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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
紋章王国

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紋章世界の終焉と再建 前編

「あなたは結局、何がしたかったの?」


私は、彼を見上げて問いかける。


「魔王のやることに理由が必要か?どうしても聞きたいのなら、俺の所まで来いよ。そうしたら、この間みたいに可愛がってやるぜ。」


その言葉に、私は反射的に剣を投げつける。


しかし、彼の所まで届くはずもなく、剣はカランカラーンと、むなしく地に落ちる。


「まぁ、ゆっくりときてくれよ。俺はこれからリノアの相手をしなきゃならんからな。」


彼はそういうと高笑いだけ残してその姿を消す。


「クッ!」


私は堕ちた剣を拾い上げるが、悔しさにその場から動けずにいた。


「姫様、行きましょう!」


マリアが私の手を掴み、立ち上がらせてくれる。


彼女だってつらいはずなのに、そんなそぶりを見せず、私に従ってくれている。


「そうね、行きましょうか。」


私は気を取り直し、ダンジョンの奥へ……彼が消えた方へ進路を定め、奥へと入っていく。


暗闇を進みながら、私は考える……何故、こんなことになってしまったのだろうか?と。


私はどこで道を間違えたのだろう?


いくら自問しても手も答えは出てこない。答えが知りたかったら、もう一度彼に会い、その胸に剣を突き立てるしかない……らしい。


私は、小さく儚い光を頼りに、奥へ奥へと進むのだった。



真っ暗な部屋の中に、一筋の光が差し込むがすぐに消える。


だけど、その間に誰かが入ってきたのは分かる。


そして、入ってきたのが誰か?という事も……。


「おにぃちゃん……なんでこんなことするの?」


私は入ってきたであろう人物に声をかける。


その人物からの変事はなかったが、代わりに部屋の中に明かりが灯される。


互いの顔がようやく見えるぐらいの明るさではあるが、先程迄の暗闇に比べれば眩しいぐらいだった。


「おにぃちゃん、ねぇ、答えてよ。」


私は唯一自由になる口を精一杯動かす。


X字に立てかけられた木に私の四肢は縛られ、まったく身動きが取れない。


もっといえば、衣類はすべて剥ぎ取られて全裸だから、明かりに照らされると少し……ううんかなり恥ずかしい。特に脚を拡げられているので、恥ずかしい箇所がまるで隠せていなくて、丸見えだ。

いくらおにぃちゃんでも……おにぃちゃんだからこそ、恥ずかしいのに……。


「リノアが選んだんじゃないか。」


今まで黙っていたおにぃちゃんがようやく応えてくれる。


「だって……ッ、ん……。」


おにいちゃんが私の胸を弄る……いや、恥ずかしいよぉ。


「リノアに選ばせてやっただろ?こうして奴隷同然に扱われるのがいいか、それとも……。」


「あ、ぁんっ!そこダメぇ……。」


おにぃちゃんの指が私の大事なところに入ってくる。


おにぃちゃんは選ばせてやったっていうけど……選べるわけないよぉ……。


「俺を殺せって。」


「で、出来るわけ……ぁんッつ、ぁあぁっ……。無いよぉ……。い、いやぁ……。」


おにいちゃんの指の動きが激しくなる。


「リノアが、俺を殺さないっていうから、こうして、俺の玩具にされるんだよ。」


「おにぃちゃんを……ぁんっ……殺せないよぉ……ッ、い、いや、いやっ……。どうして、そんな事……ぁんッ……おにぃちゃんの事好きなのにぃ……。」


身体に与えられる刺激が強すぎて、頭がボーっとしてくる。、


「ぁ、ぁんッ、イヤぁっ、ぁぁぁぁぁっつ!」


不意に体の中で何かが弾け飛び、身体中の力が抜ける。


「ぁんッ、だめ、ダメ、ダメぇぇぇ……、」


衝撃から抜け出る前に新たな刺激が咥えられる……もうダメ、おかしくなっちゃう。


「リノアが殺してくれないから、セレスが俺を殺しに来るんだ。セレスが来るまでの間、短いかもしれないけど、たっぷり可愛がってあげるよ。」


おにぃちゃんの声が遠くに聞こえる。


もう、なんでもどうでもいい。


ただ、おにぃちゃんが好き、それだけしか考えられない。


「ぁん……ぉにぃちゃん……大好きだよ……。」


「俺も好きだよ。」


おにいちゃんの責めが激しくなる。


私はもう、その快楽に身体も精神も委ねるだけ……。


おにぃちゃんに「好き」って言ってもらえたから、もう、後はどうでもいいの……。


……でも、なんでこうなったんだろう?他の道ってなかったのかな?


