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気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


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57話 グリーンスキンの王都






 マッチメーカーが対戦相手を見つけるようになってから、バンブロックはコンスタントに試合をこなしていった。それも全て勝利している。

 バンブロックは確実に、強くなっているのである。


 それにバンブロックが面倒を見ている剣闘士達も、たまに負けて負傷したりもするが、何とか復帰して勝利を積み上げている。


 ただしここ最近になって、バンブロックの試合頻度が落ちてきた。

 剣闘士デビューからここまで、無敗できているのだ。マッチメーカーを間に入れても、相手から対戦するのを躊躇ちゅうちょされてしまうのである。


 そうなってくると、試合をするために遠征をする事になる。バンブロックを知らない土地へ向かうのである。


 そしてある朝バンブロックは、その事を突如ププに言われた。


「今から遠征に行くそうです。直ぐに来てください」


「この間行ったばかりだろ。なのにまた遠征か?」


「はい、遠征です。急いで下さい」


「お、おお、分かった」


 バンブロックは急いで、広場にある門へと向かう。


 到着すると直ぐに、バンブロックは獣車の檻に押し込まれる。隣の檻には“狂刃きょうじん”ハルトマンがいた。

 実はハルトマンも強すぎて、対戦相手が見つからないのである。それに加えてここまでの試合では、必ず対戦相手を死なせてしまうので、余計に避けられていた。

 ハルトマンほど強い剣闘士は、ランクEでは珍しい存在だった。


 しかしバンブロックは、キョロキョロと他の獣車を見回していた。

 バンブロックの中ではもう1人、対戦相手が見つからない人物がいたからだ。

 それはハイエルフのアルティアである。

 彼女の強力な魔術は、かなり手強い。あれだけ魔術を使われると、対戦相手も尻込みしてしまう。

 だがアルティアの魔術は、戦い以外でも使えた。それは畑の植物の成長に、大きく貢献出来るからだ。

 それで剣闘士もやるが、最近では畑に行かされる事が多くなったのである。


 そんな理由もあり、遠征はバンブロックとハルトマンの2人であった。ただし通訳としてププもいる。それに雑用奴隷も何人かいた。


 今回も大層な車列が続く、大掛かりな規模での遠征である。

 近ごろもうかっているウマッハは、別の街でまた剣闘士奴隷を買うのであろう。その為の空の檻を積んだ獣車も見られた。


 そして出発してしばらくするとバンブロックは、トルバの街へ行くのとは違う街道なのに気が付く。


ーー今回は別の街へ行くのか


 出発して2日目になると、道幅の広い街道へと入って行く。獣車の行き来も多く、何度も隊商とすれ違う。


ーー主要街道か?


 それに街道には宿場町があり、そこには隊商宿と呼ばれる隊商が泊まれる様な、大型の宿まであった。色々と店も多くあり、まるで人間の宿場町を思わせた。

 この街道は間違い無く、大きな街同士をつなぐ道であった。


 そして数日かけて街道を行った先にあった場所、そこは想像を絶するほど巨大な街だった。


 バンブロックから思わず言葉が漏れる。


「俺達の王都よりデカいんじゃないのか……」


 そこはギグと呼ばれる街であり、グリーンスキンの王都でもあった。


 見えて来た街はどこまでも続く城壁で囲まれていて、その周囲には広大な畑が広がっていた。


 獣車やグリーンスキンの往来が激しく、一番近くにある城門は長蛇の列が出来ている。さらにその奥にある城門も、やはり長蛇の列が連なっている。

 それに奴隷を連れた者が、圧倒的に多い。金持ちが多いのか、何人もの奴隷と護衛兵を連れていた。

 これを見るにグリーンスキンの社会は、奴隷で成り立っているのは明らかであった。奴隷ありきの社会である。


 結局、城門を通るのに1時間半掛かってしまった。時間が掛かった割には検問は雑であり、バンブロックは呆れるが、グリーンスキンらしいと言えば納得出来た。

 

