78話 精鋭部隊vsバンブロック
4回目のショートボウの一斉射が、バンブロック達を襲う。
今回の斉射は凄まじかった。
倒れた半獣人の箇所から隊形が乱れ、そこを集中的に攻撃されたからである。
所詮は隊列素人の集団。負傷者が出た事により誰もが動揺してしまい、大きな隙が出来てしまったのである。
そしてこの斉射により、負傷者が更に4人出てしまう。どれも半獣人だった。4人共に身体のどこかしらに、矢が刺さっている。しかも1人が地面に横たわり、大袈裟なくらい痛がっている。
それを無視したバンブロックの怒号が飛ぶ。
『〈陣形、立て直せ!〉』
さらにバンブロックは、逃げ出しそうな半獣人に蹴りを叩き込んで叫ぶ。
『〈ここは闘技場、逃げる所はない!〉』
その時点で既に隊列は、バラバラとなり掛けている。オルゴの6人だけがラウンドシールドをかざして、必死に防御体勢を取っていた。
半獣人の半数が矢を受けているが、ゴブリンのショートボウの威力はそこまで高くない。矢を受けたとしても、急所でなければ滅多に致命傷にはならない。
弓の威力というのは腕力が物をいう為、ゴブリン程度の力ではたかがし知れているのである。
そこでゴブリン達へ剣に持ち替えるようにと、副官ホブゴブリンから命令が出た。
陣形が乱れた所に、接近戦で挑もうというのである。
するとバンブロックの声が飛ぶ。
『〈投石、用意!〉』
ゴブリン共が弓を手放したタイミングで、オルゴ達は投石を試みるのである。
オルゴ達がスリングの用意をする。
ゴブリンがやや遅れて、ショートソードを抜剣した。
そして『〈突撃!〉』の合図で走り出す。
すかさずバンブロックが叫ぶ。
『〈放てぇっ!〉』
また直ぐにバンブロックの声が飛ぶ。
『〈接近戦用意!〉』
スリング攻撃は1度のみ。結果を見ずに、近接戦闘を仕掛けて来るゴブリンに対応する。
その間に放たれた投石の全ては、ホブゴブリン指揮官に集まる。
これはあらかじめ、指揮官を的にする取り決めだった。
オルゴ6人のスリング攻撃は正確だった。
だがホブゴブリン指揮官は、丸盾の防御で投石の殆んどを弾く。それでも、つま先に投石の一発が命中。鎧の無い部分である。
指揮官ホブゴブリンは、派手に地面に転がる。その時に、ゴブリン兵数人を巻き込んだ。
そしてオルゴ達も剣を抜く。
まだ戦える半獣人も剣を構えた。
グリーンスキン部隊は目の前だ。
そのまま2つの部隊は、正面から衝突した。
剣と盾がぶつかる音、戦いの雄叫びに悲鳴、そして熱狂する観客の声がコロシアムに響き渡る。
鮮血が舞い、身体のパーツが地面に転がる。
時間と共に闘技場の地面は、鮮血で徐々に赤く染まっていく。
ここは正に戦場だった。
殺意と憎悪が蔓延る、死の戦場であった。
だが、そんな生死の狭間でも、楽しそうにしている者がいた。
表情はフルヘルムで定かではないが、声だけが聞こえてくる。それは笑い声である。
そのフルヘルムから見える片目が、不気味に赤く光っていた。
バンブロックである。
“バンブロックの中の魔物”が、目覚めたのだ。
味方がグリーンスキンを迎え討つ陣形の中、バンブロック1人がそれを飛び越えて、向かってくるゴブリンの集団の中に斬り込んだ。
一段と輝きが増したグラディウスが、先頭のゴブリンの首を一刀両断する。
その首が地面に落ちるまでに、さらに2人の首が舞う。
バンブロックが、ドクロヘルムの中で嗤う。
「ふはははは、まだ足りないぞ」
バンブロックは何やらブツブツ言いながら、ゴブリンを斬り捨てていく。
ゴブリン兵が徐々に後退を始める。
今いるゴブリンは、列記とした兵士である。しかも統制がとれた部隊である。そう安々と倒されるはずが無いのだが、現実には時間と共に人数が減らされていく。
