表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/79

79話 もう1人の自分






 囲まれてしまったバンブロックだが、片目が赤くなった状態ではむしろ望む所であった。


「ふはははははは、もっとだ、もっとだ!」


 心底楽しそうな表情を浮かべ、バンブロックはグラディウスを振るう。


 ただゴブリン兵らも、ただやられているだけでは無い。

 果敢かかんに斬り込んでいく。


 それに対しバンブロックは、革鎧でかなり防いではいるが、どうしてもそれだけではカバーしきれずに、徐々に身体に傷が出来ていく。


 そこで指揮官ホブゴブリンが叫ぶ。


『〈効いてる、効いてるぞっ。そのまま斬り刻め!〉』

 

 その声にゴブリン兵らも、感情がたかぶっていく。


 しかしである。

 そこでバンブロックは、絶叫とも雄叫びともとれる叫び声を上げた。


「おあああぁぁぁぁっっ」


 するとグラディウスが、一段と輝き始める。


 そしてバンブロックの声に、観客席は騒然となる。


 ゴブリン兵や指揮官ホブゴブリンも何事かと、手を止めてバンブロックの様子をうかがっていた。


 そして……



ーー麻痺魔術パラライズ



 前方のゴブリン兵に向かって、グラディウスを横薙よこなぎに一閃。


 その一振りは空を斬ったにも関わらず、多数のゴブリン兵からバチッバチッと音が発せられた。

 そして身体中から煙を出して、その場に崩れ落ちる。


 残ったゴブリン兵は、理由わけがわからずパニックになりかける。

 バンブロックの麻痺魔術に対しての予備知識を、知らされていなかったからだ。彼等にしたら、初めて見る魔術であった。


 そこでバンブロックは振り返り、後方の残ったゴブリン兵に対して、再びグラディウスを振るう。


 この一振りで残りのゴブリン兵も、煙を出しながら地に伏せる。


 ただ、辺りには焦げた匂いが残っていた。


 そして指揮官ホブゴブリンが1人、闘技場にたたずんでいた。

 

 バンブロックが、指揮官ホブゴブリンに向き直る。

 そのドクロヘルムから、わずかにわらい声が聞こえてきた。


 バンブロックはわらいながらゆっくりと、指揮官ホブゴブリンへと近付いて行く。


 指揮官ホブゴブリンは先程までの表情とは打って変わって、恐怖に包まれた顔をしている。


『〈来るなっ、来るな〜っ〉』


 それは完全に、恐怖に飲み込まれていた。


 そしてその恐怖の顔は、首ごと空中を舞った。

 

