22 心を支えてくれるもの
私事ですが、かなりの力でへこまされました。単に私の力不足です。
皆さんはこんな時、どうやって気持ちを奮い立たせますか?
例えば歌とか。こんな歌が勇気づけてくれる、という歌ってありますか?
教えていただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。
「私、死ぬのが怖いの。死ぬのが怖いから、ビナッツに行くって言えないの」
情けなくて、かっこ悪くて、でも、本心だ。
言ってしまうと、顔を上げられなかった。
みんな、何も言わない。
まるで、針で刺されているようだ。
でも、そうじゃなかった。
「なあに言ってんだ、嬢ちゃん。死ぬのなんて、誰でも怖え。俺も怖え。みんな怖えさ」
「冒険者が一番に戦うのは、死との恐怖なのさ。いつも隣り合わせなんだ。ミ・ユ・キだけじゃないし、恥じることでもない」
金髪お姉さんは何も言わずに涙を拭いてくれた。
微笑んで。
「ミユキ、私の近くにさえいれば、死なずにすむぞ」
「ミユキ、ぼくもミユキをまもるよ」
シンガは椅子に飛び乗ってから私に飛びついてきた。
柔らかかった。
ほっとした。
「じゃあ、みんなは怖い時に、どうやってその恐怖心を克服するの?」
「冒険者の心得その一、場数を踏まずして上達はなし」
「私からアドバイスするとしたら、自分の一番大切な人を守るんだって思うことかな」
「俺の場合は自己満足だな。命を懸けて戦う自分を、自分で褒めるってこった」
「私は以前、死を覚悟した時に、どうせいつかは死ぬ定め、ならば一花咲かせよう、と思ったのを、今、思い出した」
「ミユキ、ぼくもミユキをまもるよ」
それらを聞いたからと言って、死から逃れられるわけじゃない。
怖いものは怖い。
だけど、一歩踏み出そうと思える『勇気』を私にくれた。
「私、もしもピンチになったら、みんなを見捨てて逃げるかもよ」
「わっはっはっは。正直でいい。嬢ちゃんが逃げる時は俺も一緒に逃げるから、一声かけてくれよ」
「本当に仲間を見捨てるような奴なら、母様はタオの羽を与えはしなかった。それがすべてを物語っている。私もマグマも、ビナッツを守るため、罪なき人を守るため、悪を断罪するため、そして戦士としての誇りのために、戦う。一つしかない命、取り返しのできない命、大切にするのは当然だ。逃げるは恥、ではない。逃げてもいい。共に行こう」
「……うん。私も、ビナッツに連れてって」
「ミユキ、ぼくもミユキをまもるよ」
小さな尻尾をブンブン振ってシンガが言うから、抱きしめて頭をなでた。
シンガはそこまで私を思ってくれているんだ。
心に恐怖は、ある。
でも、それを上回る何かがむくむくとぶくぶくと膨れ上がって、恐怖の占める割合は、もはや日本人の苗字における鰻さんくらいだ。
本当にほんのちょっとって意味ね。
そうと決まれば、と私たちはお店の外に出た。
そこで初めて気付いたのだけど、クリミネンの町は騒然としていた、わけではなかった。
「皆の者、恐れることはない。攻めてこられるのはビナッツ。ここではない。ここではないし、ここにも王国騎士団や冒険者がいる。彼ら彼女らが皆を守るために命を賭して戦う。皆は何も気にすることなく、今まで通りに暮らしていればよいのだ」
そう王様が演説をしながら町を歩き回っていたのだ。
普通、平民だったら、王様が道を歩く時は端に寄って中央を空けるものだけど、主に子どもたちが王様の周りに輪を作って行進していた。
魔王が復活して、モンスターが凶暴になって、自分たちの命が脅かされているこの時なのに、そこには笑顔があった。
「王様ってすごいのね」
思わず私はつぶやいた。
頑丈おじさんが返してきた。
「あいつは昔っからああいう奴なんだ。自然と周りを明るくさせる。あれも一つのスキルだろうな」
