! これからどうなるの!?
私は一人で運転席から妖月様と二人の狼モンスターさんを見ていた。
「お前たち。仮免許の車を煽ったりしてはならぬという「ルール」知っておるか?」
妖月様は静かにその狼モンスターさんたちに言う。
「ああ? ちんたら走ってる方が悪いんだろ!」
狼モンスターさんは自分たちの方が正しいと怒鳴る。
「ほお、そうか。ところでお前たちはこの街で「ルール」を破った者がどうなるかは知っておろうな?」
「ああん? 「ルール」だと? 俺たちは里からこの街に来たばかりなんだ。この街の「ルール」なんて知っちゃこっちゃねえよ!」
そう言えばこの街の「ルール」に違反したら軽くても街からの追放で重いと「処刑」って言ってたような。
私は妖月様と出会った時に教えられたことを思い出した。
「なるほど。田舎者ゆえにこの街の「ルール」を知らないのか」
「なんだと! 俺らが田舎者だと!?」
「そうだ。私はこの街のモンスターお役所の所長をしている。この街を治める支配者層の一人だ。故にこの街での「ルール」違反を見逃すわけにはいかぬ」
「ハハハ、お前一人で何ができるんだよ!」
狼モンスターさんは二人いるせいか強気だ。
ダメだって! 妖月様を怒らせちゃ!
妖月様の赤い瞳が輝き次の瞬間妖月様の身体をユラリと赤い炎のようなモノが包んだと思ったらその炎のようなモノは鞭のように姿を変えて後ろの車のフロントガラスを叩き割った。
ガシャーン!!
物凄い音が響き渡る。
「お前たちにこの街の「ルール」を教えてやろう。この街で「ルール」破った者はこの街からの「永久追放」か「処刑」だ」
「ひいいいいーーー!!」
「ゆ、許してください!」
狼モンスターさんたちは腰を抜かして妖月様に許しを請う。
私は怖かったが妖月様に他のモンスターさんを傷つけて欲しくなかったから車から降りて妖月様の身体に抱きついた。
「妖月様! もういいです! 後は警察に任せましょう!」
「だが、美音。こやつらはお前が仮免許なのを知っていて煽ったのだぞ。しかもこの私が乗っている車を煽るなど「死罪」に値する」
妖月様は冷たい声でそう言うが私は必死に止める。
「私は大丈夫ですから! それに「ルール」違反者は警察が処罰するのが「ルール」じゃないですか!」
私は以前お昼ご飯をミツールさんと食べていた時にミツールさんから雑談で聞いていたのだ。
この街にも「警察」がいて「ルール」違反を取り締まっていると。
「……よかろう。美音が言うならこやつらを警察に引き渡すことにしよう」
「あ、ありがとうございます。妖月様」
結局、その後に妖月様は警察に通報して狼モンスターさんたちは連れて行かれた。
妖月様は警察の人に事情を話していたがそれも終わり私たちは妖月様の屋敷に戻った。
「妖月様。あのモンスターさんたちって「処刑」されたりするんですか?」
私は少し心配になって訊いてみた。
「他に何か余罪があれば別だが、初犯ならこの街からの「追放」になるであろうな」
やっぱりこの街の「ルール」違反って厳しいんだな。
私も気をつけないと。




