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20  うがああああああって

こっちに帰ってきた美優姫の、普通の十五歳の日常です。


では、どうぞ。

 心配性のおじさんは、あからさまなのに自然を装って、訊いてきた。


「学校はどうだ? 友達、できたか?」

「うん。軽音楽部でね、一緒になった一年生、みんな女の子なんだけど、もう友達。クラスでも仲のいい子ができたよ」

「そうか。男友達は、できたのか?」

「うーん、友達とまではいかないけど、何人かとは、よく話をしてる」

「そいつはどんな奴だ? 美優姫と付き合いたいとか、付き合いたいとか、付き合いたいとか、言ってこないか?」

「三つとも同じだよ、おじさん」

「だっておじさん、心配なんだよ。美優姫がもし変な男につきまとわれでもしたらと思うと、うがあああああってなるんだ」

「でも、高校生なんだもん、好きな人だって、できて当たり前じゃない」

 おばさんが言うと、おじさんはうがああああああとなった。

「美優姫、気を付けろ。男なんてケダモノだ。付き合うにしても、ようく見極めてから付き合うかどうか判断するんだぞ」

「そんなこと、言われなくても分かってるわよ。ねえ?」

「うん」

「ああ、何で俺、教員免許取らなかったんだろ? 美優姫の高校の先生になれば、こんなに心配にはならないのに」

「いや、おじさんはもしも私の学校の先生になったとしても、やっぱり心配はすると思うよ」

「私も思う」

「何だ、二人してタッグを組んで。おじさん一人ぼっちじゃないか」


 そう言いながらも笑い飛ばしたおじさんが続ける。


「もしも彼氏ができたなら、恥ずかしがらないで紹介してくれよ。おじさんに紹介もできないような男なら、付き合っても結局は泣きを見るようになっちゃうからな」

「うん。ありがとう」


 おじさんもおばさんも満足げな笑顔した。

 そんなお昼ご飯だった。


 歯磨きを終えて、また曲作りだ。

 ドアを開けても、私の部屋のままだ。

 次に向こうに行く前に曲を完成させたいので、それまでには向こうに行かずにすむようにと思っているから、胸を撫で下ろした。


 そして六日後。

 土曜日。

 午前中。


 テーブルで作詞していたのだけど遅々として進まず、気分転換で机に向かって作詞してみた。

 場所が変わればまた何か違うアイディアが生まれるかもしれないと思ったのだ。

 結果、変わらず。

 がっくり。

 でも、これが生みの苦しみだ。

 もちろん、プロの人たち、ヒットを飛ばしているミュージシャンの人たちと私とでは雲泥の差だ。

 それは分かってる。

 でも、プロであろうとアマであろうと、ヒット曲を生もうと生むまいと、曲を作っている、その一点においては、同じ音楽活動だ。

 だから私も、嗤われてしまうかもしれないけど、生みの苦しみという言葉を使うのだ。


 いや、一行も書けていないわけじゃない。

 というか、詞はあらかた、できている。

 私を悩ませているのは、サビ前の八小節だ。

 ここにバチコーンとはまる言葉が、出てきてはくれないのだ。


 これも違う。

 これも違う。

 を繰り返している。

 でも、ここが決まれば、少なくとも私が満足する曲になるのは請け合いなのだが、なかなかに難産だ。

 そこで私は考える。


(違う、違うと思うのは、きっとどこかで聴いたような歌詞だからじゃないか? 借り物の言葉じゃなくて、自分自身の思い、それをメロディーに乗せられてないから、気に入らないんじゃないか?)


 もう一度、歌詞を頭から読む。

 そして考える。

 時間が過ぎる。

 何の音も聞こえない。

 そして私は、かっと目を見開いた。

 忘れないうちにと、ノートに書き殴る。


「できた」


 そう声にした。


「よかったですね」


 と返事が来て、腰が浮くほど慌てふためいた。

 振り返ると、あのおじいさんがいた。


「できれば今、歌ってみてはいただけませんか?」


 状況を飲み込めずにいる私に、返事なんてする余裕は、もちろんない。

 笑顔を絶やさないおじいさん。

 時間が経つにつれて、私は何だか可笑しくなってきた。


「……歌、聞きたいんですか?」

「はい」

「初めて会った時も、私の歌、聞いてくれてましたよね」

「はい。『私が求めていたのはこの歌声だ』と、そう思いました」

「おじいさんはやっぱり、あっちの世界の人なんですか?」


 私の問いに、おじいさんは無言の笑顔で答えた。

 そして言った。


「私を新曲の第一拝聴者にしてはいただけませんか?」


 拝聴という言葉は、私にはもったいなすぎる。

 でも、その優しさというか、気配りというか、それは充分に伝わった。

 それに私は、歌を歌うのが好きなのだ。


 おじいさんの脇をぬけて、テーブル横に寝かせておいた宝物兼相棒に手を伸ばす。

 おじいさんが拍手をくれる。

 ちらっと見て、笑顔になる私。


「じゃあ、たった今できたばかりでタイトルも決まっていないこの曲を、心を込めて歌います。聞いてください」

 五分三十三秒後。

「ありがとうございました」


 私の部屋にあるのは、おじいさんの拍手の音だけだ。

 少しでも防音になるようにとカーテンも引いているので、漏れて入る光だけでは、天候を知る事もできない。

 理由は分からないけど、おじいさんの笑顔を見ていると、伝わってくるものがあった。

 しばらくしてからおじいさんが


「今日も、行くのでしょう?」


 とストリート・ミュージシャン活動の事を訊いてきた。


「はい。今朝の天気予報が当たりなら、午後は晴れるみたいなので」

「うん。土曜日は四週連続で晴れですね。あなたは晴れ女で、天気だけじゃなくて、人の心も晴れにする。そういう意味でもあなたは晴れ女です。私もまた聴かせていただきますよ。この姿かどうかは分かりませんがね」


 驚いたので、どういう意味ですか?

 の問いかけが遅れた。

 おじいさんはそんな私を見ながら、ちゃんとドアから出ていった。

 おじさんやおばさんに見られたらどうするのかと心配になって、その一秒後にドアを開けても、もうおじいさんの姿はなかった。


 三、四時間後。

 いつもの公園で歌いながらおじいさんの言葉を思い出した。

 散歩中の犬までもがおじいさんなんじゃと疑ってしまった。

 案外と間違いじゃなかったのかも……。


このままいくとストックがなくなり、毎週の決まった日ではなく

書いて出し、書いて出しすることになってしまうのですが、

それと、三か月くらい休んで書き溜めるのと、どちらがいいですか?

ほかの人たちはどうしているとか、いろいろ意見をいただけると嬉しいです。


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