7 何属性?
おっかなびっくりの美優姫。
ギルドで何をどうする?
では、どうぞ。
「マグマさん、いらっしゃいませ。今日もこれから町の警護ですか? ああ、お弟子さんたちがいるから、ダンジョン探索ですか? 素材集めの依頼、あったはずですけど」
「いや、違うんだ。この娘をギルドに登録しようと思ってな」
「初めまして」
初対面。
私がこれから冒険者として活動するのなら、第一印象が大切だ。
良好な関係を築くためにも。
「初めまして。私はこのギルドで受付として働かせてもらってるリノンと言います。これから幾度となく顔を合わせることになると思うので、よろしくお願いいたします。登録ですね、はい、承ります。こちらに名前など必要事項を書いていただけますか?」
考えもしなかった。
私、この世界の文字、書けるわけない!
「お名前を」
と再度促されて、私はペンを取った。
こうなりゃなるようになれ、だ。
日本語の漢字で『小鳥美優姫』と書いてみた。
必要事項も当然、漢字かな交じりだ。
そして受付のお姉さんに差し出す。
どんなリアクションが来るのか?
「コトリ・ミ・ユ・キさんですね」
通じた!
「希望される職業は『吟遊詩人』でよろしいですね?」
「はい」
「それでは今から冒険者である証となるカードを作りますので、少々お待ちいただけますか。すぐですので」
受付のお姉さんは笑顔を残して席を立った。
「簡単過ぎて、驚いただろ?」
頑丈おじさんも笑顔で、頷いた私の顔も笑顔だ。
これで私も冒険者。
すぐですと言った受付のお姉さんは本当にすぐ戻ってきた。
「お待たせいたしました、ミ・ユ・キさん。これがあなたのカード、通称ギルドカードになります。これであなたも冒険者です。S級を筆頭に、A級、B級と続いていって、一番下がG級となっています。ミ・ユ・キさんはG級からのスタートとなりますが、何かご質問はございますでしょうか?」
「いいや、ねえぜ。早速で悪いんだが、魔法を覚えさせてほしいんだ。誰か先生は、空いてるかい? いや、すぐでなくていいんだ。ちょっと地下を借りて、武器の適性を確認したいからな」
「はい。どちらにしろ、先生をお呼びして準備が整うのに二十から三十分はかかってしまいますので、今は誰も使っていませんし、どうぞ、お使いください」
「ありがとよ」
そうして地下に降りた。
階段を見て、地下二階もあることが確認できたけど、一階の扉を頑丈おじさんが開けたので、二階以降がどんな風になっているのかは分からなかった。
後について部屋に入る。
そこは石壁になっていて、天井は高く、かなりの広さだった。
壁にいろいろな武器が並べてあって、それを品定めするように見ていた頑丈おじさんが
「まずはこれを試そうぜ」
と、剣を一本、突き出した。
私は非力で、ショートソードという、その名の通り小さめの剣すら満足に振るえなかった。
力よりも何よりも『腰が入っていない』のだそうだ。
へっぴり腰のお手本を示してしまったのかもしれない。
ため息が聞こえた。
頑丈おじさんは
「まあ、分かっちゃいたがな、一応はな。試してみないとな」
と、頷いた。
「やっぱり嬢ちゃんには、魔法だな。吟遊詩人は後衛職だしな。知ってるかい? 優れた吟遊詩人は、風属性の魔法を、そりゃあ見事に使いこなすんだ」
へえ、そうなんだ。
じゃあ私も風属性の魔法を覚えなきゃ。
そう思って点と点が線になった。
私が闘技場で歌った時、マイクもないのに私の声がみんなに届いたのは、闘技場に風魔法が使われていたから、なのだ。
風魔法を使いこなせるようになる、イコール、戦場で、何なら一キロ先の人たちにも、歌を聴かせることができる、という意味だ、きっと。
それを言葉にしてみた。
「そう。物分かりがよくて助かるぜ」
頑丈おじさんが笑顔になった。
さっきため息をついた人、弟子の一人も今度は、おっというように目を明るくした。
「となるとやっぱりメインの武器はスタッフ、杖だ。サブでダガーと行きたいところではあるが、今はまだ時期じゃねえ。まずは杖を、ある程度使えるようになってから。それからだ」
何本かあった杖の中から、一本選んで、ほれ、と投げてよこした。
「振り回してみな」
言われるがまま、ブンブンとしてみる。
どうやらさっきよりはマシらしい。
そんなことをしていると足音が近づいてきて、先生だ。
もう二、三十分経ったらしい。
「初めまして。あなたがミューキーさん……失礼、ミ・ユ・キさんね」
「はい。先生に魔法を教えていただくことになりました、小鳥美優姫です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。
第一印象が、肝心だ。
「まあ、ありがとう。私の名前はリズネアです。みんなからはリズ先生って呼ばれているわ。ミ・ユ・キさんにも、そう呼んでいただけると嬉しいわ」
「はい。よろしくお願いします。リズ先生」
リズ先生は温和そうな、感じのいい女性だった。
年齢は、失礼に当たるので伏せさせてもらうけど、子どもがいたら成人しているだろう。
仕事の時は髪を後ろに束ねるようにしているみたいだ。
背は私よりも低そうだから、百五十五、六くらいか。
細身だが、体のラインを隠すようなローブを纏っているから、お腹がぽっこりしていても、それはわからない。
何だか優しそうな先生だけど、教える時はスパルタ!
なんてことにならないでね。
「まず聞きます。魔法には六つの属性があるのですが、分かりますか?」
「いいえ、分かりません」
「火、水、風、土、光、闇、です。吟遊詩人と相性がいいのは、どの属性ですか?」
「風、ですよね?」
「正解。そして人には、向き不向きがあります。あなたが風属性と相性がいいか、それを知るのが、まず一番にすることです」
そう言うと、ローブから水晶玉を取り出して、そっと私の前へ。
私は一拍置いて手を差し出す。
私の手に乗せて、言った。
「掌が温かくなるようなイメージで、持ってみて」
言われるがまま、イメージした。
すると水晶玉が光りはじめた。
「もっと、もっと強く、イメージして」
水晶玉の光が、渦を巻き始めた。
止めろとは言われなかったので、私は掌が温かくなるイメージを保持し続けた。
いつの間にか目をつむっていた私は、リズ先生に
「見てみて、ミ・ユ・キさん」
と言われて、素直に見た。
深く明るい緑色の光が水晶玉から発せられていた。
「おめでとう。あなたは風属性の魔法使いの素質あがるわ」
イエス、イエス、イエス!
私がブラジル人ならサンバを踊っている。
この物語では、生まれ持った属性以外の魔法も
使えるようになるかならないかで言ったら、『なる』という
世界にするつもりなのです。え~とか言わないでくださいね(笑)
もちろん、『それ相応の苦労も伴う』という縛りも作ります。
では、また。




