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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
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※5万PV突破記念SS リィズの暇な1日

お久しぶりです。

完結しても、まだ読んでいただいている方がいて、気づけば5万PVを越えていました。

なので、記念のSSです。

 最近、にぃにが構ってくれない。

 忙しいのは分かっているけど……ちょっと寂しい。

 なので、私はねぇねの所に甘やかされに行く。

 淋しいときはねぇねに癒してもらうのが一番なのです。


 「ねぇね、どこにいるっすかぁ?」

 私は広大な森の中ほどで、ねぇねに呼び掛ける。

 精霊女王となったねぇねは、たまには精霊達を構わないといけないから、と言って、ちょくちょく姿を消す。

 姿を消すというより、ねぇねが精霊達に攫われていくと言った方が正しいかも?


 ただ、精霊達は時間の概念が曖昧なので、こうやって迎えに行かないと、いつまで経っても帰ってこないことがある。

 前回、ねぇねが姿を消したときは2週間以上帰ってこなくて大騒ぎになった。

 あの時は、にぃにが、ねぇねが精霊に連れ去られたと知って、精霊の森を半焼させるという事があり、その後しばらくは、エアリーゼもファルスも姿を現さなかった。


 「リィズ、どうしたの?」

 しばらく待つと、ねぇねが森の奥から姿を現す。

 今は精霊女王の姿を開放しているせいか、光り輝いている。

 綺麗で素敵だとは思うが、私としては、いつものねぇねの姿の方が安心する。

 私のそんな考えが顔に出ていたのか、ねぇねは精霊女王の姿からいつもの姿へと戻って、私をギュっと抱きしめてくれる。


 「また、甘えに来たのね。いつまで経っても甘えん坊さんなんだから。」

 「だって、にぃにが最近構ってくれないっすよ。」

 私もねぇねの背中に手を回して、ギュっと抱きしめ返す。

 ウン、ねぇねに抱きしめられると安心する。

 「そうねぇ、私も、最近構ってもらってないわね。……明日の晩あたり、一緒に襲いにいきましょうか?」

 「うん、それいいっすね。」 

 最近は、カナミと一緒の事が多いので、ねぇねと一緒なのは久しぶりだ。

 「あ、でも、にぃに、明日帰ってくるっすかね?」

 ふと、にぃにのスケジュールを思い出す。

 今頃はアルガード王国の王都にいるはずだ。

 

 カナミの話では、にぃには、最近アルガード王国の女王にも手を出したらしい。

 詳しくは知らないけど、そうしなきゃいけない状況だったらしく、カナミも怒るに怒れず、ストレスを溜めていた。

 私は今、カナミの眷属という事になっているから、カナミの機嫌が悪いのはちょっと困る。

 なぜなら、カナミはストレスがたまると、感情を眷属に押し付けてストレス発散することを覚えたらしく、ちょくちょく、嫉妬や怒りなどの悪感情を押し付けられることがある。

 カナミ自身はストレスが亡くなってスッキリするかもしれないが、押し付けられた方としてはたまったものではない。


 まぁ、最近では私もソラも、押し付けられた夜はカナミと夜を共にしてストレスを発散することを覚えたので、お互いさまではあるが。

 ちなみに、夜のカナミは表現のしようがないくらい可愛い。

 あまりにも可愛すぎて、ソラと二人で可愛がり過ぎたこともあり、それからはカナミも滅多に押し付けることはなくなった。

 

 「絶対に帰ってくるわよ。」

 可愛いリィズに会いにね、とねぇねが笑っていう。

 帰ってきたら嬉しいけどね……期待し過ぎて外されたら寂しさが倍増しちゃうから、あまり期待はしないでおこう。

 

 「ウン、ねぇね分充填完了!」

 私はおどけて言いながら、ねぇねから身を離す。

 ねぇねも、精霊女王としての役目が忙しいというのは、私も知っている。

 それなのにわざわざ私の所に来てくれた……これ以上邪魔しちゃダメだよね。

 「もういいの?」

 「ウン、もう大丈夫、ありがとうっす。」 

 私はねぇねにお礼を言って、精霊の森を後にする。

 「また、いつでも遊びにおいで。」

 ねぇねが背後で、そう言って見送ってくれる。

 また、淋しくなったら甘えに来るからね。


 ◇


 ねぇね分を補給した後は、適度な運動が必要だ。

 そう思った私は『魔王の洞窟』へと向かう。

 にぃにが作った、対勇者育成システムのファイナルステージだ。

 それなりにレベルが上がった勇者は「魔王」討伐の為に、この洞窟へ来るようになっている。

 そうなる様に情報操作をしているのだ。


 勇者たちは、洞窟に設置された底意地の悪いトラップや、モンスターの数々を倒しながら奥へ、奥へと進んでいく。

 そして辿り着いた大広間には「魔王」が待ち構えているのだ。


 「うははは、よく来たな勇者よ……って、リィズではないか。お主、また我が下僕どもを苛めてきたのかぇ?」

 魔王……エルが、私を見て、呆れたように言う。

 「エル、あんなに弱っちくて大丈夫っすか?」

 道中にいたモンスター達は、一閃の元に斬り伏せてきた。

 この洞窟内のモンスターはにぃにとエルの魔力による擬態なので、倒しても、一定の時間で復活するようになっている。

 「下僕どもの強さは逐次調整しておる。あれくらいでないと、勇者どもがここまでたどり着けんのじゃよ。」

 それでも以前よりはレベルが上がっているとエルは言う。 

 

