※SS 魔王城のMerryXmas!
「みんな、準備はいい?」
「大丈夫だよ。」
「いつでもいいわ。」
「大丈夫っすよ。」
私の確認の声に、みんなが口々に応えてくれる。
「じゃぁいくよ、……せーの!」
「「「「「「メリークリスマス!!」」」」」」
パン、パンッ、パンッ!
みんなの掛け声とともにクラッカーが鳴らされる。
ちなみにこのクラッカーはセンパイの手作りだ。
他にも様々な小物をたくさん用意してくれてたところを見ると、結構楽しみにしてくれてたのかもしれない。
「「「「「「わぁーーーー!!」」」」」」
みんなの歓声が上がる。
庭園の真ん中に用意したクリスマスツリーを中心に色鮮やかなイルミネーションに明かりが灯されたのだ。
……これもセンパイが用意した。
口では色々言ってたけど、ホント楽しみにしてたのね。
掛け声の後は、みんなで料理を楽しむ。
ハンバーグ、唐揚げ、天ぷら等々、この魔王城では、お馴染みとなった向こうの料理の数々。
以前は私しか作れなかったのに、いつの間にかみんな腕を上げちゃって……うぅ……このから揚げ美味しぃ。
周りを見ると、みんな楽しそうだ。
今日ばかりは、使用人とかも関係ない。
このお城で働いているみんなと、特に親しくしている種族の人たちも呼んでいるので、かなりの人数になったが、魔王城の庭園は広いので、これくらいの人数はものともしない。
ファーもエアリーゼも、妖精の姿で飛び回っては料理をつまんでいるし、他の精霊達もやってきている。
ソラちゃんが待ちきれなくなったのか、ステージに上がって、天使モードで歌いだしていた。
負けじと、スイちゃんもステージに上がって歌いだすと、竜人達からの歓声がひときわ高くなる。
リィズはセイラちゃんに抱きつかれているし、……って、センパイはどこ行ったんだろう?
周りを見回すと……いた。
左右にレイファとミリィを侍らせていて、いい御身分ね。
流石は魔王サマね。
私はチョット悔しくなって邪魔しに行くことにした。
「魔王サマ、楽しんでいますかぁ?」
私はグラスを片手にそう言ってみる。
「カナ、もう酔ったのか?」
「酔ってないですよぉーだ。」
センパイは変なこと言うね。
こんなジュースで私が酔うわけないじゃない。
「って、お前それ、かなりアルコール度が高いけど、本当に出し丈夫か?」
「ジュースで酔う分けないですよぉ。」
私はセンパイに向かって倒れ込む。
……ワザとよ?足が持つれたわけじゃないよ?
「ふにゃー、レイにぃのにおぃー。」
私は倒れ込んだついでに抱きついて甘えてみる。
不思議だね、なんか今日は素直に甘えられる気がする……Xmasだからかな?
「……はぁ。みんな悪い、こいつをベットまで運んでくるよ。」
レイにぃが何か言ってる……どっかに連れて行ってくれるのかな?
だったらお願いしちゃえ。
「お姫様抱っこぉ。お姫様抱っこがいいのぉ。」
「ハイハイ、お姫様の言う通りにしますよ。」
「にゃぁ、お姫様抱っこだぁ。」
……なんかフワフワする。
レイにぃに包まれて……気持ちいぃなぁ……。
いつの間にか、私の意識は遠のいていった。
◇
ん……ここは?
「よ、気付いたか?」
「えっ?ここは?」
「俺の部屋。カナの部屋は鍵が掛かってたからな。」
「えーと……あれっ?」
あれ、どうして私、センパイの部屋に?
