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気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


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74話 人間の女性







 バンブロックは遂に、ランクBへと昇格した。

 ウマッハは大喜びで、バンブロック専用の武具を作らせる為に、ギグの街でもかなり大きな武具屋へと向かった。もちろんバンブロックと、通訳のププも一緒である。


 バンブロックとしても専用の武具を作ってくれるのは嬉しいのだが、自分の中に潜む“魔物”がどうにも気になって、それどころではなかった。

 

 バンブロックはどこか上の空のまま、大量の買い物が進められた。ただし、グラディウスだけは買い替えを断り、代わりにさやを作ってもらった。


 そして武具を一式買い揃えた所で宿に帰るかと思えば、ウマッハは別の場所へと獣車を向かわせる。

 着いた場所は人間の街でも良くある、色街であった。

 ウマッハがバンブロックへの褒美として、娼館へ案内したのである。それもかなり大きな娼館である。


 そこでもやはりバンブロックは上の空であり、知らない間に2人の護衛オークに連れられて、娼婦が何人もいる部屋へと通された。


 10人ほどの娼婦の前に立たされて、初めてバンブロックは意識を目の前に持ってきた。

 バンブロックの目が見開く。

 

 娼婦の中に人間がいたからだ。


「お、おい、あれは人間だよな?」


 今ここにププはいない。

 だから人間の言葉が分からない護衛オークは、その言葉には反応しなかった。

 ただ護衛オークの2人は、急に態度が変わったバンブロックが、娼婦を前に興奮しているのだと思い、ニヤニヤと嫌らしい表情を浮かべていた。


 バンブロックは、人間の女性の前へワナワナと歩み寄る。


 人間の女性は特に変わったところは見せず、手慣れた態度で人間の言葉でバンブロックを誘う。


「私はサーラよ。よろしくね」


 そう言ってバンブロックに手を伸ばす。


 するとバンブロックは、思わずサーラと名乗った女性の手をとった。するとサーラは優しく微笑み、バンブロックを別室へと誘う。

 そこで護衛オーク2人はいなくなった。


 別室は簡素なベットがあるだけの部屋だった。だがベットがあるだけでもバンブロックにとっては、久しぶりに見るものである。

 

 サーラはバンブロックの手を引き、ベットへと誘う。


 そこでバンブロックが口を開く。


「サーラと言ったな。俺は元兵士でバンブロック。まだ先になるが、奴隷解放を考えている」

 

 急にそんなことを言われて、驚きを隠せないサーラ。


「えっと……な、なんの話をしてるの?」


「ああ、急な話で悪いな。君もグリーンスキンに捕らえられてここに来たんだろ。俺もそうだ。奴隷剣闘士をやらされている。それで今は仲間を集めているところだ。いずれ奴隷達が一斉に、グリーンスキンに反抗する日がくる。だからサーラ、君にも協力して欲しい」


 さらに混乱するサーラ。


「えっと、いきなり何。そんな事を言われても、良く分からないわよ……」


「ああ、それもそうだな。なら、そう言う事を考えている人間がいるってのを、忘れないで欲しい。それと人間がいたら同じ事を伝えて欲しいんだ。ただし絶対に秘密だ」


「え、ええ、わかったわ。でも人間は少ないわよ」


「ああ、そうらしいな。君の知っている限りでどのくらいいる?」


「ええっと、そうね、5人くらいね。もちろん皆んな奴隷よ。でも人間はすぐ死んでしまうのよ。だからその5人が今も生きているかは、私は知らないわ」


「それで良い。それからこの街の事を色々と教えて欲しい。とにかく情報を集めたいんだ」


 結局バンブロックは、時間ギリギリまで会話した。サラが知り得る情報を色々と聞き出した。

 そして、そろそろ時間だから帰ろうかと言う時だ。バンブロックがいる部屋の扉が、いきなり開けられた。

 ノックもせずに扉を開けたのは、ニヤニヤしている護衛オーク2人である。


 ただし開けた扉の目の前には、帰ろうとしているバンブロックが立っていた為、護衛オーク2人は残念そうな表情で文句を言っていた。

 素っ裸のバンブロックが、慌てふためく姿を見たかったのである。


 そのままバンブロックは娼館を後にする。


 その後、バンブロックを見るププの目が冷たかったとか。


 

 □ □ □



 その翌日、久しぶりにバンブロックの試合は無かった。それでバンブロックは、これできっとバドの街へ戻るんだと思っていた。

 一方ウマッハはこのギドの街でのバンブロックの人気を見たら、このまま帰るのはもったいないと考える。

 そこでマッチメーカーに、バンブロックの試合を託したのである。

 その結果、バンブロックのランクBとしての初戦となる試合が、2日後に決まった。


 対戦相手はゴブリンで、剣術に精通している剣士である。しかも水系魔術が使える。

 ゴブリンなので体格は小さく、攻撃の威力も小さい。

 しかし俊敏性が秀でていて、攻撃の早さがずば抜けている。俊敏力特化型である。

 なにより恐ろしいのは、剣術と魔術の二つを使いこなすところだ。

 特に剣術は定評があり、何処かの流派に所属していたのかもしれない。恐らくかなりの腕前なのだろう。

 さすがランクBの剣闘士である。

 そしてこのゴブリンの剣闘士名は、人間語で言うと“水流”であった。


 バンブロックにとって良かったのは、その試合は2日後だったこと。十分な体力回復が出来る。

 

 バンブロックも久しぶりにゆっくり出来ると思ったのだが、ウマッハに連れ出された。

 それは奴隷市場であった。


 バドの街の養成所を出る時に、空の檻を積んだ獣車も一緒だったのをバンブロックは思い出す。そんなのはすっかり、忘れていたのである。

 どうせまた奴隷剣闘士をバンブロックに、選ばせるのだろう。

 

 奴隷市場は奴隷商とは違い、仮設テントや獣車を横付けした露天などが集まる、奴隷の専門販売の場所であった。

 そこには店舗を持たない奴隷商も多くいて、各地から仕入れた雑多な奴隷を扱っていた。ここでの奴隷市場としての特徴は、珍しい種族や魔物も扱っているところである。

 そう、魔物も販売しているのである。

 闘技場で魔物を出場させるように、ここでもその需要から、各地で捕獲した各種の魔物も販売していた。

 

 ウマッハと護衛オークが5人、そしてバンブロックとププが奴隷市場の通りを歩いて行く。


 バンブロックとしては人間がいないかと、キョロキョロと見回している。

 ウマッハは、剣闘士として強そうな者を探している。

 そしてププは、同じ種族のハーフリングを探す。

 それぞれがそれぞれの思惑で、この奴隷市場を歩いていた。








次回投稿は火曜日の予定です。



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