表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能な勇者恋をする  作者: ぶーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

第12話 爆裂! 下心の一閃と獄炎の調教

「ふふ……。まずはその減らず口、二度と開けないように縫い合わせてあげるわ!」


イザベラの宣告と共に、紅蓮の炎を纏った棘付きの鞭が、生き物のような軌道を描いてイチカラへ襲いかかった。

「ひギゃあああああああ!」

イチカラは情けない悲鳴を上げながら床を転がった。直後、彼がいた石畳が爆撃を受けたかのように粉砕され、赤い火花が散る。


「イチカラ、ぼさっとするな! 下がってろ!」

先陣を切ったのはレオとルナだった。二人は左右から同時に踏み込み、音速を超える踏み込みでイザベラの首元を狙う。だが、イザベラは嘲笑を浮かべ、手首を僅かに返した。


「遅いわよ、小蠅こばえたちが」


シュパパパパァン!!


一撃に見えた鞭の音は、実際には重なり合った数千の打撃音だった。音速を超えた鞭が、レオの二本の剣を叩き折り、ルナの鋭い一突きを真正面から粉砕する。

「なっ……!?」

「ぐあぁぁぁッ!!」

防ぐ間もなかった。レオとルナは、その速度の暴力によって同時に壁まで吹き飛ばされ、血を吐いて崩れ落ちた。二人の勇者候補が、一瞬で戦闘不能に追い込まれたのだ。


「ルナ! レオ!」

スターが拘束の重力魔法を力ずくで引き剥がし、大剣を構えて跳躍しようとしたその時。


シュルリ。


冷たい蛇のような鞭の先端が、吊るされたエリザの白い頬を薄く切り裂いた。

「……動かないで、スター。次はこの女の喉を貫くわよ?」

「くっ……卑怯な真似を……!」

最強の勇者も、教官の命を盾に取られては動けない。スターの足が止まった。


「さて……これで邪魔者は消えたわ。そこの弱そうな坊や、あなたと私、一対一ね」


イザベラが再びイチカラへ歩み寄る。しかし、彼女はただ攻撃するだけでは満足しなかった。イチカラの心を折るため、さらなる残酷な「教育」を始める。


「あなたの教官、本当に綺麗な体をしているわ。この服……邪魔だと思わない?」


パキィィィィン!!


イザベラの鞭が、エリザを包んでいた丈夫な教官服を正確に捉え、引き裂いた。

「……っ! やめなさい……っ!」

エリザの悲鳴が響く。破れた布の隙間から、拘束の鎖に食い込むほどの豊満なボディが、イチカラの瞳に焼き付くように露わになった。

鍛え上げられたしなやかな肢体、そして鎖によって強調される暴力的なまでの曲線。


「…………え、ええええええっ!?」


イチカラの思考が、真っ白に染まった。

恐怖で止まっていた心臓が、今度は別の意味で爆発しそうになる。


「あら、見惚れているわね。いいわよ、死ぬ前にたっぷりと拝ませてあげる。その代わり……対価を払いなさい!」


シュパァァァン!!


イザベラの鞭が、無防備になったイチカラの肩を打った。

「あだぁぁぁっ! 痛い! でも、でも目が、目が離せないぃぃぃ!」

「ふふ、いい啼き声! 次はどこを打ってほしいかしら?」


鞭の打撃を受けるたびに、イチカラの体は裂け、血が飛ぶ。激痛が全身を駆け巡っているはずだった。だが、イチカラの瞳は、まるで何かに取り憑かれたように、吊るされたエリザの姿に釘付けになっていた。


(……すごい。教官……あんなに、あんなに凄かったのか……! これを助け出せたら……僕、僕……!)


「イチカラ、何をボケっとしてるのよ! 避けなさい!!」

壁際で動けないルナが絶叫するが、イチカラの耳には届かない。


鞭がイチカラの腹を、脚を、腕を、無慈悲に打ちのめす。

だが、一発受けるごとに、イチカラの背中のアザは輝きを増していった。

それは勇気でも正義でもない。

「教官を守り、その放漫なボディを独占したい」という、極限まで濃縮された、あまりにも不純で純粋な「欲望」の輝き。


「……あ、あはは……。イザベラさん、アンタ……やりすぎだ」


不意に、イチカラの口から震えではない、低い笑い声が漏れた。

彼は鞭の直撃を受けながらも、一歩も引かずに立ち上がった。全身血まみれ、しかしその手にある白銀の剣は、エリザの肌の輝きを反射し、太陽のような神々しさを放ち始めている。


「教官に……なんてこと……しやがるんだぁぁぁ!!」


イチカラの咆哮と共に、床が陥没した。

恐怖を凌駕した下心が、アザの力を暴走させる。イチカラは迫り来る音速の鞭を、なんと素手で掴み取った。


「なっ……焼けるわよ!? その手は炎で――」

「熱いとか痛いとか、そんなの関係ねぇんだよぉぉ!!」


ジュウウウ、と肉の焼ける音がするが、イチカラは構わず鞭を引き寄せた。その怪力に、イザベラがたじろぐ。

「引き寄せられたのは……私の方!? なんてデタラメな魔力なの……!」


「サリナさんに貰った剣……教官の無念……そして僕の煩悩! 全部乗せて、喰らえぇぇ!」


イチカラが白銀の剣を振り下ろす。それは剣技ですらなかった。ただの、巨大な光の塊を叩きつけるような一撃。

「そんな……アスタロト様ぁぁ!」


ドォォォォォォォォォン!!


玉座の間を揺るがす大爆発が起きた。光が収まった時、そこには鞭を粉々に砕かれ、壁に深くめり込んだイザベラの姿があった。獄炎の女王と呼ばれた幹部は、白目を剥いて完全に沈黙している。


イチカラは、そのままの勢いでエリザを縛る魔法の鎖を一刀両断した。

「教官! 今助けます!」


ガサリ、とエリザがイチカラの腕の中に落ちてくる。

教官服はボロボロで、その豊満な肌がイチカラの腕に直接触れる。イチカラは、鼻の下を地面につくほど長く伸ばし、ニチャァ……と下卑た笑みを浮かべた。


「いやぁ、教官……。助けられて良かった。それにしても、近くで見るとさらに――」


ドカッ!!!


「……どこ見てんのよ、このバカ弟子ッ!!」


助け出された瞬間、エリザの怒りの鉄拳がイチカラの顔面にめり込んだ。

ボロボロの状態でも、その拳の威力は健在だった。イチカラは錐揉み回転をしながら吹き飛び、スターとルナの足元に転がった。


「……結局これか」

スターが呆れたように溜息をつく。

「でも……まあ、助かったわね」

ルナが苦笑し、一行は満身創痍ながらも、旧魔王城に一つの勝利を刻んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