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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
紋章王国

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紋章世界の謎 その2

「ぁん……もぅ、やめてくださぃ……。」

少女の悲しげな声が響く。

しかし、その声の中に艶っぽい色が混じっているのは、聞き間違いではないだろう。


「あの、カナミさんや?」


「なぁに?センパイもやりたいの?好きなんだから、もぅ。」


カナミはそう言って、うねうねと動くふさふさしたものを渡してくる。


「いや、そうじゃなくてだなぁ、何やってんだって聞きたい。というか何でこんなことになってんの?」


俺の眼の前には、あられもない姿で縛られている二人の少女がいる。


セレスティア王女と、そのお付きメイドのマリアだ。


そして、先程から、切なげな声をあげているのは、マリアの方で、その痴態をまざまざと見せつけられながら、真綿で首を締める様にじわじわと悪戯されているセレス。


共に限界は近いようだ。


「だってぇ、この子、意固地で優柔不断なんだもん。本当はセンパイと一緒にいたいくせに、センパイにこういう事されたいくせに、変な意地張ってさ。」


「だからと言って……。」


「だからっすよ。こうすれば、「自分の意志じゃないけど、魔王に堕とされて仕方がなく……」って言い訳が出来るっす。そのお手伝いをしてるんすよ……ったく、めんどくさい。」


リィズがそう言いながら、セレスの敏感なところを、大きな羽根で、さわさわと、触れるか触れないかという絶妙な距離で撫でる。


あの話し合いの場で、決断を迫った時、セレスは応えなかった。


それを見たカナミが「少し女の子同士で話してくる」と言って出て行ったのが1時間ほど前。


少し時間がかかってるんじゃないか?と様子W削身に来たら、目の前で、嬉し恥し、というか、もっとやれといいたくなるような光景が繰り広げられていた、という訳だ。


「くぅ……私は帝国の王女なんですよ。こんなことして……ぁんッ……。」


「そういうのはもういいっすよ。面倒だから、このまま堕ちちゃいます?いつで主落としてあげるっすよ?」


「ぁん、、ダメっ……ま、待って……、あ、いやっ……。」


「せっかくにぃにが来たんすから、見てもらいたいっすか?つくづく変態っすね。……思う存分見てもらうっす。」


「ぁ、いやっ……見ないでぇ……、見られてる、私の恥ずかしい姿見られてるよぉ……あ、あん、ダメぇぇぇ……。」


……結論が出るには、もうしばらくかかりそうだな。


俺は小さなため息をついて、カナミやリィズが、帝国の二人の少女をくすぐり続けるのを、ボーっと眺めるのだった。




「それで、私は何を掏ればよろしいんですの?」


いまだに顔を真っ赤にしたセレスが、少し怒った口調でそう言う。


その顔を見る限り、怒っているというより、拗ねているといった方が正しいみたいだが。


……やっぱり、止めずにずっと見ていたことに文句を言いたいんだろうなぁ。


分かってはいたが、あそこで俺が介入すると、ややこしい事になるから仕方がないのだ。決して、羞恥に染まるセレスを眺めていたいと思ったわけではない……のだ。


「そうだな、俺達が帝国と遊んでいるから、適当なところで介入してくれ。俺達と一緒になって、帝国を乗っ取ってもいいし、俺達と敵対する体で、兄貴たちに恩を売ってもいいぞ。とにかく、どういう形でもいいから、講和に持っていく。俺達の要求は、帝都の明け渡しだ。」


「そんなの無茶苦茶ですわ。飲めるわけないでしょう。」


「なにもずっと明け渡せといってるわけじゃない。帝都の地下が、例のシステムの一つなんだよ。その封印を解くまで、邪魔しないでいてくれたらいい。」


「そう言われても……。……その封印を解くまでにどれくらいの時間が必要ですの?」


「およそ一週間ってところかな?」


俺が描いている、未来図は次のような感じだ。


昔の勇者が魔王を封じた場所は5か所、地図の上に示すと、大陸を囲むように4か所のポイントがあり、その中央部分に残りの1箇所がある。


それらの封印を破り、紋章システムというふざけたものを根底から壊してしまえ、というものだ。


しかし、その封印の場所が少し問題で、中央の場所にあるのがアイガス王国の王都、他4か所のうち2か所はそれぞれ、トリニティ帝国の帝都と、リズノア聖王国の聖都にある。


他の2か所は、荒れ果てた荒野にあるが、きっと以前はどこかの大国の首都だった場所なのだろう。


封印を解く為にはアイガス王国、トリニティ帝国、リズノア聖王国が邪魔になるので、戦争を仕掛けて、その混乱に乗じようという訳だ。


まぁ、「今から紋章システムを壊しますので、協力してください」と言って協力してくれるのは、紋章の有無によって虐げられている最下層階級の者達だけだろう。紋章の恩恵を一番多く受けている王族や貴族たちが黙っているわけがない。


