86話 暗躍する刺客
バンブロックが旋風に勝利したことで、バンブロック人気も急激に上昇していた。
それに伴い、バンブロックへの対戦のオファーが増えた。
ただしオファーしてくるのは、魔物使いと呼ばれる魔物を取り扱う業者ばかりであった。バンブロックと魔物との対戦オファーである。
それ以外だと、マッチメーカーが見つけてくる“ハンディーキャップマッチ”のオファーだった。
それはランクAとの対戦やランクC3人との対戦など、ランクを超えた戦いのオファーだ。
これにはウマッハも、慎重に考えていた。
変な試合で負傷して再起不能になったら、それこそ大損だからである。あくまでもバンブロックは、金づるの奴隷であった。
□ □ □
ここは王都ギグから少し離れた、とある小さな街。その街中を闇に紛れて移動する、怪しげな1人のオークがいた。
そのオークの名はゴウロ。バンブロックへの刺客である、旋風を送った男である。だがその結果は単に、バンブロックを有名にさせただけとなった。つまり上からの命令に失敗したのである。
それで彼は失敗による命の危険を感じて、王都ギグから出来るだけ遠くへ逃げているのだった。
『〈予定通りだな〉』
真夜中にゴウロは、チャーターした獣車を街の外れで待たせていた。
ゴウロは周囲を確認した後、暗闇から現れ獣車に乗り込む。
『〈よし、直ぐに出発しろ〉』
ゴウロの言葉に御者は無言だ。
ゴウロは不思議に思い、再度声を掛ける。
『〈おい、聞こえないのか。早くだせ〉』
そこでやっと御者が言葉を口にする。
『〈あんたがゴウロか?〉』
『〈ああ、そうだ。俺がこの獣車を頼んだ雇い主だぞ。もたもたしてないで、早く出せ〉』
ゴウロはてっきり雇い主の確認かと思ったが、そうではなかった。
『〈そりゃあ良かった。まさか護衛もいないとはな。まあ、ゴウロ本人なら問題ない。だがお前はここまでだ〉』
『〈何を言ってる?〉』
次の瞬間、御者が振り向きざまに何かを振るった。
その途端、ゴウロの首が闇夜に舞った。
御者のフリをした暗殺者だったのである。
雇い主はもちろんゴウロの上司である。やたらと身なりの良い、あのオークであった。
そしてその身なりの良いオークの元で、片膝を突いている別のオークがいた。
『〈前任者は私の命令に失敗して行方不明になっているが、ドウル、貴様はそうはならないんだろうな?〉』
脅しともとれる内容である。しかしドウルと呼ばれたこのオークは、臆することなく返答する。
『〈お任せ下さい。必ずや消し去ります〉』
こうして再びバンブロックへと、刺客が送られる事となった。それを担当するのが、このドウルと言うオークであった。
前任の痩せ細りしたゴウロとは違い、身体つきはプヨプヨである。プヨプヨした身体を左右に揺らしながら、ドウルは通路を歩いて行く。
『〈バンブロックか、かなり手強い相手らしいが……ならば複数人送り込むとするか〉』
そんな事をブツブツと言いながら、ドウルは次に送る剣闘士を考えるのであった。
□ □ □
養成所の朝は早い。
奴隷達は日の出より前に起き、それぞれの仕事につく。
朝の食事の用意に取り掛かる者、商売の品を仕入れに出掛ける者、あるいは肉を手に入れる為に狩りに出掛ける者などである。
特に狩り担当の狩り番と呼ばれる奴隷は、飛び道具の扱いに秀でた者が選ばれた。
基本的に下っ端に肉は食べさせないので、獲物が大きい必要はない。極端な話だと、当日ウマッハの食べる分が確保されていれば良いのである。
そうなると強力な武器は必要は無く、弓やクロスボウで事足りる。
しかしこの日は違った。
明日ウマッハの屋敷に、客が来るという。
その客はグリーンスキンの社会の中では結構身分が高いとかで、明日ウマッハは全力でその客を饗すという。
そこで狩り番奴隷だけでは、客人全員分の肉の確保は難しいと判断したウマッハは、今日試合の無いポポとバンブロックを、朝から呼び出したと言う訳だ。
日の出前にオーク兵に叩き起こされた2人は、まだ目がショボショボしていた。頭は冴えず視界も朧げなまま、2人は獣車の檻に入れられて養成所を出発した。
獣車の揺れで頭がスッキリしてきた頃には、狩り場である山の中で獣車は停車した。
獣車で数時間の山の中である。
予想していたよりも、山奥であった。
獣車の音が消えると、川の流れる音や鳥のさえずりが耳に入ってくる。
この辺りにベースキャンプを設営し、そこから狩り番奴隷が狩りを始めるようである。
ベースキャンプの設営が終わると、早速狩りに出掛けろとの指示がある。
バンブロックにポポは、狩り番奴隷2人と見張りのオーク兵3人の合計7人で、森の中へと分け入った。
特に何も注意はされていないバンブロックだが、ここは山の中である。高ランクの魔物がいてもおかしくはない。盗賊がいてもおかしくはない。
ポポとバンブロックの2人だけは、常に周囲を警戒していた。
バンブロック達が、山道を歩いている時だった。
「おっ、あそこで何か動いたぞ」
バンブロックが何かを見つけたらしい。
しかしそれは、10数メートルはある谷底である。
ポポが谷底を覗き込みながら、バンブロックに聞く。
「え〜と、どこでしゅか?」
「ほら、あそこ岩陰の辺りだよ」
「全然見えないでしゅけど〜」
他の奴隷やオーク兵達も確認しようとするが、ちょうど谷の壁面から生えた木で、その場所が見えずらい。
仕方なくバンブロックが志願した。
『〈俺が下まで降りて確認してくる〉』
オーク兵がそれを了承した事で、バンブロックは足枷を解かれた。谷の壁面を降りるには、足枷は邪魔になるからだ。
その代わり、腰にロープを巻かれた。
見つけたのが 食用に適する獲物であれば、狩りのチャンスである。
バンブロックは、ゆっくりと谷底へと降りて行く。
バンブロックが谷底に足が付いて、動きがあった場所に視線を移す。するとそこには、岩陰からバンブロックを見つめる目があった。
慌てたバンブロックは、別のロープで降ろされた槍に手を伸ばす。
が、直ぐに槍を掴んだ手を緩めた。
そこにいたのはボロ服に身を包んだ、半獣人の女の子であった。
10代前半くらいだろうか、怯えた目でバンブロックを見つめていた。手には石器製の槍を握り締めているが、驚きの方が勝っているのか、バンブロックにそれを向けてこない。
ただ驚きの表情で、バンブロックを見つめるだけだった。
バンブロックは槍を地面に置くと、北方語で話し掛けてみる。
『〈この通り、君に危害は加えないよ〉』
バンブロックはそう言って、ゆっくりと近付いて行く。
そこでバンブロックは気が付いた。
その子供の腕から肩にかけて見える焼印に。
ーー奴隷? こんな山奥でか
バンブロックは周囲を見回すが、人の気配はない。
この子供だけである。
それに少女には枷の類が無い。
この状況で考えられること。
『〈おまえ、脱走奴隷か?〉』
エアコンが壊れました!
死にそうです
(TдT)
それで次回投稿は金曜日の予定です。
遅れる可能性あり……




