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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
紋章王国

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魔王軍結成

「とりあえず、お前たちに話がある。」


目の前には、逃げ遅れた?屋敷内にいた人々が集まっている。


カナミとリィズにお願いして急遽集めてもらったのだ。


大半が雇われた使用人たちだが、その中でも、隅の方にいる女の子たちは、リノアと同じように、バカ息子にさらわれたり、ここの元主に騙されて連れてこられたりして、奴隷同然に扱われていた娘たちだ。


いきなり解放されてと言われても訳が分からないままとどまっていたのだろう。


「いきなりの事で混乱しているだろうが、ここの元の主……えーと、誰だっけ?」


「ガストンですよ。ガストン。」


こっそりとリィズが教えてくれる。


「そう、そのガストンは俺が放逐し、この屋敷は奪い取った。だからと言って、キミタチをどうこうする気はない。ここから逃げ出したいもの、暇乞いを願うものは、今から半刻以内に荷物をまとめて出て行ってくれ。あ、表は兵士が取り囲んでいるから、それ排除するんで、出て行くときは巻き込まれないように裏から行くといい。。」


「あのぉ、出て行かなかった場合はどうなるんでしょうか?」


おずおずとメイド長らしき女性が訊ねてくる。


「どうもしないさ。残留を希望するなら今まで通りこの屋敷で働いてもらう事になる。ただ、裏切られては困るので、『強制契約(ギアス)』を掛けさせてもらうけどな。」


「……それって、残ったら、私たちを奴隷にするってことですか?」


壁際にいた女の子の一人が聞いてくる。


「希望ならそうしてあげるけど?『強制契約(ギアス)』って言っても、俺に対して不利益になる行動が出来なくなる程度の軽いものだよ。簡単に言えば俺を裏切る行動をするなってこと。それ以外に縛ることはないし、俺の命令に対して意に添わぬ事であれば反対することだってできる。」


「それはつまり、夜伽を強要されることはない……という事でしょうか?」


夜伽、と聞いてカナミから殺気が立ち上る。


だから俺は慌てて言葉を紡ぐ。


「ないない。希望するなら考えるけど……そんな怖いこと、この子たちの前で口にしないでくれ。」


俺がそういうと、その女の子はクスリと笑って「ごめんなさい」と謝罪を口にしてから奥へ引っ込んでいく。


「まぁ、そう言うわけだから、出て行きたい者は半刻以内に出て行ってくれ。、残留希望の者は半刻後にもう一度ここに集まってくれ。」


俺はそういうと、一度奥の部屋へ引っ込む。いつまでも俺がいると動きづらいだろうという配慮だ。


「にぃに、私は周りの様子を見てくるっす。」


その場を解散させると、リィズがそんな事を言って飛び出していった。


「じゃぁ私は、リノアちゃんの様子を見てくるね。」


カナミはそう言って、奥のベッドで寝ているリノアの元に向かう。


「さて、じゃぁ、俺は煩いのを掃除してくるか。……ファー?」


『ハイハイ、いるわよ。』


「どんな様子だ?」


何が、と言わなくてもこの相棒には通じる。


『あまり良くないわね。この辺り一帯、というか、この世界が、かしらね。精霊力が凄く弱いのよ。』


「原因は?」


『今の段階じゃ、そこまでは分かんないわ。考えられることは、精霊が存在しないか、存在したとしても、何処かに封印されているか……。』


「……想定範囲とはいえ、かなり厳しいな。」


基本、世界にはマナが充満していて、そのマナの循環の為に精霊が存在する。


マナが豊富な世界には精霊が満ち溢れ、マナが枯渇した世界では、精霊が姿を消す。


マナが枯渇し、精霊が姿を消すと、世界はその存在を維持するために、星の命を必要とする。


星の命が失われると、そこに居たい肝の全てが消滅し、やがては世界の崩壊へと歩んでいくことになる。


だから、精霊の力が少ないというのは、世界が破滅に向かっている前兆でもあるのだ。


そしてマナの存在はそのまま魔法へと直結する。


地球のように、元々マナが少ない世界では、マナを無駄使いしないように魔法そのものが廃れ、魔法に頼らない独自の文明が発達している。


だから少ないマナの中でも世界が崩壊せずに済んでいるのだが、この世界では魔法が存在する。なのにマナが少ない。そこに疑問を持った俺は、ファーに原因を探らせていたのだが。