となれば戦争になるのは仕方がないし、長い目で見れば、その方が被害が少なくて済む……はず。


そして、トリニティ帝国においては、幸いにも、セレスティア王女という駒を得ることが出来た。


現在帝国では、妾腹の子である、第一王子のリンスカール、第ニ王妃の子である、第三王子のカナディアン、そして、正妃の子である第三王女のセレスティアの3人が跡目争いを繰り広げているというのは有名な話だ。


帝国内でも、たとえ妾腹であろうとも、認知しているのであれば第一王子に継がせるのが筋だ、という第一王子派、妾腹の子が玉座を継ぐのを認めるわけにはいかない、という第三王子派、血統第一、神聖なる玉座を継ぐのは、正妃のお子であるセレスティア王女のみという第三王女派、そしてそのどこにも属さない中立派、と4つに分かれている。


第一王子は妾腹であるという事、第三王子は正当性が弱い事、第三王女は、女性であること、というように、それぞれ弱点を抱えている為、世論も決めかねているというのが現状だ。


それぞれの能力を見るために、と第一王子は帝都を中心とした中央部、第三王子は、国境を預かる辺境伯量を中心とした東部地区、そして、セレス生誕の際、その名を授けられた経済都市、セレスを中心とした流通の要の西部地区をセレスティアがそれぞれ統治しているのだが、特に大きな問題もなく優劣もつけられないと、跡目争いも停滞気味だったこの頃に起きた魔王軍襲来。


セレスの街が占拠されたことで、第一王子も第三王子もセレスティアを蹴落とすいい口実が出来たはずだ。


しかし、その魔王軍は、今東部地区を侵略し始め、中央部へと迫る隙を虎視眈々と狙っている。


セレスとしては、この機に第一王子第三王子を一掃した後、自分が唯一の王位継承者として、魔王である俺との講和に臨むのもいいし、才一王子、第三王子のピンチに駆けつけることによって恩を売り、その後の講和で高い発言力を持つのもいい。


最終的には、「魔王は勇者によって倒され、世界に平和が戻った」というシナリオに持っていくのだから、途中経過はどうでもよく、セレスに求めるのは「強い発言力を持つ」ことだけなのだから、先のような言い方になってしまう。


最悪、帝都を占拠し、封印を解くまでの間の時間稼ぎをした後、適当に逃げ出せばいいのだから、セレスが居なくても何とかなる。


しかし、やはり、折角知己を得たんだから、それなりに協力してやりたいと思うじゃないか。


トリニティ帝国攻略の後は、リズノア聖王国の攻略に取り掛かる予定だ。


アイガス王国に関しては、現在リノアに向かってもらっている。一応、様子見だけのつもりだが、帝国がこのように揺れている状況で、何もアクションを起こせないのであれば、サリアたちは見捨てるようにと、爺さんに伝えるように言ってある。


サリアたちが政権を取り返せればそれでよし、貸しを返せと詰め寄って、王都の封印を解かせてもらう。


サリアたちが政権を取り返せないのであれば、リズノア聖王国攻略の後、改めて王都を陥落させればいい。

その時中心にいるのは、サリアではなくリノアになるだろうけど。


全ての封印を解除すれば俺達の役目はほぼ終了に近い。


後は、適当に世論を煽って、勇者が魔王を討伐するようにコントロールする。


この時の勇者は、リノアかセレスのどちらか、あるいは両方になるだろう。


そして、俺は約束通り世界を半分づつ、セレスとリノアに明け渡して倒れる。


その後、紋章から解き放たれた世界を再建するのか、新たに紋章システムを復活させるのかは、勇者である二人の意思にゆだねる。というか、その後の事まで面倒なんて見れるもんか。


そこまでやれば、女神たちが何らかの接触をしてきて俺達は帰れるはずだ。そうじゃない場合、隠れ住みながら帰還の方法を探せばいい。幸か不幸か、今の俺達には時間はたっぷりあるのだから。



どうすればいいか苦悩しているセレスの表情を肴に、俺とリィズ、カナミの三人はティータイムを楽しんでいる。


マリアが責めるような視線で見てくるが、ここはセレスが決める場面であり、俺達が口出しするわけにはいかない。


マリアもそれは分かっているので、睨むだけで何も言ってこない。


「獣人砦が襲われた」という報告が入ってきたのは、そんなティータイムの中、俺が2敗目のお茶に口をつけた時だった。




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