第3話 十三分の昼寝
有沢凱斗の最悪の敵は――
溜まりに溜まった睡眠不足だった。
その日、誰かが世界の温度設定を間違えて上げたみたいに、太陽が星籠学園へ降り注いでいた。中庭は白く光り、窓は必要以上に光を跳ね返していた。生徒たちでさえ、午後の授業が始まる前から敗北したみたいに、いつもよりゆっくり歩いていた。
凱斗は早足で食堂に入った。
目が時計から列へ動く。
列から時計へ。
時計から、一秒ごとに失われていく人生へ。
「こんにちは。今日は何にする?」
食堂のおばさんが尋ねた。
凱斗は、医療現場の緊急事態を前にした男のような目で彼女を見た。
「何でもいいです。一番早いやつで」
おばさんは笑った。
三十秒後、彼の前に、ご飯、味噌汁、黒いひじき、そして光る皮と攻撃的な匂いを放つ鯖の味噌煮が載ったトレーを置いた。
凱斗は動かなかった。
(よし。二度と「何でもいい」とは言わない)
隣で、二人の生徒が彼のトレーを見た。
「この暑さで昼に鯖……」
「勇者だな」
「もしくは囚人」
凱斗は席に座り、攻撃を開始した。
食べたのではない。
処理した。
箸は工事用の機械みたいに動いた。ご飯が消えた。味噌汁はほとんど蒸発した。鯖は恐ろしい精度で分解され、骨一本すら取り逃がさなかった。
隣のテーブルの女子が箸を下ろした。
「あれ、昼食のスピードランしてる?」
「直接見ちゃだめ。感染するかも」
凱斗は箸を置いた。
時計を見た。
十三時十分。
身体が、食べ終わったことを理解する前に立ち上がった。
食堂の横の扉から出て、庭へ入った。
熱が顔にぶつかった。
星籠学園の中央庭園は、家族通話をクレジットで管理する学校にしては、美しすぎた。明るい石畳の道が、刈り込まれた芝生を切っている。低い噴水が水を空中へ跳ね上げ、光はそこで小さな反射に砕けた。木々の中では蝉が、夏を何かの罪で告発しているみたいに鳴いていた。
凱斗は歩調を緩めた。
(まだ間に合う)
噴水の前にある鉄製のベンチには、毎日十三時十五分から十三時二十八分の間だけ、最高の角度で日が当たる。
十三分。
瞼に直射日光を受ける十三分。
許可された脳死の十三分。
世界が燃えても、彼の意見を求めなくていい十三分。
噴水へ続く生け垣を曲がったところで、凱斗は勝利の息を漏らした。
「本当に間に合っ……」
止まった。
ベンチは使われていた。
星崎零華が座っていた。
休んでいるようには見えなかった。横には書類が広げられ、膝の上には開いたファイル、高そうなペンが指の間にある。木陰でさえ規則によって承認済みであるかのように、彼女はそのベンチを即席の机として使っていた。
凱斗は少し口を開けたまま固まった。
「そこで何してるんだ」
零華は目を上げた。
「座っています」
「それは観察できた」
「では、進歩していますね」
凱斗はベンチを指さした。
「どうしてこの場所を知ってる」
零華は事務的に甘く微笑んだ。
「生徒会業務のための公共空間の占有です、有沢くん」
「でも……俺の昼寝が……」
「時間は世界で最も高価な資源です。昼間に眠ることは、道徳的破産の宣言です」
凱斗は時計を見た。
十三時十四分。
太陽はもうベンチの左端に触れ始めていた。
零華はページをめくった。
「もちろん、あなたが生徒会に所属していれば、私たちの革張りソファの一時的な使用を許可できたかもしれません」
凱斗は深く息を吸った。
十三時十五分。
太陽がベンチに届いた。
彼は三歩進み、空いている半分に座って腕を組んだ。
零華は即座に赤くなった。
「何をしているのですか」
