36 やればできる女
車がゆっくりと動き出す。
わあ! 動いた!
「いいですよ。その調子です。まずはコースの外周を回ってみましょう」
ゴラム教官の言う通りに私は車を動かした。
最初は緊張でガチガチだった身体も段々と慣れてきた。
そして初日の講習が終わる。
「はい。お疲れ様。また、明日からも頑張ってくださいね」
「はい。ありがとうございました」
私はゴラム教官に頭を下げた。
それから私の教習所通いは続き、車の運転にも慣れて教習所内での運転では特に緊張はしなくなっていた。
そして仮免許の筆記試験の前日になった。
今日は筆記試験の勉強に集中したいから教習所の車の練習はお休みをした。
私は教本に載っている標識を覚えたり交通ルールを覚えたりしていた。
妖月様には「一発合格せよ」と言われてるから明日の試験がうまくいくか私は緊張していた。
わ~ん、こんなに緊張する試験なんて高校受験以来だよ~
そこで私の部屋の扉がノックされた。
こんな時間に誰だろ?
「はい。どなたですか?」
「私だ。妖月だ」
え? 妖月様?
私は慌てて扉を開けた。
そこにいた妖月様はお盆を持ちその上にはコーヒーカップが乗っている。
「どうかしたんですか? 妖月様」
「……試験勉強は頑張っておるか?」
「え? はい。今、勉強しています」
「そうか。眠気覚ましにコーヒーを持って来た。入ってよいか?」
「え? あ、はい。どうぞ」
妖月様は部屋に入るとお盆の上のコーヒーカップを私の机の上に置いた。
まさか妖月様がコーヒーを持って来るなんて思わなかったから私は驚いた。
「それで勉強は順調なのか?」
「あ、はい。でも、ちょっと緊張しちゃって……」
私は正直に答えた。
妖月様は私を見つめて言った。
「心配など無用だ。美音よ、お前は「やればできる女」だ」
え? 私は「やればできる女」?
「お前はこの世界にどうやってやって来たのだ?」
「え~と、ダンジョンを通って来ました」
私はこのモンスター世界に来た時のことを思い出す。
「ダンジョンでは人間とモンスターが戦っている。怖くはなかったか?」
「そうですね。ダンジョンに入るのも初めてだったし人間とモンスターさんの戦いも初めて見たので怖かったです」
そう、あの時に初めてモンスターさんを見てそのモンスターさんたちと「戦士」が戦っていて怖かったのは事実だ。
「だが、お前はその怖いダンジョンを抜けてこのモンスター世界にやって来た。そして自分が願った「モンスターお役所」の面接も合格した。そうであろう?」
「あ、はい。そうです」
今、考えてもけっこう無茶な行動をしたなと自分でも思う。
その時はまだ「モンスター世界」があるかもよく分からなかったし。
「それだけお前は自分の願うモノのために「努力」したということだ。そしてその「努力」の結果、今の美音がおるのだろう? だからお前は「やればできる女」なのだ」
妖月様の言葉に私は頷く。
そうだ。「モンスターお役所」に就職するために頑張ったことを思い出せば車の免許の試験なんて怖くない。
これまで毎日免許の筆記試験の勉強はしたんだし。
うん、妖月様に言われたように私は「やればできる女」だから全力で試験に挑めば大丈夫なはず。
「はい。明日の筆記試験は頑張って合格します」
そう言うと妖月様は笑みを浮かべた。
「その気迫を忘れるな。どのような敵であれ背を向けず叩きのめせ」
え? 敵を叩きのめすのと試験に挑むのは同じことなのかな?
私はちょっと疑問に思ったが少なくとも明日の試験への緊張は無くなっていた。
よし! 頑張ろう!




