25 初出張日
初出張の日。
私は一度モンスターお役所に出勤してキョウカ主任と合流する。
いつものリュックサックの他に着替えなどが入ったカバンを持ってきた。
ちなみにこのカバンは界魔さんが用意してくれたものだ。
でもたぶん界魔さんは妖月様に言われてカバンを用意してくれたんだろうからお給料が入ったら妖月様に借金を返さないと。
どんどん借金が増えていくけど……どうにかなるか。
私はそう思いながらキョウカ主任と一緒に車に乗って「飛行モンスター会社」に向かった。
いつもの街並みが消えて広々とした広場のような場所に車は着いた。
そこには建物があって私とキョウカ主任は中に入る。
「美音さんは飛行モンスターに乗ったことあるの?」
「あ、いえ、実はなくて……」
キョウカ主任に訊かれて私は正直に答える。
嘘をついてもすぐにバレちゃうもんね。
ただでさえ自分のことをモンスターだって皆に嘘をついてるのに……
私は内心ちょっと皆に嘘をついてることに気が重くなった。
でも妖月様も言っていたが人間とモンスターさんは今もダンジョンで戦っている敵同士だ。
本来ならこの世界に人間はいてはいけない。
でも本当に人間とモンスターさんたちは戦わないといけないのかな。
私の中に疑問が浮かぶ。
この世界に来て私はまだ日が浅いけどモンスターさんたちは自分たちで「ルール」を守りいろんな種族が共存している。
それなら人間と共存することもできるんじゃないかなあ。
私がそう思っているとキョウカ主任がチケットをくれた。
「これが貴女のチケットよ。乗る時にチケットの半券を係員に渡して降りる時も係員に残りの半券を渡してね」
「乗る時も降りる時もチケットが必要なんですか?」
「そうよ。乗った人数と降りた人数が合わないと困るからね」
乗った人数と降りた人数が合わないことなんてあるの?
「あの、キョウカ主任。乗った人数と降りた人数が合わないことってあるんですか?」
「ええ、たまに空中で落下しちゃう客がいるのよ」
キョウカ主任は当然のごとく話すが私は目を見開いた。
落下しちゃうって、落ちたら死んじゃうんじゃないの!?
「そ、それって落ちたら死んじゃうんじゃ?」
「まあ、そうね。飛行能力を持たないモンスターだったら死ぬこともあるわね。美音さんはヴァンパイア族だから大丈夫でしょ?」
え? ヴァンパイア族って飛行能力があるの?
キョウカ主任が電話でブオン係長にこれから出発する連絡をしている隙に私はモンスター解析書でヴァンパイア族を調べる。
確かにヴァンパイア族は飛行能力があると書いてある。
どうしよう、私に飛行能力はないよ!
あ、でもヴァンパイア族の亜種ってことになってるから飛べない種類って言えばいいのかも。
あれ? でもそうすると妖月様は飛行能力あるのかな?
妖月様も純粋なヴァンパイア族ではないと言ってたから飛べないのかも。
帰ったら訊いてみようかな。
とりあえず落ちなければ問題ないよね。
私はそう決心して順番を待つ。
そして私たちが乗る飛行モンスターの準備ができたと係員に言われた。
私たちが乗り場に向かうと大きなドラゴンさんがいる。
このドラゴンさんに乗るのかあ。
ドラゴンさんの背中には掴むための綱がある。
これを掴んで離さなければいいんだよね。
神様! どうか落ちませんように!
私が自分の綱をギュッと握るとその様子をチラリと見ていたドラゴンさんが声をかけてくれた。
「お嬢ちゃん。飛行モンスターに乗るのは初めてかい?」
「え? あ、はい。そうなんです。落ちないように頑張ります!」
「ハハハ、そんなにスピードは出さないから普通に掴まっていれば大丈夫さ。上空に行ったら遠くを見るようにしてごらん。そうすれば怖くないから」
「そ、そうなんですか? 分かりました」
私は少し体の力が抜けた。
そして皆がドラゴンさんの背中に乗るとドラゴンさんは大きな羽を羽ばたかせて舞い上がった。
ひえーー! やっぱり怖いよーー!!




