表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/65

54話 ファイトマネーの使い道






 ププは話を続ける。


「ランクCになると、質のよい武器や鎧を着た剣闘士が多くなるらしいのです。特にランキング上位になると、それが顕著けんちょになるようです。ランクBともなると、もっとです。そうしないと生き残れないんです。だから……その、バンブロックさん。無理をしないで欲しいんです……」


 最後の方は小声になった。


「そうか、分かった。教えてくれてありがとう。でもな、俺は負けないから心配するな。それで必ず皆を自由にしてやる」


 するとププが首を傾げる。


「自由ですか?」


「おっと、これはまだ内緒にして――オーク兵が来た。話は以上だ」


 オーク兵に怪しまれたのである。

 バンブロックは木剣を握ると、何事も無かったかの様に鍛錬に入った。

 そしてオーク兵が去った後、ププから受け取ったファイトマネーの布袋を確認してみる。

 ランクCとしてのファイトマネーは、既に何回か受け取っている。そうは言っても、確認はしたくなる。

 周りに分からないように、こっそり中身をのぞき見る。


 その時だった。


「ロック、何してんだ。知らんけどっ」


 そう言って誰ががバンブロックの肩を叩いた。


「うはっ!」


 ビックリして声を上げるバンブロック。

 その拍子に、布袋の中身を撒き散らす。


 肩を叩いたのはモナであった。


「お? もしかしてファイトマネー貰ったのか」


 バンブロックは、慌てて硬貨を拾い集める。


「1枚、2枚……マジか。500ガジャって、いつもより多いぞ」


 500ガジャ、エールが10杯分である。


 モナはニヤニヤしながら言った。


「ランクCの中でもな、ランキングによってファイトマネーは違うんだよ。前回より多かったって事は、ランキングが上がったんじゃないのか、知らんけど」


「そうなのか。凄いな、エールが飲み放題じゃねえか」


「あ、そうだ。明日、行商人が来るらしいぞ。金も入ったし、ちょうど良かったじゃないか」


「明日か、それは楽しみだ。さあて、何を買おうかなあ」


「そうだロック、良いことを教えておくぞ。行商人はな、情報も売っているんだよ」


 バンブロックは驚いた表情で返す。


「まさか情報が金で買えるのか?」


「そうなんだよ。値段は交渉次第だけどな。日用品を売ってる行商人がいるだろ。あのオーク店主が売ってる。バレたら大変な事になるから気を付けてな、知らんけど」


「そうか……モナ、情報を買う時はお前に頼んでも良いか?」


「ああ、北方語の問題だな。了解した。その時は声を掛けてくれ」





 そして翌日……


 昼頃になると、広場に屋台などが出来てきた。

 飲物屋に串焼き屋、そして果物屋とパン屋等の飲食屋台。さらには煙草屋に娼館テント。そして日用品等を売っている道具屋である。


 昼食を終えると、奴隷達は真っ先に屋台はと向かう。

 昼食後なので飲食物は売れなさそうな気がするが、そんな事はない。普段食べられない物を食べたい、そう思う欲求の方が上であった。

 特にエールやそのツマミとなる、炒り豆やモロコスの串焼きが人気である。


 奴隷達が屋台に群がる中、バンブロックは有り金とにらめっこだ。

 それは屋台の前では無く、テントの前でだった。

 娼館テントである。


 奴隷達が見るのはタダだからと、娼館テントに群がっている。

 値段は2000〜3000ガジャと幅広い。

 今のバンブロックの残財産をはたいても、無理な金額だ。それでもバンブロックは、何度も有り金を数える。


「あと3試合勝てばイケるのか……」


 そんな事をつぶやいていると、またも誰かが背中を叩いた。


「誰だよ。今、忙しいんだけど」


 そう言って振り返るバンブロック。


 そこには赤羅様あからさま軽蔑けいべつした顔のププがいた。


 バンブロックは、心臓が口から飛び出そうなくらい驚く。


「ぷ、ぷ、ププじゃね〜か……」


「ここで何をしているんでしょうか?」


 バンブロックは不審者の様な挙動をとりつつ、なんとか返答する。


「こ、これは、そのあれだ。何を買おうか悩んでいただけで……」 


 ププが怖い顔をして言った。


「娼館テントの前でですか?」


 バンブロックは震え出す。


「いや、それはたまたま……」


 そこへモナが来た。


「おう、ロック。こんな所で何をしてるんだ……娼館テントの前? まさかロック……」


 ここまでくるとバンブロックは必死だ。


「違う、勘違いするな。お、俺は金を数えてただけでな……」


 すると今度はアルティアとポポが来た。


「皆様、ここで何をしているのございますか」

「何かあったのでしゅか」


 女性陣が集合だ。

 バンブロックにとって、最悪の状況である。

 もはや逃げ道などない。完全包囲網に入ってしまっていた。


 そこでバンブロック。


「おお、皆よく集まってくれたな。か、金が入ったから皆に何かおごろうと思ってな、はは、はははは」


 と、苦し紛れに言った。

 以外にもこの提案が、こうそうした。


 女性陣は皆、大喜びだ。

 それを遠くから見ていた男達は「ああはなりたくないな」と、口々に言っていた。


 結果、バンブロックは全ての金を失った。


 女性陣がワイワイやっている中、デン副長がバンブロックの隣に来て言った。


「隊長、気持ちは分かります。これ、自分からのおごりです。元気出して下さい。金はまた貯めれば良いだけです。娼館は……残念ですが今回はあきらめましょう」


 デン副長からジョッキを受け取ったバンブロックは、薄っすら笑顔を浮かべてエールをあおった。

 その背中は泣いていた。


 結局、金が無くなったバンブロックは、情報など得られはしなかった。

 本当は人間領とこのバドの街との、位置情報が知りたかったのだ。ただしその情報を知るには、娼館テントで使う位の金が必要だったのだが、そんなのは知らないバンブロックだった。


 それから数日後、マッチメーカーによるバンブロックの剣闘試合が決まった。


 対戦相手は獣人で、フレイル使いの女性剣闘士であった。

 初の女性剣闘士との対戦となり、バンブロックは悩む。果たして自分は、女性を斬ることが出来るのかと。

 この時フレイルと言う珍しい武器には、バンブロックの関心は向かなかった。

 こうしてバンブロックは、初めて女性剣闘士との試合が決まった。


 そして試合当日を迎えた。


 この日はポポやハルトマンの剣闘試合も組まれており、バンブロックは一緒にコロシアムへと向かった。

 ププも通訳兼使用人として、獣車に乗り込んだ。


 午前中にポポの試合が行われ、なんら問題なく勝利していた。

 

 そして昼食を挟んで午後からハルトマンの試合と、少し間をおいてバンブロックの試合がある。


 いつもの様に、奴隷専用の食堂での昼食である。

 ただしハルトマンは、午後の早い時間から試合があるため、今は控え室にこももっている。

 それでププとポポ、そしてバンブロックの3人でテーブルについた。


 テーブルで食事を待っているのだが、他の奴隷達がバンブロック達をチラチラと見ていた。

 それに気が付いたバンブロックが、小声で言った。


「何か俺達さ、見られているんだけど」

 

 確かに言われてみれば他のテーブルの奴隷達が、時々バンブロック達に視線を向けていた。

 

 するとププ。


「気にしたら負けです。放って置きましょう」


 ちょうどそのタイミングで食事が運ばれて来たので、その話は有耶無耶うやむやになった。


 何故見られていたのかは、後になって知る事になる。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