 バンブロックが斬ったのである。


 首はゴロンと、音を立てて地面に落ちる。


 ほぼ同時にバンブロックの“御守り”が地面に落ちた。


 静まり返る闘技場。


 そして少しの間を空けて、大歓声が上がった。


 殆んどの観客は、グリーンスキン部隊が勝利する方に金を賭けていたのだが、この結末を見せられた観客は、賭け事など関係なくバンブロックを称賛しているのである。

 24人の精鋭部隊を、ほぼ1人で壊滅させたのだ。

 快挙としか言いようがない。


 オルゴ達や生き残った半獣人は、ポカーンと口を開いたままバンブロックを見つめている。


 一方、落ちた“御守り”を見つめるバンブロック。

 赤かった目は元に戻っている。どうやら元に戻ったようだ。


 御守りとは、ププから貰ったあの手作り御守りである。バンブロックにしたら大切なもの。


ーー何だ?……俺はいったい……そうか、また“俺の中の魔物”が出てきたのか。


 バンブロックは御守りを拾い上げる。

 それを見つめながら試合を思い返す。暴れた記憶が残っていた。それを思い返すと、自責の念に駆られてしまう。

 それと自分の中の魔物が、いつ暴走するかもしれない恐怖もあった。

 バンブロックにとっては、勝利よりもこちらの方が気にかかっていた。


 生き残ったオルゴと半獣人達は、勝利した事を喜んでいる。それとウマッハもである。

 この試合でまた大儲けしたのだ。


 この試合の勝利によりバンブロックはまた、この王都ギグでの人気は高まっていった。


 しかしウマッハも、余り長くバドの屋敷を留守にはしていられない。

 ウマッハは剣闘士以外にも、農園や商品売買などの仕事もしていたからである。それを長く放ったらかしにする訳にもいかず、さすがにそろそろバドの街へ戻るつもりであった。


 その翌日。

 ウマッハ商隊は宿を出た。

 バドの街へ戻るのである。


 バドの街へ帰る時になって、バンブロックはやっと気が付いた。買ったばかりの10人の半獣人が、1人もいないことに。

 ウマッハが手放したのだ。

 恐らく治療もしていない。それはつまり、死人が出た可能性もある。

 生き残った者は恐らく、かなり安い値段で売り払ったと思われた。


 オルゴ6人は檻に入れられ、獣車で運ばれている。彼らはウマッハから及第点をもらえたのだ。

 そしてバンブロックは徒歩である。檻が一杯だからだ。荷車にでも乗せてくれと思うバンブロックだが、良く見ると荷車は荷物で一杯だった。

 これは王都で仕入れた品を、バドの街で売るつもりだ。ウマッハは商売人でもある。


 そして帰りの道中での事。


 ウマッハ商隊は盗賊に襲われた。

 オークと獣人の混成である。


 それをバンブロックは不思議に思う。と言うのも、ウマッハ商隊は結構な規模の商隊であり、しかもフル武装のオーク兵や奴隷剣闘士といった十分な護衛がいる。それは見れば直ぐに分かる。

 普通の盗賊ならば、余程の戦力が無ければ襲って来ない程の護衛戦力である。。それにも関わらず、たった20人程の戦力で襲って来たのである。

 それはまるで、何か目的があるかのようだ。


 それに盗賊の装備がちょっと良すぎる。

 使い込まれた革鎧を着込み、良く手入れされた剣を握っている。決して安物などではなかった。


ーー目的は積荷じゃなさそうだな


 バンブロックは戦いながら考える。


 両手にハチェットを持った盗賊オークが、その左手のハチェットを投げてきた。


 バンブロックはカイトシールドを顔の高さまで持ち上げ、そのハチェットを防ぐ。

 そしてカイトシールドを下げた時、ハチェットを投げたオークが目の前まで来ていた。


 振り上げられたハチェットが、バンブロックの頭を狙って振り下ろされる。

 

ーー戦いにも慣れていやがる!


 バンブロックは敢えて前に出る。

 そしてカイトシールドごと体当たり。


 さらに足元目掛けて、グラディウスを振るう。


 ひざを斬られ転倒する盗賊オーク。


 バンブロックはそいつの頭を踏み潰しながら、別の盗賊オークの背中を斬り裂いた。

 

「こいつら、盗賊じゃないな」


 味方がやられても、奴らはひるまないのだ。


 背中を斬り裂いた盗賊オークに、とどめの一撃を脳天に叩き込む。

 返り血が獣車を赤く染める。


「傭兵ってところか……」


 獣車の窓からププが、外の様子を見ようと恐る恐る顔を出す。


 そこへバンブロックの怒号が飛ぶ。


「顔を出すんじゃねえ!」


 盗賊の目当てが奴隷かもしれない。

 この商隊には何人もの奴隷がいる。特にププは、数カ国語の読み書きが出来る。ハーフリングは外見が不人気である人間に近いが、それでも通訳奴隷としては貴重な存在で、高額で取引される場合が多い。盗賊に狙われてもおかしくはない。

 この商隊の奴隷だけでも、相当な金額になる。そう考えると、リスクを負っても狙ってくる価値はあるのかもしれない。

 

 ププは怒鳴られ、慌てて顔を引っ込めた。

 

 味方の護衛オーク達は、主人であるウマッハが乗る獣車を守るように戦っている。

 しかし殆んどの盗賊は、そっちへは行かない。しかも荷物が積んである荷車にも、見向きもしない。

 何故かバンブロックの周りに集まっていた。

 

 そこには雑用奴隷が乗る獣車と、オルゴ6人が乗っていた獣車があり、オルゴ達はバンブロックと共に戦っている。

 当然の事ながら鎖は付いている。


ーー何が狙いだ?


 バンブロックは戦っていく内に、「俺が狙われている?」と言う疑問が湧いてくる。

 奴隷の獣車な隙があっても、そちらには目もくれない。ひたすらバンブロックばかりを狙ってくるからだ。


「俺が狙いか……ふん、やれるもんならやってみろ!」

 

 バンブロックは、グラディウスを振り上げた。








次回投稿は金曜日の予定です。


誠意書き溜め中……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