 「じゃぁ、エルがなまってないかどうか確かめるっす。」

 私はオクタエッジを抜いて、エルに斬りかかる。

 斬り裂いた!と思ったが、手ごたえはなかった。

 「相変わらず、いきなり過ぎるのじゃ!」

 背後でエルの声が聞こえる。

 その時には、私はすでに宙へとジャンプしている。

 さっきまで私がいた所に火炎の矢が突き刺さる。

 方向転換をして、エルに突っ込む私の前に、氷の槍が出現するが、それを体を少し捻るだけで躱す。

 足元から氷の柱が突き上げてくるが、それもジャンプして躱す。

 

 『風刃(ウィンド・エッジ)!』

 私はオクタエッジに風の刃を纏い、振り抜く。

 剣先から複数の風の刃が飛び出しエルを襲うが、エルが纏う魔法障壁に総て弾かれる。

 しかし、それは想定済だ。

 風の刃を弾いている間に、私はエルの背後に回り込み渾身の力を込めて斬りつける。

 避けられないタイミング……やったと思った。

 

 しかし私が斬ったのは影で、エルはその向こう側で、私を見ている。

 「リィズ、今、本気で妾を切るつもりだったじゃろ。酷いのじゃ、当たってたら死んでいたのじゃ。」

 エルが文句を言う。

 躱しておいて「あたったら」とはよく言うよ。


 「あたってないから大丈夫っすよ。」

 私はオクタエッジを納める。 

 「リィズはイヤな事があって、妾に八つ当たりに来たのじゃな。そうに違いないのじゃ。」

 「単なる暇つぶしっすよ。」

 「暇つぶしで殺されたんじゃ妾も浮かばれぬのじゃ。」

 エルが文句をいう。

 何だかんだと言ってもエルはかなり強い。

 精霊化なしで勝負した場合、負けるとは思わないが勝てるとも言えないというのが正直なところだ。

 だから、運動相手に丁度いいのだが。


 「そんな事より、この間ジェニーに聞いたのじゃが……。」

 エルは、捕まえた女騎士から聞いた、街での噂や最近の流行りの服についてなどの事を話してくる。

 ずっと一人でいた反動か、エルは、噂話や流行りの話が大好きなのだ。

 私も、ちょっと気を抜くと、最近の流行りから遠くなってしまうので、エルの話を聞くのは意外と好きだったりする。

 

 「……という事なのじゃ。」

 「へぇ、意外っすね。」

 「そうじゃろ、妾もそう思ったのじゃよ。」

 「……っと、もうこんな時間っす。また来るから、がんばるっすよ。」

 「今度はケーキを差し入れるのじゃよ。」

 「わかったっすよ。」

 エルと話していたら、いつの間にかかなりの時間が経っていた。

 私はエルに別れを告げ、洞窟を後にした。


 ◇


 「ふぅ……カナミとソラはにぃにについて王都っすか。私もついて行けばよかったっすね。」

 私は温泉につかりながらそんな事をつぶやく。

 この魔王城最上階にある展望台温泉から見える夕焼けはとても綺麗だ。

 にぃにもこの景色が好きで、よくこの時間に入っている。

 この昼でもなく夜でもない、刹那の時間が見せる風景。

 とても綺麗でいてもの悲しさを覚える風景。

 やっぱり、一人で見るより誰かと一緒に見たいなと思う。


 「失敗したっすね。」

 折角ねぇねに甘えてねぇね分を補給したのに、この景色を見たせいで、寂しさが募ってくる。

 「一人はつまらないっすよ……。」

 きっと、明日になればにぃには帰ってくる。

 ねぇねがそう言ったんだから、きっと帰ってくる。

 

 にぃにが帰って来たら、思いっきり甘えよう。

 淋しかったって想いを思いっきりぶつけるんだ。

 カナミもソラもにぃにと一緒だったんだから、明日は譲ってもらうんだ。


 「だから、早く帰って来てね。」

 私は沈みゆく夕日にむかって、そう呟いた。

今後、不定期にショートストーリーを掲載します。

イベントとかもあるしね。

連載中のストロベリー~優先ですが、合間に執筆していきますので、気長にお待ちいただけると幸いです。

 


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