※番外編 魔王の華麗なる一日 ~勇者教育システム~
番外編です。
書いていて蛇足かなとも思いましたが、一応、セカンドシーズンへの布石の意味もありますので。
……ぐるぅ、ぐるっこぉー……
……ン……うるさい……。
俺は無造作に、枕元にいた、ソレを捕まえる……が、逃げられる。
……ぐるぅ、ぐるっこぉー……
……ぐるっこぉー、ぐるっこぉー……
……ぐるぅんぐるぅ……ぐるっこぁー……。
「あー煩い!もう少し静かにしてくれ。」
俺はそう言って、ベガス達を追い回す。
「うるさいのはにぃにっすよ!」
枕が飛んでくる。
……ぐるぅー、ぐるぅー……。
さっきまで騒がしかったベガス達も急に静かになる。
そーっと、枕が飛んできた方を見る。
半身だけベットから身を起こしたリィズが睨んでいる。
「えっと、ゴメンナサイ。」
「わかればいいっすよ。……まだ、時間あるよね?」
リィズが上目遣いに、甘えた声で言ってくる。
やや幼さを残すというものの、整った顔立ち、滑らかな白い肌、大事なところはシーツで隠しながらも、見え隠れする適度にふくらみのある双丘……そして俺を誘う甘い声。
……はい、逆らえるわけがありません。
って言うか、逆らえるという奴は男じゃない。
◇
うーん……。
俺は寝返りを打つ……」。
むにゅ……。
手に何か柔らかいものが触れる。
むにゅ、むにゅ……。
「アン……ン……。」
何だろ……楽しい。
むにゅ、むにゅ……。
「アン……アン……。」
俺は、寝ぼけながらもその感触を楽しんでいると不意に冷たい声が聞こえる。
「いつまでやってるっすか?」
その声で、急速に意識が覚醒に向かう。
そして俺が触っている柔らかいものを視認する……。
「なんだ、エルの胸か。」
「失礼なのじゃ!」
エルの悲痛な叫びが部屋の中を木霊する。
「妾の胸を弄んでおいて、なんだ、は無いじゃろが!」
上半身をはだけさせたまま、エルネミアがぷんすかと怒っている。
まぁ、エルも見た目はソラと大差ないのに、出る所はしっかりと出ているからな……さっきの感触も、中々だったし。
「にぃに、エロい事を考えている。」
「仕方がないだろ、目の前に、こんなものぶら下げられたら。」
そう言って、目の前のエルの胸をもむ。
「ひゃん!」
「……昨日あんだけ私を弄んだくせにぃ……胸なんてただの飾りっす!エロい人にはそれが分からないっすよ!」
リィズが泣きながら部屋を飛び出して行った。
「なんだかよくわからぬが……これで二人っきりじゃのう……ダーリン。」
エルネミアがそんなこと言うが……。
「いや、あっち……。」
俺はエルネミアの斜め後ろを指さす。
ギギギ……と音がするような感じで振り替えるエルネミア。
そこにはロープを持ったミリィとソラが立っていた。
「今日もお仕置きですね♪」
にっこりと微笑むミリィ。
「い、イヤじゃぁ!お仕置きは勘弁なのじゃぁ!」
慌てて逃げようとするエルネミアを廻り込んだソラが捕まえる。
「ボクがたっぷり可愛がってあげる。」
ソラが怪しい目つきでエルネミアを見る。
「イヤじゃぁー勘弁なのじゃー。」
逃げようとするエルネミアを鮮やかなロープ捌きで縛り上げるミリィ。
それを引きずって連れていくソラ。
「おーい、やり過ぎるなよぉ。」
ミリィに声をかけるが、ミリィはにっこりと微笑むだけだった。
……ウン、あの子達を怒らせない様にしよう。
俺はもう何度目になるか分からない誓いを立てるのだった。
いやじゃぁー、という叫び声が遠くで聞こえる気がするが……。
「ウン、気の所為という事にしておこう。」
◇
「またお客さんよ。たぶん昼過ぎるんじゃないかな?」
朝食の後、お茶を飲みながら寛いでいると、カナミが声をかけ、水晶玉を見せる。
その中には細く、薄暗い洞窟を通る男女4人の姿があった。
「そうか、でも、エルがあんなんだから、今回は闇の間を飛ばして直接玉座の間に来るようにしよっか。」
「わかったわ。じゃぁ先に行って待ってるね。」
