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15  美優姫、投獄される

台風や大雨だとかの被害のニュースは聞きたくないですけど、

水不足が解消される一助になるなら、我慢しなくてはいけないのでしょうか?

去年今年に始まったことではないのでしょうけど、

天気の異常も怖いですね。

本編とは何の関係もありません。


では、どうぞ。

「うええええええん」

「泣くな、嬢ちゃん」

「だってえええええ」


 私、小鳥美優姫、十五歳。

 初の牢屋入り。

 これが泣かずにいられるか!


「大丈夫ですよ。事情はきちんと説明しました。向こうが嘘をついていると、じきに分るでしょう。そしたら釈放です」

「でえええもおおお」


 そう、殺し屋の死体と聞いた門兵たちは、それを聞いた途端、ギロリと睨んだのだ。

 おい、と誰かを呼び、顎で合図をして、連れてきたのは昨日の逃げた殺し屋二人。

 奴らはへこへこと腰を低くして、被害者でござい、という顔をしていた。

 そして、言った。


「そうです。こいつらです。私たちを襲って、仲間を殺し、馬を奪ったのは。おお、無事だったか。あいつは生き残りです。殺されたんじゃないかと、気が気じゃなくて」


 そう言って嘘泣きをした。

 手下Aは、あろうことか、それに乗りやがった。

 

 ふざけんな! 


 でも、その三文芝居が通ったのだ。

 そして、尋問されて、こういう状況になっているのだ。


 私が考える最悪のシナリオ。

 それは、頑丈おじさんの鍛冶師大会参加を邪魔するため、また、自分の息子の悪行を隠ぺいするために、クリミネンの領主の父親大臣が裏で手を回して、罪なき私たちに、前に元領主にしたように、罪をかぶせて、それがまかり通って、私たちが罰せられる。

 王様や王国騎士団にまで腐敗が及んでいないことを祈らずにはいられない。

 でも、腐った奴が大臣としていられる国なのだ。

 その可能性はゼロじゃない、ゼロじゃないんだ。

 だから私は泣かずにはいられない。


「うええええええん」


 と、カツンと足音が響いた。

 涙が止まった代わりに心臓が速く動いた。

 どっちだ?

 カツンが近づいてきて、音も大きくなり、私の心臓の音もクレッシェンドだ。

 私は私たちを牢に入れた王国騎士団員が来たのだと思った。

 でも、違った。


 昔の音楽家の肖像画みたいな髪型の、闘牛士みたいなジャケットを着た、四十代に見えるのに目だけはくりくりと幼い感じの、何だか変なおじさんだった。


「やはりマグマで間違いはないのか」

「王様!」


 来たのは王様だった。

 変て言って本当にごめんなさい。


「王様、聞いてください」

 と頑丈おじさんは訴えようとした。

 でも、邪魔された。

「いいえ、王よ。こやつらの言葉に耳を貸す必要はありません。こやつらは残虐な殺人者なのです。旅人を襲い、お尋ね者の殺し屋という言いがかりをつけ、十三人も殺した、許すまじ犯罪者のなのです。さあ、お耳が汚れますぞ。帰りましょう」

「しかしセラネスよ、疑いをかけられているのはあのマグマなのだぞ。私にはどうしても嘘を言っているとは思えないのだ」

「そうです、王様。死体を、生き残りを、よく調べてください。犯罪者は奴らのほうなのです。調べればわかります。私たちのほうが命を狙われた被害者なのです」

「ええい、うるさい。手だけでなく口も汚れておるわ。ささ、王よ、このような場所に長居は無用です。帰りましょう」

「しかし」

「王様、私の言葉に嘘があるかないか、よく吟味ください。私たちは無実です。私がこのような嘘をつく男でないことを、あなたはご存じでしょう?」

「うるさいぞ。さあ、王よ」


 セラネスに背中を押されて、まだ何か言いたそうな王様は牢屋から去っていった。

 私は叫んだのだけど、届かなかった。


 あのセラネスって奴が悪徳領主の父親大臣で、間違いない。

 あいつが私たちを襲った殺し屋たちと、裏でつうつうなんだ、これも間違いない。

 でも、王様は頑丈おじさんに対して、とても親密に接していた。

 それはどういうこと?

 それよりも何よりも、私たち、罰せられちゃうの?


 また牢屋は静寂に包まれた。

 父親大臣は私たちのことを『十三人も殺した犯罪者』と言った。

 大臣が言うのだから、王国騎士団員も、それに従うのだろう。

 まさに、王様頼みだ。


 王様が馬鹿なら、大臣の言うことを通して、私たちは死刑になる。

 十三人も殺したという嘘が通るということなのだから。

 いや、殺しはしたけど、正当性があるのに、それを認めてもらえない、ということになるのだから。


 頑丈おじさんの訴えが心に響いたのなら、ちゃんと調べてもらえるのなら、私たちの無罪が証明されて、殺し屋たちが罰を受ける。

 そういう然るべき判決が下る。

 ああ、この国には正しい心を持った大臣なり騎士団員なりはいないのか。

 絶たれそうになっている希望に、何とかしがみついた。


 そして私は、あ、と思った。


 鍛冶師大会、まさか出られないなんてことには、ならないよね?


 考えがそこに及ぶまでに、一時間以上かかってしまった。

 少なくとも私は、私の心は、そこまで恐怖に支配されていた。

 空気は重苦しく、私はあっけらかんと口を開ける良く言えば豪胆、悪く言えば空気を読めない無神経ではなく、疑問は疑問のままで、私の頭の片隅にあった。


 頑丈おじさんも運転おじさんも口を開かない。

 何か思うところがあるのだろう。


 そうしているうちに、牢の番をしている騎士団員が牢屋の通路に灯を灯した。

 夜になったのだ。

 こんな時でも、お腹は空く。

 でも、ご飯くださいとは言えない。

 殺人の嫌疑をかけられた私たちには、ご飯もないのだろうか?

 でものでも、これが最後の晩餐だ、なんて嗤われたら、私は絶望のあまり禿げるだろう。

 ご飯を持ってきてほしいような、欲しくないような……。


 またカツンと足音が響いた。牢屋は構造上、響きやすいようだ。

 三つの可能性が、私の頭に浮かんだ。


 ご飯、死刑、無罪放免だ。


(三番目であってください。間違っても二番目はやめてください。せめて一番目にしてください)


 鉄格子に顔を押し付けて、私は見た。

 昼間来た父親大臣は、王様に合わせて大臣でございという服は着てはいなかった。

 でも二人の騎士を引き連れたその男は『いかにも大臣』という服装で、やってきた。

 

 一番目は消えた。

 じゃあ、どっちだ?


 図らずも、唾を飲んだ。

 そんな私の前を、いかにも大臣は素通りした。

 運転おじさんの前を通る時も、一言の声もかけなかった。

 そして、頑丈おじさんが入っている牢の前で足を止めた。

 角度的に表情はもちろん姿も見えなかったのだけど、牢屋に立ち込める独特の重い空気が、一段と濃くなったのは、分かった。


 いかにも大臣が、口を開いた。


テレビで『アングリーマネジメント』なんてやっていたのですが

それを見て『アングリーマネジメント』しました。

これも本編とは何の関係もありません。


では、また。

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