↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/58

14  守るための戦い

私の力は本当に微々たるものですが、

熊本の皆様に届いてほしいです。


では、どうぞ。

 悲鳴が聞こえる。

 怒声が聞こえる。

 モンスターが言う。

 壊せ、殺せ。


 騎士さんたち、冒険者さんたちも抵抗している。

 でも、止められない。

 壊された町の防壁から、モンスターたちが侵入していく。


「やめてえー」


 私は声の限り叫んだ。

 馬は走る。

 ぐんぐんと距離を詰める。

 近づくと、倒された、あるいは殺された、騎士さんや冒険者さん、モンスターたちの姿が、生々しい。

 これが殺し合いなのか。


 怖い。

 でも、助けたい。

 人も、モンスターも。


 だからこそ、町へのこれ以上の侵入は、防がなければならない。

 地形がそうなっているからなのだろう、私たちは壊れた防壁に向かって、侵入しているモンスターの背後から、回りこむように到着した。


「私もモンスターだ。聞け、同胞よ」


 オルガも叫ぶ。

 でも、わずかに振り向いたモンスターたちも、まるで興味もないと足を進める。

 馬を降りて、頑丈おじさんの後について私も走る。

 人やモンスターを避けて、飛び越えて。

 最後尾のモンスターは、私たちに襲いかかってきた。


「嬢ちゃん、こいつらには構うな。先頭のモンスター、そいつの前に立って、とにかく進行を止めるんだ」


 私の足が軽くなった。

 十五歳の何の変哲もない女子がただ走っているだけなのに、頑丈おじさんもオルガもシンガも置き去りにして、先頭のモンスターまでの何十メートルを、ものの数歩で駆け抜けた。

 先頭のモンスターと対峙した私は思った。


(どないせえっちゅうねん)


 ゲイル・スラッシュ七回で、何とかなるのかな?


