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金瞳は神の末裔の証  作者: 詩・似・愛
第一章 幼い金瞳には試練が多い。

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1 白い箱庭は子供の楽園。

 庭の木を見上げて、ニコニコと笑う璃凪に、家の玄関のドアから顔を出した璃凪の母親が声をかけた。

「りなちゃん、そろそろ暗くなるから、お家にいらっしゃいね。」

 木の枝の上に腰掛けて、璃凪を見下ろして、色々話しかけていた白い人が、すうっと消えていく。その人は時々璃凪の前に突然現れて、色んなお話をしてくれていた。世界の真ん中には禁足地があって、世界樹がそこに大きく枝を伸ばしている。そんなお話をしてくれていたけれど、言葉が難しくて、まだよく理解ができないでいた。

 わからないことを聞こうとしていた矢先に、母親が声をかけてきたのだ。邪魔をされて、璃凪は少し不機嫌そうに母親を振り返った。

「ママ。あのね、白い人とね、おはなししてたの。」

「白い人?お名前は知ってる?」

「えっと、どーひょーさん。」

 はっと母親は真顔になる。

「道標様?」

 そして玄関から駆け出して、そっと璃凪を抱き上げ、木に向かって一礼した。

「どうか、この子をお導きください。」

 そして璃凪を抱いて、家の中に入っていった。璃凪は木の方を振り返り、母親の腕の中から、小さく手を振る。枝の上にふわりと白い光が浮かんで、また消えた。


 璃凪の記憶は、温かみのある木の家から始まった。その家は広い庭があって、大きな木と、その周りに花の咲き乱れる花壇があった。庭は高い堅牢な白い石垣で外界から遮られ、その内側は璃凪のための楽園だった。

 傍にいるのは、赤い髪と淡い琥珀色の目をした母親。璃凪は、自分の母親を世界で一番綺麗だと思っている。そして身の回りのお世話をしてくれる、三人の女性が一緒に暮らしている。白い長い服を着ていて、世界樹教神殿に仕える女性神官だと教えられている。

 父親は週に何日か家に戻って過ごしている。そして朝になるとどこかに出かけて、帰ってくるたびに璃凪にお土産を持ってきてくれた。とても優しくて、明るい茶色の髪と、淡い琥珀色の瞳をした、背の高い素敵な男性だ。璃凪は父親のことを、世界で一番カッコいいと思っている。

 そして家の周りには、姿は見えないけれど、いつだって複数人の人の気配がしている。気配からすると、決まった人が複数で交代で家の周りにいるようだった。昼も夜も、雨の日も寒い夜も、その人たちはいつだって家の周りにいる。璃凪は、何故その人たちがそこにいるのか不思議だったけれど、それが日常で、そんなものだと当たり前に受け止めていた。

 幼い璃凪の毎日は、そんな小さな世界が全てだったが、世界は新鮮な驚きと喜び、不思議に溢れていた。璃凪の遊び場は自然あふれる庭で、母親や神官たちに付き添われ、興味を惹かれるとすぐに走っていく。そして不思議を見つけると、母親や神官たちを質問攻めにする。

「ママ、あのね、おにわの石をぎゅっとすると、いろがかわるの。なんでかなあ?」

「お庭の石を、ぎゅっと?」

「こんなふうにするんだよ。」

 璃凪が土を少しスコップで掘って、小さな石を見つける。小さな手で丁寧に土を払って、手のひらに掴むと、ふわりとすみれ色の光が指の隙間から溢れてくる。母親も神官たちも、目を大きく見開いた。そして、璃凪が手を開くと、そこには薄く紫色に色づいた、透き通って輝く、透明度の高い石に変わっていた。

 母親がその石を受け取って、日にかざしてじっくりと見て、それを神官に渡した。神官はそれを試し返し確かめ、次の神官に手渡した。全員がそれをじっくりと確認した後、璃凪に向かって深々と頭を下げる。

