5 活気が戻ってきたクリミネン
これから暑くなるみたいですね。
ある漫画で夏が一番みんなに好かれてるって話があったんですけど、
皆さんはどうですか?
では、どうぞ。
話をニ日前に、戻す。
「フィナさん、どうしたんですか?」
「それはこっちが聞きたいわ。人が来たからいらっしゃいませって言ったらその人が崩れるように倒れて。ええ⁉ と思って駆け寄ってみたら、女の子で、よく見たらミ・ユ・キで。驚いたわ」
「これ、夢じゃないですよね」
「ええ、現実よ。何? 寝ぼけてるの?」
「寝ぼけてるというより、眠って目が覚めたら現実だったというか……」
「それは当たり前じゃない。やっぱり寝ぼけてるのね。とりあえず、こっち来て、座ったら?」
「はい」
促されるまま椅子に向かって店内を歩いていると、目が覚めた。
「綺麗になってる」
そう、前回モンスターによってボロボロにされた店内が、見違えるように綺麗になっていたのだ。
新しい木の匂いがする。
新築の匂いだ。
「そうなの。ミ・ユ・キは知らないでしょうけど、王様が、この町の領主を兼任するようになったの。道中にグマ爺が話していてくれたみたいで、この町に来て町人に演説をした後で、町の再建をする手始めとして、モンスターによって破壊された家や店を立て直すって。ここもその中の一つなの。さすが王様ね。この町に来てまだ一週間も経っていないのに、もう町に活気が戻ってきたわ」
「よかったですね」
「うん。ところでミ・ユ・キ、可愛い服ね。それも大陸のものなの? でも、高価な感じがするわね。魔力を感じる。これ、ここに置いておくわよ」
「え⁉ ああ、これ」
私は夢の中と同じ服装だった。
つまりは魔法使いのおじいさんが暮れたあの服に、タオの羽だ。
言われるまで気が付かなかった。
ギターも持ってきていたようだ。
「もらったんですけど、私も気に入ってるんです」
「プレゼント? いいセンスね。ミ・ユ・キのいい人なの?」
「そんなんじゃないですよ」
「どうしたんだい?」
「ラギュール。ミ・ユ・キよ。ミ・ユ・キが来たの」
「おお、ミ・ユ・キ。どうしていたんだい? グマ爺に訊いても笑うだけで教えてはくれないんだ」
「まあ、いろいろと。私は謎多きミステリアスな女なんです」
「ハハハハハ。そうか、なら深くは訊かないよ。朝ご飯は食べたのかい?」
「いえ、まだです。ていうか、今、朝なんですね」
「まだ半分、夢の中なの」
「ああ、そういうことか。簡単なものをさっと作るから、食べていきなよ。お代はいらないよ。ミ・ユ・キは恩人だ。特別扱いだ。この町の、今やヒーロー、グマ爺の、大切な仲間だしね。つまりは私たちの重ねての恩人でもあるって意味だから」
「グマ爺さん、元気ですか?」
「もちろん、元気も元気。鍛冶師大会から帰ってきてからは、前みたいな明るいグマ爺になっているよ。ドワーフには大酒飲みが多いって聞くけど、ちょっと飲み過ぎじゃないかって心配していたんだけどね。酒を飲む暇もないくらい、忙しくしているし、この店に来てよく笑っているよ」
「今は、さすがに家ですか?」
「うん。だと思うよ。今はね、凶暴になったモンスターが町人を襲うことがあるから、町の見張りだとか、町の外に出て仕事をする人たちの警護だとかを、王国騎士団や冒険者が受け持っているんだ。王様から給料をもらってね。昼番と夜番に別れてね。グマ爺さんは昼番だから、いつもなら開店してまだ混み始める前にうちに来て朝ご飯を食べていくんだけど、今日はどうかな?」
「じゃあ今は鍛冶のほうはお休みしてるんですか?」
「いやいや、それがそうじゃないんだ。鍛冶師大会で最優秀鍛冶師に選ばれたでしょう。グマ爺に鍛冶を教わりたいって人が国の中からだけじゃなくて外からも来て、みんなグマ爺のことを『師匠、師匠』って。グマ爺はああいう人だから、困った顔をしながらも面倒を看ているみたいだよ」
「冒険者としても、活動を再開したのよね」
「ああ、そうだ。王様に頼まれたら断り切れねえなって、言っていたんだった。それが昨日だ。今日は準備をして、近くのダンジョンに鍛冶で使う素材の集め方を教えるため、モンスターとの戦い方を教えるために、明日、潜るって。鍛冶の弟子だけじゃなくて、冒険者の中にも参加する人がいるらしいよ。グマ爺の名前は、私が思っていたよりもずっと広まっていたみたいだ」
三十おじさんはにこやかに話した。
前に話した時には、笑顔にもどこか陰りのようなものも見えたのだけど、それがない。
話ながら手も動かしていて、何だか美味しそうな匂いがしてきた。
「タオジオルガはグマ爺さんと一緒なんですよね? どうしてますか?」
「そう。初めはモンスターだから、みんな警戒していたんだけど、王様が紹介して、グマ爺が『俺の仲間だ。いい奴だ。怖がることはない』って。それでもまだおっかなびっくりだったんだけど、日を追うごとに町に馴染んできている途中って感じかな」
「私たちの言っていることは分かるみたいなんだけど、向こうの言いたいことは私たち、分からないでしょう。だからゼスチャーで伝えようとするんだけど、それが何だか可笑しくて」
金髪お姉さんは思い出し笑いをした。
どうやら受け入れ態勢はできつつあるようだ。
それはいいことだ。
朝の開店して混む前に来る頑丈おじさんがまだ来ていないということは、遅くても八時前であることを意味している。
さっとお皿が差し出されて、お皿にはハムと玉子のサンドイッチが乗っていた。
いただきますと食べ始めると、金髪お姉さんが牛乳を注いでくれた。
なんていいタイミングだ。
一口頬張って、噛んで噛んで噛んで、飲み込んだ。
うん、美味しい。
それをそのまま伝えると、三十おじさんも金髪お姉さんもにっこりとした。
食べて会話をする、に集中していたからか、ドアが開くまで人が近づく気配に気が付かなかった。
おはよう、と男性が入ってきて、冷静に声を考えれば分かるのだけど、反射的に私は、
頑丈おじさん?
と思ってしまった。
振り返ってみたらまったく知らない人で、私の知らないお客さんが来店するのは当たり前なのだけど、ちょっとがっかりした。
二人にとっては大切なお客さん。
様?
だから、私ばかりをかまっているわけにも、もちろんいかず、二人は仕事を始めた。
私が黙々と食べていると、一人、また一人とお客さんが来て、お店が賑わってきた。
何だか嬉しい。
私がサンドイッチを食べ終える前に、頑丈おじさんはやってきた。
弟子を五人も引き連れて。
夜、トイレに行ったときに『G』がいて
ふわあっと声を上げてしまいました。
同じ経験はありませんか?
では、また。