たった1人の剣闘士によって、22人の部隊突撃が阻まれたのである。
起き上がった指揮官のホブゴブリンは、信じられないと言った表情だった。それでも指揮官たるホブゴブリンは、副官ホブゴブリンに命令する。
『〈あのドクロヘルムを最優先でぶち殺せ〉』
『〈任せて下せぇ。直ぐに奴の首を隊長の前に持って来ますぜ〉』
そう言うと、副官ホブゴブリンは戦斧を肩に担ぎ、暴れまくるバンブロックへと向かう。
そしてバンブロックに近付くと、副官ホブゴブリンは戦斧を高々と振り上げる。
『〈死ねや!〉』
バンブロックはゴブリン兵と対峙中で、副官ホブゴブリンは死角となっていた。副官ホブゴブリンにしたら、完全な不意打ちチャンスである。
その時の副官ホブゴブリンは、勝利を確信していた。
重量のある戦斧が、ホブゴブリンの剛腕から振り下ろされようとしていた。
しかし高々と振り上げた戦斧は、振り下ろされることはなかった。
副官ホブゴブリンの胸から、鮮血が噴き出す。
バンブロックがひと突きしたのだ。
バンブロックは一瞬だけ振り向き、グラディウスを副官ホブゴブリンの胸に突き刺すと、直ぐに元のゴブリン集団へ向き直ったのである。
まるでついでに攻撃したかのようだ。
予期せぬ攻撃に副官ホブゴブリンは、ポカンと口を空けたまま、仰向けに倒れて絶命した。
それを見た指揮官ホブゴブリンが叫ぶ。
『〈ドクロヘルムがぁっっ!〉』
叫びながら戦斧を斜め下に構え、真っ直ぐに走り出す指揮官ホブゴブリン。
味方のゴブリン兵などお構い無しに、弾き飛ばしながら突撃する。
そこへオルゴの6人が、ラウンドシールドでの防御姿勢を取りながら立ち塞がる。
指揮官ホブゴブリンは、正面からそこへぶち当たった。
ドミノ倒しの様に倒れるオルゴ達。
さらにホブゴブリン指揮官は、それを掻き分ける様にして前に進む。
そこへバンブロックが襲い掛かった。
「うはははは。良いぞ良いぞ、もっと来い!」
前にもあったが、観客が次々に『〈バーサーカー〉』と言う言葉を口にしだす。
バンブロックの赤い片目とその暴れっぷりが、かつて“バーサーカー”と呼ばれた狂戦士を彷彿させるからである。
バンブロックの輝くグラディウスが、指揮官ホブゴブリンの腹へと、横薙ぎに振るわれた。
それを丸盾で防ぐ指揮官ホブゴブリン。
盾と剣が激しく交差。
盾の枠の金属とグラディウスがぶつかり、火花を散らす。
指揮官ホブゴブリンが、ギョッとした目で自分の丸盾を見る。丸盾にヒビが入ったからである。
バンブロックは一撃だけで、軍隊仕様の盾にヒビを入れたのだ。
その威力に度肝を抜かれた指揮官ホブゴブリンは、ゴブリン兵の中へと後退して行く。
後退しながら悔しそうにつぶやく。
『〈まだだ、戦いはこれからだ〉』
指揮官ホブゴブリンの周りに、ゴブリン兵が集まる。
陣形を整えているのである。
オルゴ達とまだ戦える半獣人達も、集まり出した。彼らなりに、隊列を整えようとしているのである。
一方バンブロックは、完全に個人行動となり1人で高揚していた。
必要にゴブリン兵を追い回して。血祭りに上げていく。既に半数近くのゴブリン兵を倒している。
残りは指揮官ホブゴブリンの周りに集まり、隊列を組み直していた。
指揮官ホブゴブリンが叫ぶ。
『〈前進!〉』
横一列に並んだゴブリン兵が、バンブロックに、向かって前進して行く。
バンブロックは、その隊列の真ん中へと突っんだ。
すると両サイドのゴブリン兵が、バンブロックの両サイドに移動する。
そしてあっという間に取り囲む。
軍隊ならではの、統制が取れた行動であった。
ストックが無くなってきました……
投稿速度がちょいと落ちます。
次回投稿は7月3日金曜日が濃厚です。
もしかしたらもっと早いかも?……遅いかも?
<(^_^;)
よろしくお願いしますします




