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10  豪いことだ

美優姫が魔法を覚えて、やっとファンタジーっぽくなってきました。

さて、今話は……?


では、どうぞ。

「すげえじゃねえか、嬢ちゃん。魔力切れだったんじゃねのか? どんな魔法を使ったんだ?」


 私が知りたいよ、というのが偽らざる気持ちだ。


「ミユキのイヤリング、わずかにだが光ったな」

「イヤリング? ああ、まさかとは思うが、自動MP回復か?」

「ああ。そして対になっているほうが自動HP回復のようだ」

「……そいつは豪いことだ……そいつは豪いことだ」


 私が通訳すると、頑丈おじさんは呆けたように繰り返した。

 そう言われても、どれくらいすごいことなのか、天から分からなかったのだけど、最優秀鍛冶師にして名のある冒険者である頑丈おじさんが呆けてしまうほどなのだから、よっぽどすごいのだろう。

 そうなってくるとどれくらいすごいのか知りたくなるのが、人の常だ。

 だから訊いた。

 オルガが答えてくれた。


「物理攻撃反射、魔法攻撃反射、状態異常無効、自動HP回復、自動MP回復、それに、靴。ミユキの脚力を大幅に高めていたな。さらには、その靴にはまだ隠された能力がありそうだ。杖は魔力増幅と姿隠し。それにその服。秘めた力がある、ように見える。審美眼士なら分かるかもしれないが、私には分からないな」


 そんなにもすごいものなの!

 改めて見てみると、何だか神々しい。


「まったく、嬢ちゃんには驚かされてばっかりだ。装備品はS級冒険者と遜色ねえんだもんな」

「そんなにすごいの!」

「ああ、すごいもんだ。価値だけで言ったら、シグマと刃砕き、それに火竜鱗の三つを合わせても、タオの羽一つでも、釣り合わねえな」

「そんなに!」


 ああ、ウイング・アリゲーターはもうとっくに頑丈おじさんが退治している。

 こらって感じでシグマの柄でごつんだ。

 脳震盪を起こしたウイング・アリゲーターはふらふらと森へ帰っていった。


「お姉ちゃん、ありがとう」

「どういたしまして。さあ、帰ろっか」


 お父さんは獲った魚を晩ご飯にどうぞと勧めてくれたのだけど、もちろん、受け取りはしなかった。

 その代わり、町の警護代として初めてのお給料をもらえた。

 初めて自分の力で稼いだお金だ。

 それに気付いて、何だか一つ成長できた気がした。


 そう、私は人一人の命を、いたいけな少年の命を、この手で救ったのだ。


 眠る前、魔法の基本のイメージを、全身をエネルギーが駆け巡るイメージを繰り返しながら、そっちに気を取られたから、あんまり稽古にはならなかったかもしれない。

 けれど、自分で自分を褒めたくなった。


 明日はまた別の平原に行くと頑丈おじさんは言った。

 今度はどんなモンスターと遭遇するのだろう?

 それよりも、頑丈おじさんのお弟子さんたちは、鍛冶を教わりに来たのにモンスターとの戦い続きで、不満はないのだろうか?


 エネルギーが駆け巡るイメージ。

 エネルギーが駆け巡るイメージ。

 目を閉じて集中していたら、いつの間にか、私は眠っていた。


 夢を見た。

 私は夢はよく見るほうだ。

 デカ盛りの豚カツを、もう無理だって言っているのに、食べろ食べろと言われて、やけくそになった私は、食ってやると啖呵を切り、お腹がいっぱいのはずなのに、もりもり食べて食べろとせっついた大男二人に、すげえよ、あんた、姐さんだよと拍手されるという夢だ。

 どんなメッセージが込められているのか、何を暗示しているのか、それとも過去の出来事の記憶が形を変えて夢となったのか、分からない。

 あるいは何の意味もないのかもしれない。


 朝ご飯を三十おじさんと金髪お姉さんが営むお店でいただきながら、そんな話をした。


「デカ盛りっていうのは、何なんだい?」

「普通の量じゃなくて、そんなに食べられる人がいるのかっていうくらい大盛りの料理のことを、デカ盛りって言いませんか?」

「大陸には、そういうのがあるのね」


 三十おじさんはデカ盛りを知らなくて、私が説明すると、金髪お姉さんが勘違いのままで受け止めた。

 この間違いを正したい。

 でも、私がこの世界の人間じゃないことは、極力知られないようにしないといけない。

 伏せなければいけない。

 どうしたものか。


 その日、頑丈おじさんは弟子を連れてはいなかった。

 自炊をさせることも鍛冶師修行の一環らしい。

 こないだの夜のように野営をする時に、僕は私は料理できません、じゃ、たしかに困る。


 九時の十分前には門の前で待つように言ってあるから、ちょっと待たせるくらいでいいんだ、と頑丈おじさんは構えている。


 目に見えて活気が戻ってきたクリミネンの町では、朝ご飯をこの店に食べに来る人の数もぐっと増えている。

 前に閑古鳥が鳴いていたのが嘘のようだ。

 そんなものだから二人は忙しく、もちろん私たちだけの相手をしているわけにもいかない。

 私たちは、私と頑丈おじさんとオルガの三人で続きを話した。


「しかし変わった夢だな。おらあ夢なんて、前に見たのがいつか思い出せねえくらい見てねえがな」

「それはきっと、マグマが冒険者だからだろう。戦いの中では、寝ていてもいつ異変が起きても対応できるようにしなければならない。すぐに寝てすぐに起きる。それが身についているから、夢を見るような形での睡眠ができないようになってしまっているんじゃないのか?」

「だって」

「ああ、たしかにそうかもしれねえな」


 オルガがモンスターの言葉で喋るのを、また、私がそれを通訳するのを、カウンターの隣のお客さんに、物珍しそうに見られた。

 それに気付いてもお構いなしに私たちは会話を続けた。


 頑丈おじさんが時計を見て、じゃあ行くか、と席を立った。

 門の前には五人がちゃんと待っていた。

 そこに六人目が現れる。


「マグマさん、私を弟子にしてください」

「お前さん、鍛冶の経験はあるのかい?」

「はい」

「じゃあ、お前さんの造った武具、今、見せられるかい?」


 六人目は待ってましたと腰に下げていた剣を鞘から抜いて頑丈おじさんに見せる。


「うん、うん、いい剣だ。俺に教わって、それが時間の無駄だと思う結果になったとしても、文句は言わねえと、約束できるかい?」

「はい。約束します」

「なら、お前さんを弟子にするとしよう」

「ありがとうございます」

「ただ、今日握るのはハンマーじゃねえ。今日するのは格闘だ。鍛冶師たる者、武具を扱えてなんぼ。それが俺の流儀だ。今日のは難敵だぞ。それでもついてくるか?」

「はい」

「よし。いい返事だ。今日戦う敵は、魔滅死刃だ」

「マメッシバ?」

「ああ。魔の、滅ぼす、死の、刃って書くんだ。ありゃあ反則だ。なかなか勝てる奴はいねえぜ」


 首をひねった私に、頑丈おじさんが説明をしてくれた。

 何か、どっかで聞いたことがあるような……。


装備品でファンタジーっぽさがでましたね。

別に狙ったわけじゃないんですけどね。


では、また。

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