「ミ・ユ・キ」


 聞いた声だ。

 振り向くと、三十おじさんと金髪お姉さんがいた。

 それだけで救われた気持ちになった。


「ラギュールさん。フィナさん」


 王国騎士団員さんと冒険者さんが何人かいて、町人はもう避難しているようだ。


「さあ、町を守るための戦いだ。気を引き締めよう」


 前衛に三十おじさんと騎士さんたち。

 後衛は金髪お姉さんと私と、宮廷魔術師さんが三人と。

 それに冒険者さんが三人。


 死の気配が感じられる、命のやり取りをする戦いは、きっとこれが初めてだ。

 あ、違うな。

 前にもあった。

 モンスターに殺されそうになったこと。

 うん。

 気持ちが少しだけ軽くなる。

 でも、手の震えや体の委縮は止まらない。

 前に立った私を、品定めするように見ていた先頭のモンスターがまた一歩歩みを進めると、ずしんと響いた。


 その時に、タオの羽が、優しく光った。

 光ると、私の心の九十パーセント以上を占めていた恐怖が、綺麗になくなった。

 これがタオの羽が持つ状態異常無効の効果なのだろう。


 後ろにいたモンスターたちに、指示を出した先頭のモンスターが、リーダーで間違いはない。

 姿も他のモンスターの上位種って見た目だし。


 私たちが十二人、モンスターは十以上はいる。

 ああ、頑丈おじさんとオルガにシンガで十五人だ。


 襲ってくるモンスターの一体に向かって、気が大きくなった私は、ものは試しと、呪文を唱えた。


「ゲイル・スラッシュ」


 リーダーのモンスターが狒々王、子分たちが狒々というモンスターだ。

 運転おじさんと一緒に見たモンスターの中には狒々のほうしかいなかったけど、話には聞いていたから、奴が狒々王だと、分かる。


 私が放ったゲイル・スラッシュを食らった狒々は後ろに倒れたけれども、戦闘不能になるほどのダメージではなかったようで、よろよろとしながら上体を起こす。

 私の魔法じゃ一撃で倒すほどの威力はまだ無理らしい。

 そこに頑丈おじさんたちが駆けつけてくれた。

 なんて心強い。

 頑丈おじさんの強さは、見る人が見れば戦わなくても分かる。

 狒々王にも分かったらしい。

 つまり狒々王は、敵の強さを量り知ることのできる、強いモンスターだということだ。


 狒々王が身構えて、頑丈おじさんは『紫熊の咆哮』で迎え撃った。

 周りの狒々たちにも飛び火して、狒々たちは尻尾を丸めた。

 頭を抱えたり悲鳴を上げたりしている狒々もいる。

 逆に頑丈おじさんの仲間、味方の私たちは勇気がみなぎる。

 アドレナリンが出て、実力以上の力を発揮できる、あの状態だ。


 狒々王は、ゴリラではないんだけど、ドラミングをしてグオオオと叫んだ。

 それはモンスターの言葉ではない。

 でも、子分たちに戦意を取り戻させるための行為であることは、狒々たちの顔、振る舞いを見れば分かる。


 中央で狒々王と頑丈おじさんの一対一。

 その左と右で、狒々五体五体と私たち七人七人の戦いが、始まる。


 私は一人一人、正確には一体一体、確認した。

 五体とも、白目が真っ黒だ。


「みんな、聞いて。狒々たちは悪いことをした凶悪なモンスターだけど、それは魔王のせいなの。本当は悪い子じゃないかもしれないの。私に試したいことがあるから、できるだけ殺さないようにしてあげて」

「自分が何を言っているのか分かっているのか、娘よ。人間に危害を加えたモンスターは死刑と決まっているだろうが」

「私はグマ爺さんの仲間よ。私をぞんざいに扱ったことを王様に言ったら、あなたはどうなるのかなあ?」

「ぬぐっ」

「騎士さん、ミ・ユ・キには不思議な力があるんだ。信じてみよう」

 と三十おじさん。

「……ぬぐぐ。……分かった。しかし、それで誰かに危害が及んだ時は、責任を取ってもらうぞ」

 

 いくぞと同時に、五体の狒々が飛びかかってきた。

 七人パーティーではあるのだけど、後衛が私と金髪お姉さん。

 前衛は三十おじさんと王国騎士団員三人に、シンガだ。

 悪いけど、実質四人。

 飛びかかってきた狒々の一撃で、シンガは戦闘不能になった。

 慌てて金髪お姉さんが癒しの呪文をかける。

 死んではいない。よかった。


「シンガ、無理はしないで、できることだけをして。そこで見ていて。そしてピンチになった人がいたらすぐに助けてあげて」

「うん、わかった。ぼく、がんばるよ」


 穢れのない目に、少し心が痛んだ。


 狒々はモンスターだ。

 人間以上の身体能力を持っているうえに、爪が発達していた。

 それで騎士さんの振るう剣の攻撃を防げるくらいに。

 でも騎士さんたちだって、日頃から鍛錬は欠かしていないはずだ。

 モンスターと同等かそれ以上に鍛えられている、と思ったのだけど、何だか、怪しい。


 冷静に考えて答えを出した。

 戦いっぷりを見て、答えが導かれた。


 腕が立つ騎士さんを、町の中で万が一の事態に備えさせるだろうか?  

 否。

 腕が立つ騎士さんは、モンスターを町に侵入させないために外で戦っているはずだ。

 然り。

 この騎士さんたち、言っちゃ悪いけど、下っ端だ。

 おそらくだけどまず間違いなく、見習い騎士みたいな、騎士のひよっこだ。

 でなかったら、前領主時代の腐敗した政治にどっぷりつかって、鍛錬を怠った騎士の風上にも置けない輩だ。


 騎士さんは剣を、三十おじさんはナイフを、狒々は爪を振り回して戦っている。

 私はゲイル・スラッシュで援護したいのだけど、どちらの動きも目まぐるしくて、何もできない状態だ。

 まったくの役立たずだ。

 どんな効果があるのかは分からないけど、金髪お姉さんは呪文を唱えている。


(あ!)


狒々と狒々王。どんな姿を想像なさっていますか?

狒々は120センチくらい、狒々王は180センチ以上160キロくらいと

設定させていただきます。

……想像と、違いましたか?


では、また。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。