 城内へ入ると、今度は建物に驚かされる。いびつな建物が建ち並んでいたからである。

 3階建ての建物の横に4階建ての建物が建っているのだが、何故か3階建ての方が高い。

 さらには建物が、見るからに傾斜していたりもする。驚いた事に、その傾斜した建物に住んでいる者もいる。

 バンブロックにとっては、初めて見るギグの街に釘付けだった。


 街中を見回すと、グリーンスキンだけではなく、自由民の獣人を多く見る。それ以外にも少数だが、見慣れない種族の自由民がいた。

 結構な数の自由民も住んでいるらしい。


 街の中央へ行くと、徐々に金持ちの街らしくなってきた。

 色の付いた建物や、レンガ造りの建物が目立つ。大きな庭付きの屋敷も見える。


 そして徐々に巨大な建物が見えて来た。


 コロシアムである。


 コロシアムは30数メートルの高さがあり、周囲は600メートルはある建物であった。

 その周囲には何百台もの獣車が駐車出来るスペースがあり、近隣には多くの飲食店や宿泊所も立ち並んでいる。


 バンブロック達は、そのコロシアムの近くにある宿泊所に泊まる事になる。


 今日は試合はないのだが、まだ陽暮れまでに時間があると言うので、バンブロックとハルトマンの2人は、コロシアムの鍛錬場へと汗を流しに行った。


 かせを着けられ数人の護衛オークの引率で、コロシアムまでの短い距離を歩いて移動する2人。

 試合ではないので、顔を覆うヘルムは無し。

 すると街を行き来する人々が、奇異な目を向けてくる。

 やはりここでも人間は珍しいのである。そして嫌われていた。


 バンブロックとハルトマンが人間だと分かると、野次や罵声を浴びせてくる者が出てくる。

 護衛オークがいるため、さすがに物を投げたりはしてこない。

 仮に投げてきた場合、護衛オークは最善を尽くして奴隷を守る。商品に傷をつけさせない為である。あくまでも奴隷剣闘士は、商品なのであった。

 

 コロシアムに到着すると、バンブロックは驚いて目を見張る。

 予想以上に多い人の数である。こんなに多くの者が集まっているのを見るのは、バンブロックにとって初めてだった。

 それもそのはずで、このコロシアムには4万人もの観客を収容出来るので、試合の合間には食事をとる為ににコロシアムから出て来る。

 そうした人達がコロシアムの周りを、うろついているのである。

 お土産を売る店もあり、かなりのにぎわいだ。


 そんな光景を見ながら、バンブロック達はコロシアムの中へ入って行った。

 中も恐ろしく広い。

 

 その日も試合は行われているが、今日のバンブロック達は鍛錬をしに来たので、試合を見る事は出来ずに直ぐに鍛錬場へ向かった。


 広い鍛錬場では、多くの剣闘士達が鍛錬を行っている最中で、あらゆる種族が木剣を振るっていた。


 バンブロックはその中に、人族の耳を持ち尻尾の無い人物を見つけた。人間の男である。


 声を掛けたい衝動に駆られるが、衛兵オークが目を光らせていて、トレーナー腕章を付けた者しか会話は許されていない。

 幸いにもバンブロックは、トレーナー腕章を着けていた。ウマッハ養成所では、トレーナーとしての権限も与えられていたからである。

 

 しかし他の養成所の剣闘士に、勝手に話し掛ける訳にはいかない。

 バンブロックがどうしようか悩んでいると、その人間もトレーナー腕章を着けているのが見えた。2人の半獣人に練習させている様だ。

 その人間はトレーナー腕章を着けるほどの腕前か、あるいは引退した元剣闘士であろう。


 バンブロックが余りにもジロジロ見ていた為か、相手もバンブロックに気が付き目が合った。

 すると最初は驚いた顔をしていたが、2人の半獣人の練習を見ながらも、それとなくバンブロックに近付いて来た。

 そうなるとバンブロックも、ハルトマンと軽く打ち合いながら近付いて行く。


 手が届きそうな程の距離に近付いた所で、その男は衛兵オークに感付かれ無い様にと、顔を外方そっぽに向けたまま話し掛けてきた。

 







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