そう言ってカナミが部屋を出ていく。
「着替えるか。」
俺は身支度を整えて、カナミ達の待つ「魔王の間」へと向かう。
「にぃに、遅いっすよ!」
リィズがぷんすかしている……まだ、朝の事気にしているのかな。
「あー、朝は悪かった。」
そう言って、俺はリィズを後ろから抱きしめる。
「そ、そんなこと位じゃ……ゆる、さない、からぁ……ぁ、ぁ、んっ。」
俺はリィズの首筋に息を吹きかけ、ゴメンな、と優しく囁く……。
「はい、そこまで!二人ともいい加減にしようね!?」
「「ハイっ!」」
カナミさん、怖いっす……。
それが俺とリィズの共通の想いだった。
◇
「最初聞いたときはびっくりしたっすよ……「勇者育てる」なんて……」
リィズが水晶玉を覗きながら言う。
「『にぃに何か悪いモノ食べたんすか?エルですね、エルの料理食べたんすね!』だもんなぁ、エル、泣いてたぞ?」
「いいんすよ、エルはアレくらいでちょうどいいっす。」
「そうかぁ?」
「そうっすよ……それより、今日の構成は?」
「あぁ、男勇者に女騎士、女魔導師、女僧侶の典型的な4人パーティだ。」
「また女騎士っすか……くっころはもう飽きったっすよ。」
「そう言うなよ……だけど、最近女性率が多いけど、どうしたんだろうな?」
俺がそう言うと、リィズがあぁ、と少し冷めた目で見る。
「最近街では「今の魔王は女好き、女に弱い」って噂が広まってるんすよ。だから女性の多いパーティだったら隙がつけると考えてるんじゃないっすかねぇ。」
逆効果なんすけどねぇ、とリィズがつぶやく。
「また、なんでそんな噂が?」
「それは……魔王退治に行ったパーティが全滅して、女は捕まり、男だけ返されているからじゃないっすかね?」
「うーん、普通それならなるべく女性を連れてこないようにするもんじゃないか?」
「さぁ、勇者ってクズが多いから、女の子連れてけば最悪逃げれる、とか考えてるんじゃないっすかね?」
「クズだな。」
「クズっす。」
何か微妙な空気になったまま、俺達は「魔王の間」でその時を待ち続けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺の目の前には自称勇者が転がっている。
今日の主役様だ。
その横には剣を支えにして立ち上がろうとしている女騎士と、後方で魔力回復に努めている女魔導師と女僧侶がいる。
「さて、そこの勇者には、先ほど余の提案を断られたわけだが……お前達にも選択肢をやろう。」
そう言って、俺は女たちを見回す。
「この見掛け倒しの勇者を置いて、今すぐ逃げ出すのなら、魔王の名に於いてダンジョンの外までの安全は保障してやろう。」
我ながら酷い選択肢だと思うが、ここで逃げ出す様な奴らに興味はない。
「何をバカな事を!私達は勇者様の盾!たとえ私達がこの場で朽ち果てようとも、勇者様さえ無事ならば、いつか必ず魔王を倒す!」
女騎士が威勢のいいことを言う。
見ると後ろの二人も、うんうんと頷いている。
転がっている勇者も感動しているみたいだ。
「そうか、じゃぁもう一つの選択肢だ。……っと、その前に。」
俺は、カナミに目で合図を送る。
「はいはい、もぅ、お遊びが好きなんだから……『回復の光!』」
カナミの回復魔法で、女性3人の体力が全快する。
女僧侶は、自分より高位の回復魔法を事も無げに使うカナミを見て、目を丸くしている。
「これで動きやすくなっただろう。さて、お前ら三人が今ここで武装解除して無条件降伏するなら、その勇者は傷一つつけることなくダンジョンの外へと返してやろう。どうする?」
「クッ……。」
さっきと違い、悩んでいるようだ。
大方、回復したのだから逃げる方法を模索しているのだろうが……。
俺は勇者のサイレスを解除してやる。
「お前ら、降伏してくれ!頼む。必ず助けに来る!だからここは俺を信じて、今は耐えてくれ!」
(あー、やっぱりコイツ、クズだった。)
(クズっすね……ヤッちゃいましょうか?)
