31 給料日
私がいつも通り仕事をしているとブオン係長が声をかけてきた。
「美音さん。今日は給料日なんだ。これは美音さんの分ね」
え? 今日って給料日なの?
そういえばお給料が出たら妖月様に借金を返すとか思ってたけど、給料日がいつかって訊くの忘れてたな。
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
ブオン係長は袋に入ったお金をくれる。
この世界のお金は金貨とかのせいかズッシリと重みを感じる。
えっと、初めてのお給料っていくらなのかな?
私は袋を開けて中のお金を確かめる。
中には金貨が15枚入っていた。
金貨15枚かあ。日本とお金の価値も単位も違うからこれが多いのか少ないのか分からないなあ。
でもとりあえず妖月様に借金を返して残りのお金でもし一人暮らしできるようならした方がいいよね。
私はそう思いながらも妖月様と暮らした屋敷での生活を思い出す。
独り立ちしないといけないのは分かるけど妖月様と別れるのは……ちょっと寂しいかな。
私はその日の仕事を終えて所長室に行く。
妖月様は麗華さんと引継ぎをしていた。
私は妖月様が引継ぎの仕事が終わるのを待つ。
やがて妖月様が席を立った。
「美音。帰るぞ」
「はい。妖月様」
私は妖月様と車に乗って屋敷に向かう。
「妖月様」
「なんだ?」
「今日は給料日だったんです」
「……そんなことは知っておるわ。私を馬鹿にしておるのか?」
妖月様の瞳に冷気が宿る。
「い、いえ。そういうわけではありません! ただこれまで妖月様に借りたお金を返そうと思って」
「別にそんなの返さなくてよいぞ」
「いえ! そうはいきません。借金を返すのは社会人として必要なことです!」
借金踏み倒すなんて絶対いけないよね。
「……それならあとで界魔に渡しておけ」
「分かりました」
私は大きく頷く。
一瞬一人暮らしのことが頭を過ぎるが借金を返した後のお金で一人暮らしができるか今は分からないから黙っていた。
そういえば妖月様もお給料をもらったんだよね?
妖月様のお給料っていくらなのかな?
「妖月様のお給料っていくらですか?」
「……それを聞いてどうする?」
「所長さんってお役所のトップだからいくらぐらいもらえるのかなと思って」
「……別にそれほど給料をもらってるわけじゃない」
「いくらですか?」
私は諦めずに訊いてみる。
妖月様は溜息交じりに答えてくれた。
「……金貨200枚だ」
「え? 200枚!?」
すごい! さすがモンスターお役所の所長さんだね。
でもその200枚の金貨はどうしたんだろう。
妖月様は特に大きな袋を持ってるわけではない。
「そのお給料の入った袋はどこにあるんですか?」
「……自宅に送っておいたが」
「え? どうやって?」
「物質移動の魔法を使ったに決まってるだろう。あんな重い袋をイチイチ持ち歩けるか!」
妖月様はそう言って私を睨む。
ひえ! すみません!
そうだよね。金貨200枚なんてかなりの重さだよね。
「あ、妖月様。明日出かけて来てもいいですか?」
「出かけるのに別に私の許可はいらぬが……一人で街を歩いて大丈夫か?」
「はい。この街にも慣れないといけないので」
「ふむ。それもそうだな」
妖月様って夜景を見せてくれたり外出する私を心配してくれたり本当に優しいよね。
でもあんまりその優しさに甘えてたら社会人としていけないことだよね。
私は車の窓から外を見ながらそう思った。




