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気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


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55話 見えない剣速







 午後一番で、ハルトマンの試合が行われた。


 ここでハルトマンの装備に変化があった。

 鎧無しは変わらないが、金属製のフルヘルムだったのが、革製のハーフヘルムへ変わっていた。素早さが売りのハルトマンなので、軽いヘルムへと変更したのだろう。

 しかし、その革製のフルヘルムのデザインが、余りにも異様であった。

 口から下の部分は開口したデザインなのだが、問題は悪魔の顔を模したハーフヘルムという所だ。

 悪魔は人間だけでなく、グリーンスキンからも嫌われている種族。それを敢えて模したとなると、それはヒール役の剣闘士でいくという意味合いになる。

 対戦相手はきっと、殺しに掛かって来るだろう。

 バンブロックもそれに気が付いたが、良く考えたら“狂刃”の二つ名を持つ、剣聖ハルトマンである。

 悪魔が似合っているとも言える。

 それを考えると、少しニヤついてしまうバンブロックだった。


 そしてハルトマンが手にする武器は、ダガーとサーベルの二刀流である。

 ダガーは主に防御で使い、サーベルで斬り捨てると言う戦法だ。

 これはハルトマンが、百人隊長だった頃の戦い方に近かった。

 

 ハルトマンは衛兵オークに囲まれて、入場扉からゆっくりと出て来た。

 対戦相手の半獣人は足早に進み、先に闘技場の中央に到着。

 

 しばらくしてから、のっそりとハルトマンが中央の開始位置に立った。

 対戦相手の半獣人は、ハルトマンの所作に苛立いらだっている様子である。


 そして衛兵オークが立ち去る。

 あとは試合開始のドラムが、鳴るのを待つだけである。

 しかし対戦相手の半獣人が、ショートソードを構えて突進を始める。


 遅れて試合開始のドラムが鳴るも、既にその時には半獣人がハルトマンの目の前だった。

 

 半獣人がチャンスと思ったのか、持っていた盾を投げ捨て、ショートソードを大きく振り被る。


 その時でもハルトマンは、いつもの様に両手をダラリと下げたままだ動かない。


 そこへ半獣人のショートソードが振り下ろされた。


 観客の誰もが、ハルトマンが斬られる姿を想像した。


 しかし結果は違った。


 半獣人はそのままハルトマンの横をすり抜ける。


 そしてくるりと反転し、ハルトマンの様子をうかがう。


『〈まだ生きているのか?〉』


 ハルトマンは背中を見せたまま、先程と同じ体勢で負傷したようには見えない。


『〈ならばもう一度!〉』


 そう思って半獣人が、再びショートソードを振り被る。


 そこでやっと半獣人は気が付いた。

 ショートソードを持った手が無いことに。


『うあああっ』


 半獣人の腕は、ハルトマンの横に落ちていた。


 そこでハルトマンは、ゆっくりと振り返る。


 ハルトマンの目の前には、両膝を突いて苦しがる半獣人がいた。


 そこで試合終了のドラムが鳴った。


 その直後、半獣人の首が飛んだ。


 観客は一瞬静まり返るが、直ぐに大歓声に変わった。

 観客の殆んどは、何が起こったのか見えていない。余りにもハルトマンの剣捌けんさばきが、早すぎるからである。

 それでも観客は、ハルトマンが半獣人を斬り捨てたのは分かった。


 ハルトマンの勝利である。

 

 しかしドラムが鳴った後に斬ったのは、余りよろしくない。舞台裏ではその件で少し揉めたらしいが、特に大きな問題にはならなかった。

 

 こうしてハルトマンも、順調に勝ち進んで行った。



 □ □ □



 バンブロックは控え室で、緊張した面持ちで自分の番を待っていた。

 しかし落ち着きがなく、常に動いていた。

 対戦相手が女性というのが、気になって仕方無いのである。魔物の様な形状なら良かったのだが、相手は人間に近い半獣人である。

 バンブロックとしては、殺さずに勝利したい。だがランクCともなると、今のバンブロックにとっては、そんな余裕など無いと思われた。


 そこへ控え室の扉が開く音。

 男どもの視線が入り口に集まる。

 その視線は移動していく。


 バンブロックは何事かと、視線の先を確認する。


 ププだった。


 男ばかりのこの控え室では、背が低くて見つけ難いのである。


 トコトコとバンブロックの前に来ると、ピタリと立ち止まる。相変わらず男専用控え室なのに、全く動じないププだった。


「対戦相手の追加情報が入りました」


 ププは情報を持って来たのだ。


「お、おう、教えてくれ……」


 逆にバンブロックの方が、周りを気にしていてぎこち無い。


「対戦相手の獣人女性ですが、武器のフレイルが要注意です。鎖が伸びるそうです」


 フレイルとは持ち手の柄に鎖が繋がれており、鎖の先には鉄球などが取り付けてある武器だ。通常は鎖の長さは固定されているのだが、情報によると長さが変わるらしい。

 それは間合いが取りにくく、距離感がつかめない、厄介な武器であった。


 ププはそれだけ言うと、さっさと戻って行った。

 後にはニヤニヤと変な目を向ける、男どもが残るだけだった。

 

 そしてバンブロックを連れに、衛兵オークが来た。バンブロックはそのまま、入場扉の前に連れて来られた。


 武装はいつもと同じで、輝くグラディウスにカイトシールド。そしてドクロヘルムを被り、鎧は無しだ。


 バンブロックの目の前の扉が開く。

 いよいよ女性剣闘士との戦いとなる。

 バンブロックは闘技場へと歩を進めた。


 反対側の入場扉から、対戦相手が出て来るのが見える。

 そこでバンブロックの頭には「?」と言う文字が浮かぶ。

 対戦相手がアライグマなのだ。バンブロックとしては、初めて見る種類の獣人であった。


ーー動物系の獣人か……


 徐々に近付いて来るのだが、何となく違和感を感じるバンブロック。

 動物系の獣人なんて、特に珍しくもないのだが、それでも違和感が拭えない。

 武器は情報通りフレイルだ。

 胴体部分には革鎧を装着し、左手には丸盾を持つ。頭には何も着けていない。そして尻尾が縞模様しまもようだった。

 装備を見ても違和感などないはずなのだが、やはりどこか変だと思うバンブロック。


 闘技場中央で、数メートルの間を置いて2人が対峙する。


 バンブロックはそこで、やっと違和感の正体を知った。


 足の長さや手の長さが人型では無く、動物そのものなのである。言い換えると、アライグマがそのまま立ち上がった感じ、人族に比べると手足が短い。


 しかも身体も小さい。

 身長はププやポポと変わらない。

 

 それにそんな外見だと、バンブロックには性別の判別は不可能だった。この外見なら女性を意識して戦えなくなることも無いと思うバンブロックだが、今度は愛玩動物の様な外観に惑わされる事になる。


ーーこいつと戦うのか……


 そして衛兵オークが居なくなると、試合開始のドラムが鳴る。


 ドラムの音に反応して、バンブロックは反射的に武器を構えるのだった。







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