29 飛行能力
妖月様は私を冷たい目で見ている。
ひええ! 怖いよおお!!
「……しかし、なぜ私がコウモリに変身するなど思いつくのだ?」
「そ、それは昔読んだ本にヴァンパイアはコウモリに変身するって書いてあったんで……」
「そんな本が人間界にあるのか?」
「はい。全てのヴァンパイアの話がそうとは限らないんですけど……」
私は恐々答える。
「……人間の考えることは分からぬな」
妖月様は溜息交じりに呟く。
「妖月様。本当に申し訳ありませんでした!」
私がもう一度謝ると妖月様は書類を箱に入れながら言った。
「もうよい」
妖月様の瞳から冷たい感じが消えていた。
どうやら怒りを鎮めてくれたらしい。
モンスター解析書にはヴァンパイア族は「飛行能力」はあると書いてあっても「コウモリ」になるとは書いてなかったもんね。
私が悪かったよね。
私は以後気を付けようと反省する。
そこへ麗華さんがやって来た。
「所長。引継ぎに来たわよ。あら、美音ちゃんもいたのね」
「こんにちは。麗華副所長さん」
麗華さんは今日もバリッとスーツを着ている。
う~ん、やっぱり麗華さんっていつ見ても綺麗な人だなあ。
あ、でも年齢は千歳以上なんだよね。
とてもそんな年齢には見えないや。
前に妖月様に麗華さんに「おばあさん」って言ったら殺されるぞと言われたのを思い出して私は麗華さんに年齢のことは聞かないでおいた。
だって、麗華さんだけじゃなくて女性に年齢を聞くのは失礼だもんね。
「麗華か。よし引継ぎをするぞ」
妖月様と麗華さんは二人で話しながら書類を渡したりしている。
その作業が済むと妖月様は椅子から立ち上がった。
「美音。帰るぞ」
「はい。妖月様」
私は妖月様についてモンスターお役所を出た。
界魔さんの運転で屋敷へ向かう。
「ところで美音は「飛行能力」に興味あるのか?」
「え?」
「ヴァンパイア族は「飛行能力」を持つから私にあのようなことを訊いたのではないのか?」
「あ、はい。そうです」
もしかしてまだ怒ってるのかな?
「人間は自力では飛べぬ生き物と聞いておるが美音は飛んでみたいのか?」
「え? そうですね。もし自分に羽があったら飛んでみたいです」
私は幼い頃に天使の姿を絵本で見て「自分にも羽があったら飛びたいな」と思ったことを思い出した。
「私は天使に憧れたことがあるので」
「……モンスターの種族に「天使」はないぞ」
妖月様に言われて私はモンスター解析書を取り出して見てみるが確かに「悪魔族」はあるのに「天使族」はない。
悪魔はいるのに天使はいないってモンスター世界は「魔界」に近いってこと?
でもモンスターさんたちは悪魔族のモンスターさんでも優しいよね。
う~ん、悪魔が悪い存在ってこと自体が人間が作り出した嘘なのかなあ?
「……もし、「飛行能力」に興味があるなら良いモノを見せてやろう」
「良いモノですか?」
「ああ。夕飯の後に美音の部屋に行くから待っておれ」
「?。分かりました」
妖月様の良いモノって何だろう?
私は少しワクワクした。




