33 間借り
私はその日の夕飯を妖月様と食べた。
今日は私の好物の「オムライス」だけど昼間のことを思い出してなかなか喉を通らない。
「どうかしたのか? 食事が進まぬようだが。今日のオムライスは不味いのか?」
妖月様が生き血を飲みながら訊いてくる。
「いえ。とてもおいしいです」
そう。界魔さんの作ってくれる料理はなんだっておいしい。
「なら、なぜ食欲がないのだ? もしかして体調でも悪いのか?」
「いえ、違います……ちょっと、昼間のことを思い出して……」
「昼間? そういえば外出しておったな。何かあったのか?」
妖月様は私のことを心配してくれているようだ。
やっぱり妖月様に甘えてちゃダメだよね。
でもちゃんと説明しないといけない。
もう少し屋敷に置いてもらえないかどうか頼んでみないと。
「いえ。昼間、モンスター不動産に行ったんですけど。この街の部屋の賃料の相場が高くて今回のお給料では一人暮らしがまだできそうにないんです」
「ふむ。それがどうかしたのか?」
「できれば妖月様に迷惑をかけないように一人暮らししたかったんですけど……すみません」
「なるほど。そういうことか」
妖月様はそう言って私を見る。
「ならば問題ない。好きなだけこの屋敷に居ればよかろう」
「でもそれじゃあ、妖月様の迷惑になってしまいます……このご飯だってタダで食べさせてもらってるのに……」
生活するには賃料だけじゃなく日々の食費や光熱水費もかかる。
それらのお金を貯めるのにどれぐらいの期間がかかるか分からない。
「ならば私がお前に部屋を貸してやろう」
「え? 妖月様はアパート経営とかしてるんですか?」
「……察しの悪い奴だな。この屋敷の部屋を貸してやると言ってるのだ」
「へ?」
この屋敷の部屋を私に貸してくれる?
「だから、今いる部屋を有料で貸してやる。……そうだな、食事等込みで一ヶ月で金貨2枚でどうだ?」
私は目から鱗が落ちた。
この屋敷の部屋を有料で借りれるなら私にとってこんな好都合はない。
しかも金貨2枚ならちゃんと毎月払える金額だ。
「でも、妖月様は迷惑じゃないですか?」
私は一番そこが気になっていた。
自分がいることで妖月様の負担にはなりたくない。
「別に。部屋は腐るほどあるしな……もしかして私と暮らすことに不満があるのか?」
妖月様の赤い瞳が冷気を帯びる。
「そんなことありません! 妖月様と暮らせるなんてすごく嬉しいです!」
私は思わず言った自分の言葉に気付いて顔が赤くなる。
い、今のって妖月様と一緒に暮らしたいって言ってるみたいだよね。
「それなら問題なかろう。家賃をちゃんと払って住んでいるなら美音も気兼ねなく生活できるであろうし」
妖月様は機嫌が直ったようだ。
特に私の言葉を気にしている様子はない。
そうだよね。妖月様は誰にでも優しいから困っている私を放っておけないだけだよね。
でもそれでも妖月様と一緒にいられるなら嬉しいもん。
「はい。じゃあ、これからもよろしくお願いします」
「うむ。もし他のもっと広い部屋を使いたかったら使ってもよいぞ」
「今の部屋で十分です」
「そうか」
とりあえずこれからもこのお屋敷にいられるね。良かったあ。
私は安心したら急に空腹を覚えてオムライスを全部食べてしまった。




