28 コウモリ
その日はベル荘に泊まって次の日にまた「飛行モンスター会社」のドラゴンさんに乗って街まで帰って来た。
キョウカ主任とモンスターお役所に戻るとブオン係長が声をかけてくれる。
「ご苦労様、美音さん。初めてのベル荘はどうだった?」
「はい。雪が多くて少し寒かったですけど、スキーができて楽しかったです」
スキーを初体験したのは忘れられない想い出になりそう。
でも出張の感想が「スキーできて楽しかった」ってのは変かな。
「そうか。あのスキー場はスキーに適した雪だから人気が高いんだよ」
ブオン係長は笑顔で言う。
「そうなんですね。備品調査の方もちゃんとやってきました」
私は仕事もちゃんとやってきたと報告をする。
遊びで行ったわけじゃないからちゃんと報告しないとね。
「ああ、ありがとう。後日、書類にまとめて報告してくれればいいよ。今日はもう疲れただろうから帰っていいよ」
え? まだ就業時間終了前なのに帰っていいの?
「じゃあ、私はこのまま帰ります。美音さんもまた明日ね」
キョウカ主任はブオン係長にそう言って荷物を持って帰ってしまった。
キョウカ主任が帰っちゃうなら私も帰ろうかな。
でも、まだモンスターお役所から妖月様のお屋敷に自分だけで帰ったことがないんだよなあ。
荷物もあるから歩くというのも……
仕方ない。とりあえず妖月様の所長室に行って妖月様が仕事が終わるのを待とうかな。
私は所長室に向かった。
所長室の扉をノックすると返事が聞こえる。
「誰だ?」
「美音です」
「入れ」
私は所長室の中に入ると妖月様は所長の机で書類を見ていた。
近くには界魔さんもいる。
妖月様はチラリと私を見る。
「まだ就業時間が終わってないんじゃないのか?」
「あ、えっと、出張から帰ってきたらブオン係長が今日はもう帰っていいって言ってたんですけどモンスターお役所からお屋敷まで一人で帰ったことがなくて妖月様と一緒に帰れたらなと思ったんです」
「……そうか。もう少しで仕事も終わるからそこのソファに座っておれ」
私は妖月様の言う通りにソファに座る。
「……初めての出張はどうであった?」
妖月様は書類に何かを書きながら私に尋ねてくる。
私は自分が不器用なので何かをしながら何かをやるというのは苦手だ。
妖月様は書類仕事しながら話もできるんだね。
「はい。初めてスキーをやって楽しかったです。あ、でもちゃんと仕事もしました」
私は慌てて仕事もしてきたことを付け加える。
「ふむ。ベル荘は寒冷地だからな。雪も多かろう」
妖月様は書いていた書類を箱に入れて次の書類に何やら書き込む。
私はその時に飛行モンスターに乗る時のキョウカ主任の話を思い出した。
キョウカ主任は私のことをヴァンパイア族の亜種だから「飛行能力」があるようなことを言ってたよね。
モンスター解析書でもヴァンパイア族って「飛行能力」があるって書いてあったしなあ。
妖月様はヴァンパイア族の亜種だから「飛行能力」あるのかな。
そして私はヴァンパイアと飛行と聞いてある動物を思い出した。
そうだ! 妖月様はあの動物に変身できるのかも。
「妖月様」
「なんだ?」
「妖月様はコウモリですか?」
「……なんだと?」
妖月様は凍える冷たい低い声を出す。
そして赤い瞳が細められた。
ひえ! これってかなり怒ってる感じだよね!?
「……私がなんだと?」
「い、いえ。ヴァンパイア族は「飛行能力」があるって聞いたんで妖月様も飛行できるんじゃないかと思って」
「……飛行ができることがなぜ私が「コウモリ」ということと関係あるんだ?」
「え? だってヴァンパイアってコウモリに変身しないんですか?」
私は昔読んだヴァンパイアの物語を思い出して言った。
「……私はあんな下等な生き物ではないわ!!」
ひええ!! ご、ごめんなさい!!
「す、すみませんでしたあ!!」
私は妖月様に頭を下げて謝った。