(まぁ、あの子たちに教える意味でも、ここは見逃してやれよ)
俺とリィズは小声で話す。
「勇者様……わかりました。降伏します。……それでいいですね。」
最後の言葉は、後ろの二人に向けたものだろう。
そのまま女騎士は武器を手放す。
魔導師と僧侶もその場にそれぞれの武器を置く。
「じゃぁ、3人とももう少し前まで来い。」
俺との距離約3M……不意を突いて飛び掛かればという誘惑に耐えられるかな?
3人が並んだところで俺は告げる。
「脱げ!」
女たちが躊躇う。
まぁ、そうだろうな、ここで脱げと言われても困るだろうけど、ここは「非情な魔王」を見せないといけない場面だからな。
「どうした?武装解除だよ。他に隠し持っていないかどうか調べるだけだ。」
三人の女たちは羞恥に顔を歪めながら防具と衣類を脱いでいく。
俺はふと、勇者に目をやると……。
そこには下卑た顔を隠そうともしない勇者がいた……。
こいつ、本当に勇者か?
こんな奴に彼女たちの裸体を見せるのはもったいないな。
「闇夜」
俺はこっそり目晦ましの魔法をかける。
いきなり真っ暗になってもがく勇者だが、サイレスの魔法を再度かけてあるので、静かなモノである。
「これでいいでしょうか?」
一糸まとわぬ姿を、俺達の前に晒す三人の女性。
その顔は羞恥で真っ赤になっている。
ふぁさっ……。
俺が何かを言う前にリィズが薄手の布をかける。
「えっ?」
驚く三人。
「確認できましたから、もういいっすよね。」
リィズちゃん男前なんだから。
ほら、魔導師の女の子がリィズを熱い目で見てるよ。
「一応少し拘束させてもらうからね。」
俺は彼女たちの腕を縛る。
「さて、と……まぁ約束だからな。」
本当は蹴り飛ばしてやりたいが、「傷一つなく」と言った手前やめておく。
念のため、ポーションを2本振りかけてやる……これで細かい傷も治っているはずだ。
そして転移の魔法をかけ、ダンジョンの外へと追い出す。
「さぁ、ここからだな。」
俺は壁面一杯に、外の様子を映し出す……追い出した自称勇者が映っている。
「この画像は、ダンジョンのすぐ外に設置した『アルケニちゃん・18号』が見ている今現在のものだ。」
俺は捕虜の三人にそう説明する。
「さぁ、コイツはどんな反応してくれるかな?」
◇
「ハァ、本当に無傷で返すなんて、バカな魔王だぜ。いや、やっぱり噂通り女を置いてきたからか?」
聞かれているとは思わないのだろう。
助かった安心感からか、本音を漏らす自称勇者。
「噂って?」
「あぁ、今代の魔王は女好きのエロ魔王だから、負けそうになったら女を差し出せば許してくれるって話だよ。だから、今回も綺麗どころを集めて来たってわけだ。」
「ふーん、じゃぁ、あの子達を助ける気はないんだ?」
「当たり前だろ、せっかく助かったのに、誰が好き好んで……って?」
ここに来てようやく、自分が誰と話しているか、疑問に思ったようだ。
辺りをきょろきょろと見まわす自称勇者。
しかし誰もいない。
あたりまえだ、さっきの声はアルケニちゃんを通して、カナミがここから話していたんだからな。
「はぁ、やっぱりゲスでしたね。……放っておいていいんすか?」
「あぁ、奴みたいなクズにお似合いの末路が待っているだろうよ。」
そう言って、俺はさっき奴に振りかけたポーションの空瓶を見せる。
「……自白ポーション?」
「あぁ、だからさっきもベラベラと喋ってくれただろ?あいつが街に入って酒場に行ったら……。」
「そう言う事っすか……自業自得っすね。」
リィズとの会話を終え、俺達は捕虜の三人に向き直る。
「さて、君たちの処遇だけど……。」
「くっ、殺せ!魔王の慰み物になるくらいなら。」
「それはもういいっすよ……飽きたっす。」
女騎士の、ありきたりなセリフを聞いて、リィズがげんなりとする。