快楽に心がかき消される直前、そんな考えが浮かぶが、一瞬にして真っ白く塗りつぶされた。



「難儀っすねぇ。」


「難儀ね。リノアちゃんが少し可哀想。」


モニター上に映し出されるリノアの姿。


その顔は、もう、ただの牝犬でしかない。


考えることを放棄して、与えられる快楽に堕ちきった少女。


可哀想だと思うが、レイフォードを殺すという選択が出来なかった時点でこうなることは決定していた。


リノアにはちゃんと「本当に殺すわけじゃない。戦って最後にこのナイフで刺すだけ」と説明をしてあった。


だけど、最後の最後に彼女は躊躇った。そのナイフでならいくら刺しても死なないと、何度も説明したにもかかわらず、彼女はレイフォードにそのナイフを突き立てることは出来なかった。


だから、仕方がなく、レイフォードは、リノアを気絶させ、捕虜とした。


そして、女神との約束通り、彼女を抱いている。……リノアをこの世界で無事に生かすためには、それしか方法がなかったからだ。


「どこで計画が狂ったのかしらね?」


「この女の所為っす。」


リィズが、もう一つのモニターに映るセレスを指さす。


「んー、そう一方的に言ったら可哀想だよ。その子にだって事情はあるんだし。」


「カナミは甘いっす。コイツが裏切らなければ、今頃はうまく言ってたはずっすよ。」


「うーん、でも裏切らなくたって、最終的にはこうなってた気もするのよねぇ。」


「それは女神の思惑っすか?」


「多分ね。」


「……いつか下剋上してやるっす。」


「許してあげてよ。充分報酬をもぎ取ったんだから。それにこの世界を残すためには仕方がないってのは分かるでしょ?」


「これが必要な事ってのは理解してるっす。……それとは別にやるせない気分になるっすよ。」


「まぁまぁ、そこは押さえてね。その分、後で私達も可愛がってもらぉ。」


「うん……。」


リィズは、モニターに映し出されているリノアの幸せそうな顔を見て、怒りの矛先を収める。


そしてもう一方のモニターに映っているセレスに向けて呟く。


「今度こそ、失敗は許さないっすからね。」



「リノア、ごめんな。」


くたぁとなっているリノアの頭を撫でながら、そう呟く。


セレスが来るまで、まだ時間はあるからしばらく休憩だ。


本当はリノアをこんな風に張りつけにしたくはない。今も、この拘束を解いてベッドの上で眠らせてやりたい。


だけど、セレスに、この現状を見せつけ寝ければならない。


容赦のない、悪辣の魔王の姿を、このままではセレスの周りの女性が同じ目に合うという事を見せつけなければ、セレスも本気にならないだろう。


「元凶の勇者の力を見誤っていた俺が悪いのか。」


自嘲気味にそう呟いてみる。


途中まではうまくいっていたのだ……セレスが介入してくるまでは……。


◇ ◇ ◇


東部獣人砦の戦闘の後、予定通り、セレスは介入してきた。


ただ、その介入の仕方が、予定と少し違っていたのだ。


本来であれば、獣人達の部隊に合流し、一緒になって東部辺境を攻め上がり、第三王子の首を跳ねる。


その勢いを持って、中央部にいる第一王子に降伏を呼びかける。


応じればよし、応じなければ、獣人、亜人の軍勢と共に王都に攻め上がることになっていた。


もしくは、獣人達が第三王子の元に辿り着く前に、獣人の集落を包囲。交渉によって軍勢を引き揚げさせ、第三王子に貸しを作る。同様に、中央に攻め込んだ亜人たちに対しても交渉によって軍勢を引かせ、そのまま三者会談へとなだれ込むはずだった。


