63話 新人トーナメント前哨戦
新人トーナメントの前哨戦。
バンブロックは、入場扉の前で待機していた。バンブロック以外にも、多数の剣闘士が待機している。
ざっと見ても50人くらいはいるだろうか。
さらに反対側の入場扉にも参加者がいるはずだから、総勢100人を超える人数での戦いになる。
実はこの待機の段階から、試合は始まっていた。
共闘を組んでいる者がいるのである。
早い話、何人かでグループを作って戦おうというのだ。それで強そうな剣闘士に声を掛けている者が、何人もいた。
問題はここにいる者の殆んどが、獣人種や半獣人もしくはリザードマンだ。人間であるバンブロックに、声を掛ける者など誰もいない。
顔を隠していても、剣闘士同士ならば分かってしまう。
僅かに残った少数種族も、同じ種族同士でグループを作っている。
結局は人間種のバンブロックだけが、最後まで一人であった。
ーーマズイな、これだと俺は真っ先に狙われる
一応バンブロックからも色々と声を掛けたのだが、全く聞く耳を持ってくれなかった。人間種は、ここでも嫌われているのであった。
そしてバンブロックは1人のまま、入場扉は開かれた。
いつになく周囲を警戒するバンブロック。
扉が開くと剣闘士達は中央に向かうのではなく、それぞれが闘技場内に散らばって行く。反対側の入場扉から入って来た剣闘士も、同じく散らばって行く。もちろん、グループごとにである。
バンブロックが何処に行こうか迷っていると、反対側の入場扉から入って来た剣闘士の1人が、バンブロックに向かって早足で近付いて来た。
それは元ハルトマンの部下であり、人間のドクである。
顔を覆う金属製フルヘルムを被っているが、バンブロックには身体つきで直ぐにドクと分かった。
人間であるドクも、グループに入れなかった1人であった。
実はドクもこのコロシアムでは初心者であり、それで新人トーナメントへの出場が可能だったのである。
ドクも一目でバンブロックが分かったようで、申し合わせたように両者は闘技場中央へと歩み寄って行った。
自然とバンブロックとドクは近付き、闘技場中央でお互いの拳を合わせた。
「ドクって言ったよな。人間種は俺達だけだ。よろしく頼む」
そうバンブロックが挨拶するとドク。
「ああ、こちらこそよろしく頼む。ハルトマン隊長との戦い、見せてもらった。何と言ったら良いのか……とにかくしばらくは共闘って事で良いよな」
バンブロックは周囲を警戒しながら返答する。
「そうだな、まずはここで生き残ろうか」
そして試合開始のドラムが打ち鳴らされた。
近くにいた5人の獣人グループが、真っ先にバンブロック達に襲い掛かってた。
バンブロックが思った通りだった。
少人数のグループは、真っ先に狙われる。
相手は5人でバンブロック達は2人。
これはキツイ。
しかも相手は身体能力の高い獣人である。
あっという間に取り囲まれる2人。
だがここにいる100人全員が敵である。
獣人5人がバンブロック達を囲んだ瞬間、別のグループが背中を見せた獣人グループを襲った。
その隙にバンブロック達は移動する。
するとまた別のグループが、バンブロック達に襲い掛かる。
バンブロックとドクは、お互いの背中を守る様に戦い始めた。
それ程強い剣闘士には出会わないが、厄介なのは周りが全員敵と言うこと。どこから攻撃されるか、分からないのである。
バンブロックとドクは、とにかく防戦一方で堪えた。グループ同士が潰し合うのを、ひたすら待っているのである。
ーーこれは1人じゃ無理だったな。ドクがいて助かった。
バンブロックとドクは、常に背中合わせで戦っている。そして相手を倒すよりも、生き残るのを優先していた。
ドクはバンブロックが思ってた以上に戦い慣れしていて、さすが剣聖の率いる百人隊と言う精鋭部隊にいただけの事はある。
それにバンブロックもかなりの腕がある。その2人は間違い無く新人の域を超えていた。
2人は向かって来る相手を全て退けていると、次第に誰も手を出さなくなった。
その頃になるとだいぶ人数も減ってきており、ざっと数えて30人ちょっとぐらいか。
しかしまだ試合終了の合図はない。
この人数になってくると、単に運だけでここまで生き残ってきた者はいない。
グループを組んでいた者達も数を減らされ、今じゃ3人か4人のグループになっていた。
そう言う奴らのグループを見て、バンブロックは思う。仲間割れして、もっと人数は減るだろうと。
案の定、グループ内で仲間割れが起こり始めた。
その隙を突いて、別のグループが襲い掛かる。まるでこの社会の縮図を見ているみたいだ。
気が付けば、闘技場で立っているのは16人。他は死んだか、担架で外に運び出されている。
ここで試合終了のドラムが鳴った。
つまり今ここにいる16人で、新人トーナメントが行われるという事。
ここでドクが、バンブロックに手を伸ばして言った。
「次会う時はトーナメント試合だな。出来れば決勝まで会いたくないけどな。まあ、よろしく」
バンブロックは、握手を交わしながら答える。
「ああ、よろしく頼む。それから死なないでくれよ。お互い試合が終わっても生きていようぜ。それでこの先、いつか生きて一緒に国へ帰ろう」
するとドクがハッとした顔をする。バンブロックが何を言わんとしているか、理解してのである。
「国へ帰る、そう言うことか……分かった。お互いにチャンスを待とう」
こうして新人トーナメント戦の前哨戦は終了した。
翌日からこの残った16人での、トーナメント形式での試合が開催される。
このトーナメントは客からの人気が高く、賭け金も相当な額にのぼる。
ちなみに現時点でのバンブロックの人気は、ハルトマンとの乱闘で上昇していて、オッズも上昇中である。
それを知ったウマッハは今のうちにと、バンブロック優勝に相当な賭け金を注ぎ込んだらしい。今の段階ならば、バンブロックの力を知らない客が多い。
もしトーナメント試合が始まると、バンブロックの強さを知られてしまい、賭け率が悪くなる。それで賭け率がまだ良い今の段階で、バンブロック優勝に賭けたのであった。
もう後戻り出来なくなった訳だ。
ウマッハはバンブロックの勝利の為に、あらゆる手を使って奔走するのだった。
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