35 三つの血
私は界魔さんの運転してくれる車で車の教習所に向かっていた。
モンスター世界の車の教習所は夜でもやってるらしく私は仕事が終わった後に通うことになったのだ。
仕事に影響なく練習できるのは嬉しい。
「界魔さん。わざわざ送り迎えしてもらってすみません」
私は運転席の界魔さんにお礼を言う。
「いえいえ、これぐらい何でもないですよ。それに美音さんが屋敷に来てから妖月様も機嫌が良いことが多いので私としても助かっておりますから」
え? 私が来てから妖月様は機嫌がいいの?
私は妖月様との生活を思い出すがけっこう妖月様に怒られてる気がしないでもない。
「妖月様にはけっこう怒られてる気がするんですけど……」
「ハハハ、まあ、そうかもしれませんがあれは怒っている内に入りませんよ。妖月様が本当に怒ったら美音さんはもうこの世にいませんから」
界魔さんは笑いながらサラリと恐ろしいことを言う。
妖月様を怒らせたらこの世にいないなんて……そんな恐ろしいことを妖月様はするのかな?
「それって冗談ですよね?」
「まあ、美音さんはまだこの世界のことは分からないかもですが妖月様はモンスターお役所の所長になられるぐらいの特別な存在なので」
「特別な存在?」
「ええ。この街で働いている重要な職に就いてる方は何人かおられますがその方々が持つ「特殊能力」は他のモンスターとは比較になりません」
え? そうなの? 確かにこないだ遊園地のお化け屋敷の時に妖月様から発する力みたいなのはすごいと感じたけど。
「それは妖月様は上級モンスターのヴァンパイア族の亜種だからってことですか?」
「ええ、そうですね。妖月様は基本はヴァンパイア族の特徴を持っていますが「亜種」と言われてるので分かるとおりに純粋なヴァンパイア族ではありません」
「ヴァンパイア族以外の血が混ざっているってことですか?」
「そうです。妖月様は三つの種族の血が混ざったお方です。これ以上のことは申し上げられませんがそれ故に強大な「特殊能力」をお持ちなのです」
ふ~ん、妖月様は三つの種族の血が混ざってるのか。
気にはなるけど、でも妖月様にどんなモンスターの血が混ざっていても妖月様には変わりがないよね。
「私は妖月様が妖月様ならそれでいいと思います」
「美音さんがそういう方なので妖月様も美音さんには優しいのかもしれませんね」
そうなのかな?
でも妖月様は基本的には優しいよね。
そして車の教習所に着いた。
私は教習所の「受付」に行って手続きをした。
申し込みは妖月様がやっておいてくれたのですぐに講習が始まる。
まずは教室での授業だ。
車の動かし方や道路標識などを教えてもらった。
教本をもらったけどけっこうな厚みがある。
これを覚えないとなのか。
まあ、どうにかなるよね。
そして教習所内で実際に車の運転をしてみることになった。
「こんばんは。私は担当教官のゴラムです」
私の担当になってくれたのは肌が赤いトカゲのようなモンスターさんだ。
「よろしくお願いします。私は美音と言います」
私は頭を下げて挨拶する。
「じゃあ、まずは軽く走ってみようか。危ない時は私がブレーキかけるから安心してね」
「分かりました」
私は用意された車の運転席に座り講習で習った手順で運転する前の準備をした。
「さあ、発進して」
「はい」
私はゆっくりとアクセルを踏んだ。