どちらの介入の仕方を選んでも、こちらにとっては問題がなかったはずなのだが……。


しかしセレスの介入は少しだけズレていた。


獣人族の里を包囲した時点で、俺達と対立、王子たちに貸しを作ることを選んだと思ったのだが、セレスの軍が、包囲を解く条件として、第三王子の首を要求してきたのだ。


すでに東部辺境を蹂躙していて、第三王子を追い詰めていた獣人軍。元々首を取る気でいたので、問題はないと言えば問題なのだが。


獣人代表のミゲルが、第三王子の首を持ってセレスと交渉。


セレスは獣人の集落及びその周辺を自治区と認め、相互不干渉とする代わりに、占拠した東部の殆どの明け渡しを要求してきた。


一緒になって帝国を乗っ取る場合、セレスたちに明け渡す予定だったので、予定通りと言えばそうなのだが、なんかずれている感じがしてしょうがなかった。


セレスの思惑が分かったのは、第一王子を交えての三者会談の場での事。


遅れてやってきた彼女の眼には勇者の刻印が穿たれていた。


つまり、彼女は、第一王子に対しては、魔王である俺との間に緊張感を持たせ、俺に対しては、第一王子派の懐柔策を取っていると言いながら時間を稼ぎ、その間に、王宮の地下に眠る遺跡を攻略して勇者王の証を手に入れたという事だ。


確かに、遺跡の事をセレスに話したことはある。


ただ、その遺跡を攻略したらどうなるかなどの事は話していない。話す必要がなかった。


何処かの誰かが、その情報を掴んだのか、元々言い伝えなどで、伝聞が残されていたのか……。


真相は分からないが、誰かにそそのかされてセレスが封印を解いたことは間違いなかった。


その誰かと、セレスは、うまく俺を出し抜いて、力を手に入れたと思っているのだろうが、その証が何を意味するかを分かっていないだろう。……まったく愚かな娘である。


封印を壊すはずが、セレスに先に手にされたために俺達の計画は大きく変更せざるを得なくなった。


元々、リノアとセレスには勇者王の証である刻印を手に入れてもらう予定だった。


しかしそれは封印を破壊してからの話しである。


封印を破壊せずに、刻印を手にすると、マナが刻印に集中することになる。


それは巨大な力を手にすることでもあるが、同時に制御が難しくなるという事でもある。


俺の予定では、封印を壊した後、制御された一部のマナだけを刻印へ流し、制御できる範囲内で力を得てもらうつもりだった。そうでなければ、無尽蔵に流れ込んでくるマナを制御できずに暴走してしまう事は間違いないからだ。


マナの暴走が起これば、この大陸一帯ぐらい、容易に吹き飛ぶ。


中心になったセレスは、マナの子後によって命は長らえるだろうが、元々心根の優しい娘だ、何もなくなった荒野の一人取り残されて、精神を正常に保っていられるわけがない。


彼女がマナを制御できず暴走を起こす前に、出来るだけの事をしなければならなくなったので、大幅に計画を前倒しすることにした。


無人の荒野にある封印を先に壊すことで、少しでもセレスへの負担を減らし、時間を稼ぐつもりだった。


しかし、その遺跡に関わっている間に、セレスがリノアに接触し、そそのかして、アイガス王国の勇者王の刻印がリノアに刻まれることになってしまった。


更に言えば、リズノア聖王国にも、紋章に関する情報が流出したらしく、独自に調べていたであろうリズノアの聖女が、その身に勇者王の刻印を宿したという噂が流れてきた。


こうなってしまえば、セレス一人の問題ではなくなる。暴走の危険が著しく減ったのはいいが、人の感情に世界の行く末が左右されるという、ある意味、いつ爆発してもおかしくない爆弾を抱え込んでしまった状態に酷似している。


こと、ここに至っては流石に女神たちも黙っていられなくなったらしく、今までまったく接触をしてこなかったにもかかわらず姿を現すことになったのだ。





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