34 車の免許
私はいつも通りに妖月様と界魔さんの運転する車で出勤した。
その時にふと私は思った。
いつも妖月様と一緒に出勤してるから特に疑問に思わなかったが他の役人モンスターさんたちはどうやって出勤してるんだろうと。
私はまだモンスター世界に来てから「電車」らしきモノは見ていない。
妖月様と出かけた時も車だったし。
「あの、妖月様」
「なんだ?」
「役人モンスターさんたちはどうやって出勤してるんですか? この世界にも「電車」があるんですか?」
「……電車? そんなものはない」
え? 電車がないなら皆が車出勤なのかな?
そしたらたくさんの駐車場が必要だよね。
そんなにたくさんの駐車場ってモンスターお役所にあったっけ?
「じゃあ、どうやって出勤してるんですか?」
「私のような一部の幹部は車で出勤だが他の者はほとんどがバスを利用しているはずだ」
「バスですか?」
「ああ、この街はバス路線が発達してるからだいたいの移動はバスを使えば済む」
そうなんだ。みんなは普段はバスを使ってるんだね。
それにしてもこの世界には「電車」はないのか……ってことは車が運転できないと不便ってことになるよね。
この街の中の移動だったらバスで済むかもしれないがもし街の外に行く時は基本的に車になるのだろう。
そこで私は思いついた。
そうだ! 私も車の免許を取れないかな。
「妖月様。私も車の免許を取ることはできませんか?」
「は? 車の免許だと?」
妖月様は少し驚いたような顔になる。
「はい。車の免許があれば何かと便利だと思うんです」
「……確かにそれはそうだが。美音は人間界で車の免許を持っていたのか?」
「いいえ。持っていません。あ、それとも私の年齢では車の免許は取れませんか?」
私はそう尋ねてみた。
モンスター世界で車の免許が何歳から取れるのかは知らない。
年齢的に無理なら仕方がない。
「いや、別に年齢制限はない。試験に合格すれば問題はない」
「だったら私も車の免許が欲しいです!」
「車の免許を取るには教習所に通うことになるが費用がかかるぞ」
あ、そうか。車の運転を覚えるのには教習所に通う必要があるもんね。
でもそういう所は人間界と変わらないんだね。
一人暮らしもできない私が教習代なんて払えないし、諦めるしかないのかな。
私が少ししょんぼりとすると妖月様が声をかけてくれる。
「……美音が真剣に車の免許を取りたいなら教習代は私が立て替えてやろう」
「え? いいんですか?」
「……私に二度も同じことを言わす気か?」
「いえ! 車の免許が欲しいのは本当です!」
私はそう返事をした。
これから長くこのモンスター世界で生きて行く予定なら絶対車の免許があった方がいいもんね。
「ならば問題はないな。だが試験を受けるからには一発で合格せよ。それが条件だ」
妖月様の赤い瞳が私を見る。
車の試験なんて初めてだけどこれは何が何でも一発合格しないとダメだよね。
でも車の試験って人間界と違いがあるのかな。
「分かりました。必ず合格します。でも車の免許ってどういう感じで行われるんですか?」
「基本的に筆記試験と実技試験に合格すればよい。まずは1回目の試験で「仮免許」が与えられてそれがあれば公道を走れる。その次の2回目の試験は「公道」を使っての試験となる」
ふ~ん、基本的には人間界と一緒かな。
よし、頑張ろう!
「分かりました。頑張ります」
「うむ。では教習所への申し込みは私がやっておくから受けて来い」
妖月様はそう言ってくれた。
もし車の免許が取れたら妖月様を助手席に乗せて走ってみたいな。
私はそんなことを考えていた。




