88話 解放団
お待たせしました。
その代表者らしき半獣人の男は、足の脛を布でグルグル巻きにして、鎧の脛当てのかわりにしている。そして丸盾にグラディウスという装備である。
ーー元剣闘士か
バンブロックが代表者の前に歩み出て言った。
「俺はバンブロック。今は奴隷剣闘士をやらされている」
「俺の名はジャックル、俺も少し前までは奴隷剣闘士だったよ」
そう言って握手する2人。
「もしかして俺達を助けようとしてくれたのか?」
そのバンブロックの問いに、ジャックルは頷いて言った。
「そうだ、それで仲間に入ってほしい――とその前に、まだ、息のあるオーク兵がいるようだ。とどめを刺さないといかんな」
そう言って仲間に合図するジャックル。
だがそれをバンブロックが制する。
「待ってくれ。あの気を失っているオーク兵だけは、生かしたままで頼む」
ジャックルが不思議そうに聞いてくる。
「どうしてだ。生かしておく価値など無いと思うが」
「いや、俺達はこのままオーク主人の所へ帰る。大切な仲間がいるんだ。それに俺はもっと大規模な反乱計画を立てている。それにはまだ、奴隷でいる方が都合が良いからな」
ジャックルは少し悩んだ顔をするが、直ぐにバンブロックの後方に隠れているポポや狩り番奴隷に目をやる。
「他の者達もか?」
「そうだな、ちょっと話し合う時間をくれるか」
「分かった」
バンブロックは、ポポや狩り番奴隷2人にどうしたいのか話し合った。
その間に重傷のオーク兵は、ジャックルの仲間にとどめを刺される。
そして話し合いの結果、狩り番奴隷2人はジャックルらと合流する事になり、ポポとバンブロックはベースキャンプへ戻る事になる。
その後、彼らとしばらく話をして別れる事となった。彼らは「解放団」と自分たちを呼んでいた。
「機会があればまた会おう」
そう言ってジャックルが手を出すと、バンブロックはその手を握り返答する。
「ああ、そうだな。それから奴隷蜂起の時がきたら、協力を頼むぜ、解放団さん」
こうしてジャックルらと別れたバンブロックとポポは、持てるだけの猪豚の肉と気絶したオーク兵を担いで、ベースキャンプまで戻るのだった。
そしてベースキャンプに戻った所で、待っていたオーク兵には「魔物に襲われたて全滅しかかった」と報告するのだった。
気絶したオーク兵は何も見ていないから、目覚めたとしても、嘘がバレる心配はないと考えたのである。
案の定、ベースキャンプのオーク兵達は、バンブロック達を全く疑おうとしない。わざわざ負傷したオーク兵を連れて来たのは、疑いを防ぐには十分だった。
それにバンブロックは闘技場で勝利を続けて、ウマッハ養成所へかなり貢献してきた。そう言う理由からも、奴隷でありながらオークらに信頼されていたのかもしれない。だから疑われなかったのだろう。
こうしてバンブロックとポポは、僅かな獲物肉だけで帰って来た。
そして狩り番奴隷がいないとなると、狩りを続けるのは困難と判断されて、ベースキャンプから撤退する事となる。
こうして養成所まで戻って来た。
ホッとするバンブロックだったが、そこで待ち受けていたのはバンブロックにとっては耳の痛くなる連絡であった。
「バンブロックさん、新しい試合が決まりましたので連絡します」
バンブロックが養成所に到着するなり、ププが話し掛けてきたのだ。
少し面食らったバンブロックだが、動揺しながらもしっかりと聞く。
「お、おう、相手はどんな奴だ」
「今回はタッグ戦ですので、対戦相手は2人です」
「ってことは、俺も誰かと組むのか?」
「はい。ご主人様はランクCの、モナさんと組ませると言っております」
「モナと組むのか。まあそれは良いが。それで、相手のランクもBとCなんだよな?」
「相手のランクは2人ともBと聞いています」
「何サラッと言ってんだよっ、2人ともランクBっておかしくないか!」
ププがちょっとだけイラッとして、顔をしかめる。しかし直ぐに平常心を取り戻して話し出す。
「言いたいことがありましたら、ご主人様にお伝えしますので、もう一度言ってもらってもよろしいですか」
ーーしまった! またやってしまった
「い、いや、今のは忘れてくれ……えっと、それで対戦相手の情報を教えてくれるか」
「はい。情報によりますと、人間語に訳して言いますと“奇妙な短剣”が2人のコンビ名です。2人ともオークの元兵士で死刑囚で犯罪奴隷です」
「死刑囚かよ……」
「軍用物資の強奪、上官殺害、恐喝、市民への暴行、殺害などにより死刑判決となりました」
「犯罪のオンパレードだな。しかし2人とも同じ経歴なのか?」
「そうです。2人は双子の兄弟ですので、いつも一緒に動いているようです」
「なるほどね。それで2人とも死刑判決ってことか。ん、まてよ。死刑判決が出たのになんで犯罪奴隷になってるんだ?」
「それは司法取り引きをして、奴隷刑に減刑したようです。残念ながら、どんな取り引きをしたかまでは、分かりません」
「そんな事も出来るんだな」
「それと基本は投げナイフ攻撃なんですが、双子ならではの攻撃に注意して下さい。目の錯覚の様な攻撃をしてくるみたいです」
「どんな攻撃だ?」
「それが良く分かりません。情報によると、幻を見ている様な攻撃とか、ナイフが曲がって飛んでくるとか、ナイフが複数見えるとか、情報が錯綜しています。幻惑魔術を使うとかで、魔術の効果という者もいれば、そういう動きをするだけと言う者もいて、良く分からない所が多いです」
「そうか、何となく分かった。でも2人ともランクBならなんとかなるだろ。で、試合の日はどうせ明後日とかなんだろ」
ププの顔が僅かに緩む。
「先の読める男になってきましたね」
「ふん、俺だって成長してるんだよ」
「意外です」
「しかしププも、そんな事を言える様になったんだな」
「私も成長してるんです」
「お互い様だな」
そう言って二人で顔を合わせると、お互いにニンマリするのだった。
その日の夜、バンブロックに手紙が届いた。
ウマッハ邸への荷物の納品業者に化けた密偵が、バンブロックにこっそりと渡したのだ。
手紙の送り主は“フリーダム”であった。
バンブロックはフリーダムに対して疑心暗鬼な感情を抱いており、この手紙を受け取ったは良いが中身を見るか迷っていた。
「くそ、見てみなくちゃ分からねえか」
そうつぶやくと、バンブロックは手紙を開いた。
手紙には「奇妙な短剣は敵対勢力の刺客なり」とだけ
書かれていた。
スランプです。
書けません。
いつも100話近くなると書けなくなるんですよね。
今後しばらくは不定期投稿となります。




