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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
紋章王国

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勇者(偽)姫と魔王

「私は勇者よ!魔王覚悟しなさいっ!」


「兄貴、コイツウゼェです。殺っちまいますか?」


「ヒィッ!」


リノアが、その可愛らしい容姿に似合わぬ言葉を吐くと、眼の前の、「自称、勇者」が怯えたように身体を竦める。


「こらこら、相手が怯えてるだろ。ってか、そんな言葉遣いどこで覚えてきたんだ?」


「えっとね、しんえーたいのおじちゃん。」


「よし、シメよう!」


「ラジャ!」


俺の言葉にカナミが棍棒を取り出して走り出すのを、リィズが慌てて止める。


「シメちゃダメッす。あとリノアもそんな言葉使わないのっ!」


勇者を名乗る少女の前で、そんなバタバタしたところを見せているが、彼女たちの顔色は青褪めたままだ。


まぁ、それも仕方がないかもしれない。


一緒にいたメイド共々、縛られ転がされて、魔王の前に連れてこられているのだから。


身動きが取れない以上、少女とメイドの生殺与奪の権利は、魔王たる俺が握っている。

彼女たちに出来ることは、その生命を諦め、すべてを運命に委ねるか、みっともなく媚びを売り、命乞をするしか無い。


しかし、勇者を名乗る少女は、そのどちらでもなく、俺を威嚇することを選んだ。


よほど肝が座っているのかもしれない。


「でもこの娘、リノアちゃんの一言で漏らしてたわよ。」


オレの心を読んだかのようにカナミが突っ込んでくる。


「も、漏らしてないですっ…………ギリギリ大丈夫だったモン。」


………前言撤回。ひょっとしたらかなりのヘタレかもしれない。


「まぁ、いい。貴様が勇者と言うなら、すべきことは一つ。」


俺はケイオスを呼び出し、眼の前に突き立てて、勇者に問いかける。


「ここまでよく来たな、勇者よ。どうだ?仲間になると言うなら世界の半分をお前にやろう。」


「ハイ、仲間になります。だから助けて。」


「はい?」


自称勇者の少女の間髪を入れない返答に、思わず聞き返してしまう。


「だから、仲間になるって言ってんの。……あと世界の半分、約束だからね。」


「ちょっと、姫様!」


隣りにいたメイドが思いとどまらせるべく口を開く。


それも当然だろう。怪しい魔王との取引、しかも内容が「仲間になれ」つまり裏切りを勧めているのだ。


俺がメイドの立場でも止めようとする、ってかここでイエスを選択する辺り、中々侮れない奴かもしれない。


「姫様、何考えているんですかっ!バカですか!……バカでしたねっ。」


「ちょっと、マリア。それは言いすぎじゃない?私だって、何も考えずに言った訳じゃないのよ。」


……ん〜、反射的に答えてたような気もするが、この姫様が何を考えているかは興味深い。


そう思って、二人のやり取りを、邪魔せずに見守ることにする。


「よく考えて見なさいよ。今の私達に待っているのは、このまま殺されちゃうか、良くて眼の前の魔王に、あんなことやこんな事……口に出すのも恥ずかしい目にあわされて、一生性奴隷にされちゃうかの二つの道しか残ってないのよ?それぐらいわかるでしょ。」


