お風呂
お茶をがぶ飲みしながら、額の汗を拭った。汗で体がベタついて気持ち悪い。山の麓から別荘まで結構歩いたからな。
今すぐに汗を流したい気分だった。風呂場はどこにあるんだろうか。
さっちゃんに聞いてみよう。
俺は部屋を出ると、階段を降りる。そこで俺は重大なことに気づく。さっちゃんの部屋がどこにあるのかを知らないことに。
階段下を彷徨きながら、どうしたものかと思っていると、
「あ、光治様。どうかなさいました?」
さっちゃんたちと出くわした。
「風呂場がどこなのかをさっちゃんに聞いてみようと思って」
「私たちもちょうど風呂に入ろうとしていたところなんです。ご一緒しましょう」
さっちゃんは満面の笑みで告げる。あまりの可愛さにくらっときた。
「ああ、ぜひ」
俺たちは風呂場へと赴く。……一列で。
「あ、あの、なぜ、一列なんですか?」
『某ゲームのパーティの隊列に憧れて』
俺たちは一言一句違えずにシンクロしていた。母親は異なるが、さすがは兄弟姉妹といったところだ。
「そうですか。もうすぐ風呂場に着きます」
それから間もなくして風呂場に到着した。
「男湯はどこだ?」
俺はさっちゃんに問いかける。すると、さっちゃんはポカンとした。ん?
「ありませんよ。ここは温泉じゃないんですよ。別荘なんですから」
「……そう……だな」
やべえ、超絶に恥ずかしい。さっちゃんの顔が見れない。
「……ぷぷっ……光治ってば、さっちゃんがあまりにも可愛くて思考が回らなくなったりでもしたの?」
笑いをかみ殺そうとしているんだろうが、かみ殺せてねえぞ陽菜乃。
「そうかもしれねえな。ここで、提案なんだがさっちゃんのファンクラブを俺たちで作らないか?」
『賛成!』
よし、提案が通った。
「え? 私のファンクラブ? そんな、作るなら私を会長に!」
さっちゃんは両手を振り回しながら、嬉しそうに叫んだ。
「言葉と仕草がかみ合ってないんだが。それにさっちゃんが会長になったら駄目だと思う」
「え? どうしてですか!」
涙目になりながら、さっちゃんは叫ぶ。うっ、罪悪感が芽生えてきやがった。
「さっちゃんのファンクラブだからだ」
「……そうですよね。では、気を取り直して風呂に入りましょうか」
渋々といった感じでさっちゃんは言った。そんなに会長をやりたかったのか。
ん? 待てよ?
「男湯がないということは女湯も当然ないわけで、すると混浴つまり男女共に風呂に入るってことか?」
「そういうことになりますね」
『なんだって!』
俺たちに衝撃が走った。
さっちゃんの裸を見れるって事か。いや、しかしそれは禁断の領域というもの。神は俺たちに最大の試練を与えなすった。
「男性陣はここで待っていてください。私たち女性陣が先に入ります」
「どうしてだい? さっちゃん」
風下は首を傾げながら、さっちゃんに疑問を投げかける。
「それは裸を見られてしまうからです。バスタオルを体に巻きますので、それが終わるまでここで待っていてください。終わったら呼びますので」
さっちゃんはそう言って、陽菜乃とイッナーナを伴い、脱衣所へ入っていく。
俺たちはぼけ~としながら、待っていると、さっちゃんがバスタオル姿で脱衣所から出てきた。
「お待たせしました。どうぞお入りください」
俺たち男性陣はさっちゃんの後に続いて脱衣所へと入っていく。
「バスタオルはここに置いときますので、これを身体に巻いてから入ってください」
さっちゃんは風呂場の扉を開けて中に入っていった。
俺たちもさっさと服を脱ぐと、バスタオルを腰に巻いて浴室に足を踏み入れる。中は広々としていて浴槽も大きい。俺の部屋よりも広いかもしれない。
ざっと体を洗い流し、浴槽に入ると、陽菜乃の隣にしゃがみこむ。
「さっちゃんのサービスショットどんなだった?」
「聞こえてたの?」
陽菜乃は体を俺の方に向けて聞いてくる。
「ああ、聞こえてた」
「胸の谷間を見せてくれたよ」
「マジでか」
さっちゃんの胸の谷間が見れるなんて羨ましい。
「小さかったけどね」
「そうなのか」
さっちゃんは胸が小さいのか。となると、さっちゃんはAカップなのか。それともBカップだろうか。
「む!」
考え込んでいると、陽菜乃が驚きの声を上げた。
「どうした? 小便でもしたくなったか?」
「違うよ! 仮にも女性である私に対して、その言葉はどうかと思う。風下がさっちゃんの肩に手を回してるんだよ!」
「何だと!」
慌ててそちらに顔を向ける。陽菜乃の言うとおり、風下はさっちゃんの肩に手を回していた。さっちゃんは困ったような表情をしていた。くっ、困った表情も素敵だぜさっちゃん、ってそうじゃねえだろ!
「これは由々しき事態だ」
「そうだね」
陽菜乃の方を見る。獲物を刈る狩人の目をしていた。俺も似たような目をしていただろう。イッナーナと田中も狩人の目をしていた。
タイミングを見計らって合図を出す。
俺たちは同時に飛び掛り、さっちゃんから風下を引き剥がした。
「今後さっちゃんの体を勝手に触らないように。会長命令だ」
「いつの間に君が会長になったんだい?」
「提案者は俺だから、会長になる権利はあるはずだ」
俺は風下を睨みつける。
「ふ~ん。それじゃ、さっちゃんの体に触りたい時は君の許可を貰えば良いのかい?」
「ああ、そうだ」
俺は風下の言葉に頷いた。