「おお、マグマよ。……その出で立ち、行くのか?」
「はい。この国を愛する者として、放ってはおけませんから」
「ミ・ユ・キ、であったな。そなたも行くのか?」
「はい。私も吟遊詩人としてギルドに登録をすませた冒険者ですから」
「そうか。それならば私と共に行こうではないか。私は戦力にはならぬが、王として戦場にいなければ示しがつかんであろう。馬車の手配が整い次第、発つつもりだ。それとも、もう馬車の用意はすんでしまったのか?」
「いいえ、まだ、これからするつもりでした。王様にそう言っていただけるのなら、渡りに船です。同乗させていただけるのなら、身に余る光栄です」
「うむ。では、このまま門のほうへと歩いていこうぞ」
そうしてまた王様は演説をしながら歩き出した。
子どもたちの興味は頑丈おじさんにもオルガにも注がれて、
「それが鍛冶師大会で優勝したシグマですか? すごいな、かっこいいな」
だとか
「タオジオルガさん、今日はちゃんと服、着てるんですね」
だとかと話しかけてきた。
オルガは、鍛冶師大会からこっち、ずっと上半身裸で過ごしてきたのだけど、魔王の宣告があってから、上半身を守る装備をしたそうだ。
どうやって用意したのかは分からないので、後で訊いてみよう。
まだ暗い顔をした人もいるけど、王様を見て、その言葉を聞いて、明るさを取り戻した人のほうが多いようだ。
その人たちをかき分けて、一人、騎士がやってきた。
「王様、準備が整いました」
「おお、そうか。では、参ろう」
子どもたちは、ガンバレ王様、なんて激励して、大人たちの中には、どうかご無事で、と手を合わせる人もいた。
私も、先日のグルグロスたちとの戦いで顔と名前を覚えられたみたいで、小さな女の子が
「おねえちゃん、がんばってね」
と小さな手を伸ばして握手を求めてきた。
驚いたけど、握手をしたらその子の顔にぱっと笑みが広がって、嬉しくなった。
馬車には王様と頑丈おじさん、オルガと私とシンガが乗った。
御者席には執事さんとメイドさんが一人ずつ座って、前と後ろに騎士さん二人と魔術師さんが一人ずつ。両サイドに騎士さんが一人ずつ馬を走らせて、王都ビナッツに向かった。
モンスターが凶暴になった影響で、以前と比較したら困難な道中になると覚悟したのだけど、襲ってくるモンスターはいなかった。
そう言えば、この大陸のモンスターを千体以上もビナッツに集めているって言ってたんだっけ。
なら、ここら辺のモンスターはすでにビナッツの周りに行っているか。
王様の乗る馬車は王様専用なだけあって、運転おじさんのそれとは乗り心地がかなり違った。
そして、前に乗った時のように王様と頑丈おじさんの話を聞けると楽しみにしていたのに、二人とも、クリミネンを出発して、二十分と経たないうちに眠ってしまった。
オルガ曰く、
「いつ戦いが始まるか、いつ休めるかは分からない。だから休める時に休むのだ」
だそうだ。
たしかに、今起きていて、戦いの時に眠くなったら、まともになんて戦えない。
これもこの世界で生きる知恵なのだろう。
オルガも、私も眠ると言って、実際にその数分後には眠っていた。
私も倣って眠ろうとしたけど、まったく眠れなかった。
シンガでさえ眠っていたのに。
いや、シンガの場合はただ単にいつもの睡眠時間なのかもしれないけど……。
冒険者としてまだまだ未熟な私だ。
四時間後、馬車が止まった。
このままいくとストックがなくなり、毎週の決まった日ではなく
書いて出し、書いて出しすることになってしまうのですが、
それと、三か月くらい休んで書き溜めるのと、どちらがいいですか?
ほかの人たちはどうしているとか、いろいろ意見をいただけると嬉しいです。
では、また。