「そ、それは、そうかも知れませんが……。」


「い~い?そんな圧倒的優位に立っている魔王が、私を仲間に欲しいと言ってるのよ?しかも世界の半分を貢ぐとまで言ってるわ。コレは私の美貌にメロメロになった証拠よ!」


そんな姫様の言葉に、カナミとリィズ、そして等のメイドまでが、「そうなのか?」という視線を向けてくるので、俺は厳かに首を大きく横に振った。


プルプル……いや、ブルンブルンと、誰がどう見ても否定と分かるように大きく。


おかげで、少し首が痛くなってしまった。


しかし少女はそんな俺の仕草にも気づかず話を続ける。


「だからね、ここは大人しく仲間になっておいて、世界の半分を貰っておくべきなのよ。それで力を蓄えていつかは………。」


「ほほぅ、中々いい考えだな。」


「でしょ、でしょ!」


「でも、お前が力を蓄えるのを魔王が黙って見てると思うか?」


「そこはほら、私の魅力で、メロメロに………って、えっ?」


半分、自分の世界に入り込んでいた少女は、ようやく会話の相手がメイドじゃないことに気づく。


「調子に乗ってすみませんでしたぁ!ついでに私は勇者じゃないですぅ、ゴメンナサイっ!」


途端に今までの態度から一変して、卑屈に謝りだす少女。


縛られていなければ、見事な土下座を披露していたに違いない。


……前言をさらに撤回。こいつはしたたかでお調子者だ。甘いお顔を見せれば際限なく調子に乗り続けるだろう。


「…………。」


そんな少女を可哀想な子を見る目で見つめる俺達。


何故かメイドさんまで同じ視線を向けていた辺り、多分普段からこうなのだろう。


「まぁ、冗談は置いといて………お前たちは何者で、何の用でここに来たんだ?」


俺がそう尋ねると、何故かリィズ達までが、驚いた顔で俺を見るのだった。



「はぁ、つまりにぃには、この子たちが誰かも分からず、理由も聞かずに縛り上げた、ってことっすか?」


呆れ声でそういうリィズだが、俺にも言い分はあるのだ。


「仕方がないだろ?こいつ、人の顔を見るなり『あなたが魔王ねっ!』って指をさすんだぜ?思わず縛り上げて人気のないところに連れてくるのは、当然の処置だと思わないか?」


俺がそういうと、カナミとリィズは少し複雑な顔をする。


「えと、それだけのことで縛っちゃうのはやりすぎじゃないかと……。」


そして、カナミがおずおずとそう反論すると、リィズをはじめ、姫様、メイドさんまでコクコクと頷いている。


「じゃぁ何か?カナは道の往来で「あ、カナみんだ!」と叫ばれてもなんとも思わないってことだな?」


「センパイ、私が間違ってたよ。」


「リィズは見知らぬ人から『あなた、アイドルねっ!』っていきなり指さされても、笑顔で対応するってことでいいか?」


「にぃに、私が間違ってたっす。にぃにの処置は完璧だったっす。」


いきなり手の平を返す二人を見て、啞然とする姫様とメイド。


「ってことで俺は悪くない。理解してもらえたところで改めて問おう。お前たちは何者で、何のm億滴でここに来た?」


「えーと、私は、勇者で……。」


「あ、別に正直に答えなくてもいいぞ?というか答えない方が、この後の『取り調べ(調教)』が楽しくなるから、黙秘をお勧めするが?」


「ごめんなさいっ!私はトリニティ帝国第三王女のセレスティアですっ。どうかセレスと呼んでください。で、コッチにいるのは傍使えのマリアで、メイドの傍ら諜報員や護衛の真似事もしてもらってますっ!ここにはセレスの街が魔王によって蹂躙されたと聞いたので確認するために来ました。勇者というのは真っ赤な嘘で、そう言っておけば、魔王もそう簡単に手を出せないだろうという浅はかな考えです。ちなみに、魔王様が話の分かる人だとも聞いていたので、それが正しいかどうかの確認と、あわよくば、味方にして私の役に立ってもらおうなんて考えていましたっ!魔王と言っても所詮は男。私の魅力の前には、メロメロに虜になるって簡単に考えていました。てへっ。」


なぜか急に聞いてもいないことまでべらべらとしゃべりだす少女……セレス。後、最後ウゼェ。


「えっと……?」


「うん……。」


カナミとリィズが困ったように顔を見合わせた後俺を見てくる。


ちなみにリノアは、すでに御睡のようで、俺にもたれかかったまますやすやと寝息を立てている。


「あー、とりあえず、リノアをベッドへ連れて行こうか。」


「そうね。私が連れて行くわ。」


カナミはそういうとリノアを抱えて部屋を出ていく。


「さて、と、午後からの執務が山になってたよなぁ。」


「私も手伝うっすよ。」


俺とリィズはそんな会話をしながら、何事もなかったかのように部屋を出ていこうとする。


「待って、放置しないでぇ。ちゃんと喋ったじゃない。だから相手してくださいよぉ。」


「姫様、おいたわしや……。」


「……『拘束解除(ディスペル・バインド)』」


俺は二人の拘束を解いて、そのまま部屋の外へ放り出す。


「待って、待ってよぉ。ちゃんと話を聞いてっ!ってか聞きなさいっ!……嘘ウソ、ゴメンナサイ。お願いですから話し合いをさせてくださぁぁい。このままじゃ帰れないんですぅ。」


泣き叫びながらドアを叩くセレスティア姫。


それは、城のメイドたちが揃って「煩くて仕事にならないので、話だけでも聞いてあげてください」と懇願してくるまで続いたのだった。




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