「紋章がないと魔法が使えないっていうのも、その辺りに原因があるのかもな。」


色々検証したいところだが、さしあたっての問題は、今この屋敷の周りを取り囲んでいる兵士をどうするかって事だ。


単に排除するだけなら、リィズ一人が突っ込むだけで出来るだろうが、それでは問題の解決にはならない。


根本的に解決するためにも、ここには手を出すべきではないと思わせ、時間を稼ぐ必要がある。


「となると、最初に圧倒的な力を見せつけるべきか。」


俺は、ファリスとケイオスの2本の剣を携えて、表に出でる。


「あー、そこの指揮官に告ぐ。今すぐ撤退するのであれば、危害を加えないことを約束しよう。そうでなければ命の保証はしない。」


この宣告を受けた帝国軍の指揮官、ヨーゼルは顔を真っ赤にして叫ぶ。


「何をバカなことをっ!全軍突撃、奴を捕らえろっ!」


指揮官の号令に従い、屋敷に向けて帝国兵が雪崩れ込んでくる。


「あー、やっぱダメか。」


俺は仕方がなく、ケイオスとファリスを重ねて構える。


「出来れば使いたくなかったんだけどな……。」


俺の魔力が二本の剣に収束されていく。


「いっけぇ『龍の咆哮(ドラグ・ロア)』!」


二本の魔剣を軸に極大の魔力が放出される。


そのまま横薙ぎに振るうだけで、迫っていた帝国軍はすべて遠くへと吹き飛ばされていき、一瞬にして目の前から姿を消した。


ついでにその辺り一帯が瓦礫の山になったのは、俺が悪いんじゃないとだけ言っておきたい。


「にぃに、やり過ぎじゃないっすか?」


「いいんだよ。これくらいやっておけば、そう簡単に手出ししようとは思わないだろ?」


傍にやってきたリィズにそう説明する。


「それに、威力が出てないからな、派手に吹き飛んだけど、死者は殆どいないはずだ。」


「それは見てきたからわかってるっす。死者はいないっすが、殆どのものが、自力で動けないほどの重傷っすよ。」


「……カナミに、動ける程度まで治療するように頼んでおいてくれ。」


「……仕方がないっすね。」


「まぁ、とりあえずは、足元を固める所から始めようか。」


そろそろ半刻が過ぎる頃だ。ほとんどの使用人が逃げ出したと思うが、ひょっとしたら物好きが数人いるかもしれない。


俺はリィズと共に屋敷の広間に戻るのだった。



「あー、なんて言うか……お前ら正気か?」


広間に集まっている面々を見て、俺は思わず呆れた声を出す。


そこには、この屋敷にいた使用人の殆どが残っていたからだ。


「至って正気であります」


一歩前に進み出てそう言ったのは、髪に白いものが混じり始めた壮年の男性。


確か、執事長のシルヴァとか言ったっけ?


「理由を聞いていいか?さっきも言ったとおり、俺は魔王だぞ?いわば人類の敵だぞ?なんでそんな相手に好き好んで仕えたがる?」


「そうですな、色々打算もありますが、まず一つに、如何な理由が有れど、あなた様に救われたという事実。そして、あなた様が誠実であられたこと。さらには、我々の身を案じて頂くというその優しさに感銘を受けた事などが挙げられます。」


「はぁ?」


こいつ何言ってんだ?というように睨みつけてみるが、シルヴァは動じない。


「後はそうですね。残った生涯を面白い主に捧げるというのも一興ではあります。」


笑いながらそういうシルヴァ。


他の面々も似たようなものらしい。


「リノアちゃんがあんなになついてるんだもん、悪い人じゃないのは分かるわ。」


そう言うのは、リノアと一緒に閉じ込められていた少女たちの中の一人。


彼女はセイラと言って、他の少女たちより少しだけ年上の様で、みんなから頼りにされていて、リーダーっぽい役目になっているらしい。


色々話を聞いてまとめてみると、元々、ここの使用人は多かれ少なかれ、ガストンに弱みを握られ無理やり仕えていたとのことだった。


だから、ガストンに対する義理はないどころか、救ってくれた俺に対し恩義を感じているという。


また、イヤイヤとはいえ、ガストンに仕えていたという事実は変わりなく、中には無理やりとはいえ、街の人々に恨みを買うようなことをしたことのあるものも少なくなく、このまま街に行っても、恨みを晴らすという名目で街の人々からリンチを受ける可能性も高いという。

だったら、自称魔王の、力はあれど、人の好さそうな新しい主に仕えたほうがいいだろう、とのことだった。


また、少女たちの殆どは、攫われた後、様々な理由で両親が亡くなっているという。少女たちに無理やり言う事を聞かせるために、親が不慮の事故にあったり、謎の失踪を遂げたりしたのだとか……。

聞いているだけで胸糞が悪くなる話だった、


セイラは言うには、そんな身寄りのない自分たちが街に戻っても、まともに生きていけるわけではないので、誠心誠意お仕えするので、側においてほしいとのことだった。


ただ……。

「まだ小さい子も多く、心に傷を負っている子もいるので、夜伽の御申しつけは私だけにしてください」

と言われた時には、かなり焦った。


というのも、カナミが凄い目で睨んでいたからだ。


結局、その後セイラがカナミとリィズに連行されていき、戻ってきたときには瞳からハイライトが消えていて、「二度と夜伽の事は口にしません」と、うわごとのように繰り返し言っていたので、とりあえずは解決したことにしておいた。


……この件について詳しい事を知ろうとしてはダメだ、と本能が告げていたんだよ。


「さて、次は、この街の制圧だな。」


やることが一杯過ぎてしばらくは楽できないな、と、大きなため息をつくのだった。





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