「覚えてないか?かなり純度の高いシャンパン飲んで酔っ払ってた事。」
センパイに言われて記憶を探る。
「……酔っ払ってないわよ。ただ、ちょっと気持ちよくてフワフワ―ってしてただけで。」
「世間ではそれを酔っ払うっていうんだよ。」
センパイが呆れたように言ってくる。
「まぁ、丁度いいや、こっちにこいよ。」
センパイが窓の外のテラスへと誘う。
「わぁー。」
センパイの部屋のテラスから見下ろすと、色とりどりのイルミネーションがキラキラと輝いている。
庭園から見えてたのも素敵だったけど、ここから見る景色はもっと素敵だった。
「ロマンチック…………ねぇ、センパイ。ひょっとして、こういうシチュエーションに憧れていた?」
私は知っている。
彼方センパイは、見かけによらずロマンチストだったって事。
「地球では見に行けなかったからな。」
センパイはそっぽを向いて、ぼそっとそう言った。
そんな先輩を見て私は思い出す……高2の時のクリスマスを。
あの時、私とセンパイはXmasデートというのをしていた。
まだ付き合っていなかったけど、アレはデートと言っていいと思うの。
クリスマスソングが流れる街中をウィンドショッピングして、チョット早めのクリスマスディナーをしてから地元のルミナリエを見に行く予定だった。
……そう、予定だった。
実際にはディナーに行く直前に、おじいちゃんが倒れたっていう連絡が入って、私はそこでセンパイと別れたの。
おじいちゃんは大したこと無くてよかったんだけど、どうせなら1日前か後に倒れてよねっ!と思ってしまったのは、乙女に気持ちに免じて許して欲しいと思うの。
その時「来年こそ、彼氏彼女の関係になってリベンジよ!」と心に誓ったことはセンパイにも内緒だ。
「エヘッ、リベンジ出来ちゃった。」
私は小さく、そう呟く。
センパイが私の側に来て肩を抱き寄せる。
私はセンパイの胸元に頭を寄せ、体重を預ける。
ウン……こういうXmasがやりたかった。
「そろそろかな?」
センパイがそう言った。
「そろそろって、何が?」
センパイは黙って前方を指さす。
すると、ドォゥゥン!と一際大きい破裂音がして夜空に大きな炎が広がる……ウウン、ハッキリ言おう、これ花火だよ。
「再現するのに苦労したんだぜ。」
センパイが照れたように言う。
「ホント、センパイもXmas楽しみにしてたんだね。」
私はセンパイに笑顔を向ける。
センパイは照れた顔をしてそっぽを向く。
魔王城の庭園からは「おぉ!」とか「うわぁ!」とか歓声とも悲鳴ともつかない声が沢山あがってる。
「混乱してるよ?」
私は下を指さす。
「ちゃんと説明しておいたんだけどなぁ。」
センパイは困ったように言いながら、「ま、いっか」の一言で片づける。
「彼方センパイ、ありがとうね。」
こんな素敵な夜をありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。
そんな想いを込めて、私はセンパイを見つめる。
センパイも私を見つめてくる。
私達を隔てるものは何もなく、花火に照らされた影が一つに重なる。
やがて、二人の距離が少し離れる。
私はセンパイを見上げる……少し照れくさい。
「抜け駆け禁止っす!」
私達の間に流れていた少し気恥しい空気は突然の乱入者によって破られる。
「カナミばっかりズルいっすよ!」
「リィズ……これは……って、あなたなんて恰好をしてるのよ!?」
乱入してきたリィズの格好は、リボンで身体の要所だけを隠しただけの裸に近かった。
「カナミが言ったんすよ。にぃにへの『くりすますぷれぜんと』は、身体にリボンを巻いて『プレゼントはワ・タ・シ♪』ってやるのが定番だって。」
私だって恥ずかしいっす、とリィズが小さな声で言う。
センパイが呆れた顔で私を見る。
……単なる冗談のつもりだったのよ。
うぅ……そんな目で見ないでぇ。
「私をだましたんすね?」
リィズが低い声でそう言う。
これはヤバいヤツだ……。
「じ、じゃぁ、そう言う事でっ!」
私は脱兎のごとく逃げ出す。
「逃がさないっすよ!」
リィズの獲物が私の身体を絡めとり、拘束する。
「カナミにも、同じ辱めを受けさせるっす。」
「えっと、えっとね、リィズちゃん、落ち着いて、ねっ、ねっ?」
私の言葉もリィズには届かない。
「ダメぇ!ソレだけはイヤぁぁぁぁー。」
聖夜の魔王城に私の声が響き渡る。
この後、私の身に何が起きたのかは……思い出したくもないけど、一言だけ言わせてね。
愛する全ての人々へ……MerryXmas!!
とりあえず、リアルのイベントに合わせてクリスマスのお話です。
リア充の方も非リア充の方も、応援してくれる皆様にMerryXmas!!