「とりあえずは、しばらくは此処で暮らしてもらうよ。」
◇
俺が考案した勇者教育システム……一定Lvの勇者もしくは資質のある冒険者達を呼び寄せて、各地の魔王たちと戦えるようにするため、適度な難易度に調整したダンジョンを開放し、そこで鍛え上げる。
今は、まだ試験運転の為、その都度バランスをとっている。
また、始めたばかりなので、このように俺と数人の幹部で相手しているが、ゆくゆくはエルネミアに任せるつもりでいる。
そして、エルネミアを乗り越える勇者パーティが現れたら、その時こそ、俺の出番!……なんだけど、まだまだ先の話だ。
ただ、これを始めて分かったことがある……勇者を名乗っている奴は皆クズだ。
そして、自称勇者の内8割は、勇者の資質すら持っていなかった。
残りの2割も、資質を持っているにもかかわらず、クズだった。
結局「勇者」と名乗れば、周りがちやほやしてくれて好き放題できるから、勇者を名乗るクズが後を絶たない。
そう考えると、最初に会った「自称勇者」は本物だったかもしれない……バカだけど、少なくともクズではなかった。
それから「勇者」と言うだけで、なんでもいう事を聞く周りにも問題がある。
だから、やってきた勇者を軽くあしらい、見込みのある従者と引き離したうえで、勇者の本質を見せる。
ちょうど、今目の前にいる捕虜の様に……。
そして、見込みのある従者には『教育』を施して街に帰すことによって「勇者を見極める」目を養ってもらおうというのが、当面の目的となっている。
なっている……のだが、最近、街へ帰りたがらず、任官を求めるものが増えている。
「なぁ『教育』の方は大丈夫か?」
俺はカナミとリィズに確認する。
捕虜たちの教育は彼女たちに一任している。
女の子が多い……と言うか女の子だけなので、俺が下手に関わると、後で何を言われるか分からないからな。
「ちゃんとやってるっすよ。」
リィズはそう答えるが、心なしか視線が彷徨っている気がする。
「でもなぁ、報告書見ると、日に日に我が領地への帰属率が上がって、帰国率が下がっているんだけどなぁ。」
今後、人族側にまで領地を広げる予定なので、人族の配下は多いに越したことはない。
しかも幹部自ら教育した人材となれば……。
そう言う意味では悪い事ではないのだが……街に戻ってくれないと、当初の「勇者を見極める」という計画が進まないんだよなぁ……。
「あ、あのっ!」
俺達の会話に、突然割り込んでくる、捕虜の女魔導師。
そう言えば、こいつら居たっけ。
「あの、今の話ですと、私がこの国の方にお仕えすることが可能という事でしょうか?」
「あ、あぁ、まぁな。しばらくここで暮らしてもらって、色々覚えてもらったうえで、希望すれば能力次第では使ってもいいが……。」
俺がそう答えると、彼女は「かんばります!」と、熱い目でリィズを見つめていた。
「そう言う事ね……、この子はリィズ、あなたが教育しなさいよ。」
カナミも俺と同じ判断をしたようで、そんな事を言う。
リィズも気付いてはいたのだろう。
カナミに言われて、イヤそうな顔になる。
「どうなっても知らないっすからね。」
色々と問題も多い。
勇者教育システムも、うまく稼働するかどうかわからない。
ゼキオンやアラベスの動向も気になる。
また、表に出てきていない「魔王種」の存在。
それでも、俺の描いた理想が、ここにある。
後はゆっくりでいいから、これを大きく広げていくだけだ。
大丈夫、時間はたっぷりある。
なんて言っても、俺は「魔王」なんだからな。
これにて、いつか魔王になろう!は、一旦終了となります。
楽しみにしていただいた方、応援していただいた方本当にありがとうございました。
自作の構想はありますので、なるべく早いうちにお届けたいと思います。
次回作も引き続き応援していただけたら幸いです。