「最後の手段を使ってる」
「これは非公式の会議です」
「なら、もっと非公式になる」
「有沢くん」
「十三分しかない」
零華はペンを握った。
それから微笑んだ。
(この可能性は想定していました)
彼女は書類に戻り、彼が腕一本分もない距離にいることなど何も変えていないように振る舞った。
凱斗は目を閉じた。
太陽は完璧だった。
熱が制服を通ってくる。
噴水の水音は規則正しい。
その時、甲高い笛のような音が聞こえた。
細い。
苛立たしい。
途切れない。
凱斗は片目を開けた。
音は半秒だけ止まった。
目を閉じる。
ピーーーーー。
両目を開けた。
「何をした」
零華は小さなイヤホンを耳につけて、本を読んでいた。
反応さえしない。
凱斗は彼女を見た。
それから広げられた書類を見た。
それからベンチを見た。
ポケットからノートを取り出した。
(ふむ。連続音。電子機器ではなさそうだ)
下を見る。
ベンチは鉄製で、古く、美しく、構造の一部が空洞になっていた。
生け垣の向こうでは、本館の換気口が冷房の空気を吐き出していた。風がベンチの下を通り、零華の書類に当たり、鉄の細い隙間に入り、横から抜けている。
地獄の楽器だった。
凱斗はノートに三本の線を描いた。
風。
隙間。
紙。
零華を見た。
彼女はイヤホンで外界を遮断したまま本を読み続けていた。濃紺の髪が肩に落ちている。書類の一枚が、彼の膝にほとんど触れていた。
(聞こえてもいない)
凱斗は鞄を開けた。
小さな消しゴムを取り出し、端を歯でちぎって、そっと身をかがめた。
その欠片を鉄の隙間にはめ込む。
笛の音が死んだ。
庭が戻ってきた。
凱斗はノートを閉じた。
(素晴らしい。気づかれてない。まだ十分ある)
もう一度ベンチに寄りかかった。
太陽が思考を鈍らせる。噴水は同じ水を何度も繰り返す。隣では、零華が規則正しい、ほとんど単調なリズムでページをめくっていた。
少しずつ、彼女の身体も戦いに負け始めた。
最初に、手がページをめくれなくなった。
次に、本が少し下がった。
零華の氷のような青い目が、ゆっくり瞬いた。陽光の下では、その目はより薄く、ほとんど透明に見えた。生徒たちに目を伏せさせる鋭い色が、まつ毛に隠されながら柔らかくなっていく。
もう一ページ。
もう一度、まばたき。
そして、生徒会のいかなる許可もなく、会長は眠った。
凱斗はチャイムの五分前に目を覚ました。
最初に感じたのは、肩の重みだった。
二番目は、髪。
三番目は、危険。
ゆっくりと目だけを動かした。
零華が彼にもたれかかっていた。顔は数センチ先にあった。完璧な笑みも、舞台の上の姿勢も、裁くような視線もなく、十三分の太陽に負けた、ただの疲れ切った少女に見えた。
凱斗は動かなかった。
(起こしたら、クレジットを失う)
もう一度、彼女を見た。
まつ毛がほんの少し動いている。呼吸は規則正しい。銀色のリボンが、髪の中で少しだけずれていた。
(会長でも寝るのか)
その考えは、ただの事実であるはずだった。
けれど、必要以上に長く残った。
凱斗は目を逸らした。
(疲れてるみたいだな)
顔が熱くなった。
遠く、茂みの向こうで、短い音がした。
カシャ。
凱斗は目を開いた。
生け垣の向こう側で、西園寺陽葵が、白い手袋をした両手でスマートフォンを持っていた。
その笑顔は噴水よりも輝いていた。
画面の中では、零華が凱斗の肩にもたれて眠っていた。
そして凱斗は、無実を主張するにはあまりにも赤くなっていた。
陽葵は白い手袋を直した。
「勧誘資料として……完璧です」




