22 お化け屋敷
「お化け屋敷?」
「はい。いろんなお化けが出て来るんですよ」
妖月様は手を顎に当てて何かを考えている。
「お化けというのはモンスターではないのか?」
「えっと、違うと思います。幽霊とか殺人鬼とかそんなヤツです」
「幽霊や殺人鬼だと?」
妖月様は怖い顔をしている。
う~ん、モンスター解析書に載ってた危ない特殊能力を持ったモンスターさんの方が実際は怖いのかなあ。
でも遊園地のお化け屋敷だから危険なことはないよね。
「とにかく入りませんか?」
「……美音が入りたいのならかまわぬが」
私と妖月様にお化け屋敷の入り口にいた翼のある人型モンスターさんが説明してくれる。
「お客様。このお化け屋敷は超怖いと有名です。しかし途中棄権は認められません。出口までちゃんと歩いて出てくださいね」
え? そんなに怖いの? だ、大丈夫かな?
「出口まで歩けばいいのだな。行くぞ、美音」
「あ、待ってください。妖月様」
入り口のカーテンを開けて妖月様は入って行く。
私も置いて行かれないように後に続いた。
中は当然ながら暗い。
「随分と暗いな。電気はないのか?」
「妖月様。お化け屋敷の中は基本的に暗いんですよ」
「……そうなのか。まあ、私は暗闇でも見えるから特に問題はないが」
あ、そうか。妖月様ってヴァンパイアの亜種だもんね。
暗闇でも大丈夫ってことか。
でも私にはほとんど見えないんですけど。
「どうした?美音」
「いえ、暗くて歩きづらいなって」
「この程度の闇が見えないのか?」
「妖月様は私が何者か忘れていませんか?」
「……そうだったな」
妖月様がそう言った瞬間、暗闇に光がボウっと浮かび斧を持った血だらけの殺人鬼のお化けが出た。
「きゃあああ!!」
私は思わず妖月様の腕にしがみついた。
「ぎゃははは! 殺してやるぞ!!」
その殺人鬼のお化けが笑いながら斧を振りかざす。
「……もう一度申してみよ」
妖月様の冷たい声が響く。
「ぎゃははは! 殺してやるぞ!」
殺人鬼お化けが笑いながら私に血だらけの顔を見せて近付く。
「美音に近付くでない! この私を殺すなど貴様には百万年早いわ!!」
その瞬間、妖月様の赤い瞳が光輝き妖月様の体が炎のようなモノに包まれる。
妖月様の腕にしがみついてる私にも妖月様の体が熱を持っているのが感じられた。
ひえ!もしかして妖月様ってこのお化けが本当に妖月様を殺そうとしてるって思ってるの!?
妖月様の特殊能力って全部は知らないけど、絶対止めた方がいいよね!?
「妖月様! これは演技なんです!! 本気で妖月様を攻撃しようとしてるんじゃないんですーー!!」
私は必死に妖月様の腕にしがみついたまま叫んだ。
「なんだと!? こやつは二度もこの私を殺すと言ったのだぞ!」
「だからそうやってお客さんを脅かすのが「お化け屋敷」なんですよーー!」
私の必死の言葉が通じたのか妖月様から炎のオーラが消える。
「ひいいい!!!」
殺人鬼のお化けさんは妖月様のオーラを感じて腰を抜かしたようだ。
「ごめんなさい! お化けさん」
私はお化けさんに謝りながら妖月様を連れてお化け屋敷の入り口に引き返した。
出口に向かうより入り口に戻った方が近かったからだ。
「お、お客さん! 困りますよ! お化け屋敷内で特殊能力を使うのはダメです」
さっきの係のモンスターさんが妖月様に注意する。
「フン、私を襲うのが悪いのだ。なぜ、こんなものが「遊ぶ」ことになるのか分からぬわ」
妖月様はそう言って謝ろうとはしない。
「す、すみませんでした」
私は妖月様の代わりにその係のモンスターさんに謝る。
やっぱり妖月様と遊園地で遊ぶのは無理があったよね。
「美音。謝る必要などないぞ」
「いえ。妖月様。遊ぶのにも「ルール」があるんです。次回から「ルール」を守ってください」
妖月様は不機嫌そうな顔をしたが頷いた。
「そうだな。遊園地というモノの知識を学んでなかった私にも落ち度があることは認めよう。今後は遊ぶ時には事前に知識を勉強しておく」
「……お願いします。妖月様」
そして私と妖月様の初遊園地体験は終わった。