「金瞳様、素晴らしい奇跡です。まるで変容の女神のようなお力です。」

 璃凪にとってわからない言葉ばかりだ。

「りな、きんとうっておなまえじゃないよ。きせきってなあに?へんようってなあに?」

「これは誰にもできない御技なのです。これは他の人の前でしてはいけませんよ。悪いものに攫われてしまいます。」

 神官の言葉は、璃凪には不思議だった。璃凪が当たり前にできることが、何か特別なのだろうか?そして秘密にしておかなければいけないことだったのだろうか?悪い人に攫われる、という言葉に璃凪はひどく怯えて涙ぐんだ。

「りな、いけないことをしたの?わるい人にさらわれてしまうの?もうしない。」

 涙ぐんだ璃凪に神官たちは小さく笑って、璃凪の背中をそっと撫でた。

「璃凪様、大丈夫ですよ。私たちがしっかり守ります。だからこれは私たちだけの秘密にしましょうね。さあ、これから世界のお話をしましょう。」

 璃凪は家の中に連れて行かれて、丁寧に手を洗ってもらい、おやつをもらった。美味しそうなお菓子を前に、璃凪はすぐ笑顔になる。そしてふわふわの椅子に座らせられて、子供向けの経典の絵本を渡された。絵本は装丁も絵もとても綺麗で、璃凪はすぐに夢中になる。

 ページを捲りながら、柔らかな声で神官が読み聞かせてくれた。不思議なことに、その文字を見ただけで、スラスラと言葉が頭の中に入っていく。

「世界は創世神と、導きと変容の女神によって作られました。」

 創世神は黒い髪、金の目の背の高い男性で、導きと変容の女神は、赤い髪、すみれ色の瞳の美しい女性に描かれている。創世神が女神の肩を抱いて、二人で手を掲げ、世界を創造している姿が描かれていた。二柱の神は父親と母親に似ていると璃凪は思う。神官がページを捲る。二柱の神に跪く男女、それぞれの神の背後に控える四人ずつの男女、そして、四隅には金と銀の二頭の大きな獣が神に跪いて、神の頭上には、黄色と紫色の二羽の大きな輝く鳥が描かれている。

「大地も海も天の太陽も月も、全て神々が作りました。

「そして、二柱の神が去った後、その後を継いで、世界を守ることを世界樹が、人間を導くことを道標と審判の神と、挑戦と芸術の女神が担っているのです。」

「かみさまがこのせかいをつくったの?もう、いなくなってしまったの?」

「はい、神様がこの世界全てを作りました。そして、神の国へと帰って行きました。でも大丈夫。時々、この世界の様子を見に降臨なさっています。」

 道標と審判の神という言葉には、璃凪に心当たりがある。時々枝の上から話しかけてくる白い光が、どーひょーと名乗っていたのだ。

「りなね、どーひょーさまによく会うよ。」

 神官たちは一瞬沈黙し、その目に畏怖の光が帯びる。幼い璃凪には、それが自分を嫌っていると映った。

「りな、どーひょーさまに会っちゃいけなかった?ごめんなさい、もう会わない。」

「いえ、そのような事は。道標様はなんとおっしゃっていましたか?」

「きんそくちには、せかいじゅがあって、そこに来なさいって。うんめいのわ?りんねのいと?をただしくまわしなさいって。」

 三人の神官は揃って居住まいを正し、璃凪に首を垂れた。璃凪はいきなりの事に慌てる。

「しんかんさま、どうしたの?」

「金瞳様、私たちは命を掛けて、金瞳様をお助けいたします。」

 璃凪には神官の言葉がまだ理解できない。ただとんでもないことを託されていることだけは理解した。そして尋ねる。

「きんそくちってなあに?せかいをまもるせかいじゅはそこにあるの?うんめいのわって、りんねのいとってなあに?」

「金瞳様、順にお話ししましょうね。そしてこの絵をご覧ください。ここに跪いている二柱の神が、道標と審判の神、挑戦と芸術の女神です。創世神の背後にいるのが、創世神に仕える四人の熾天使、導きと変容の女神の背後にいるのが、女神に仕える智天使です。そして絵の四隅に描かれている大きな生き物たちは、創世神と導きと変容の女神に仕える神獣と神鳥なのです。彼らが住まうところが禁足地と呼ばれるところなのです。」

 璃凪はやっと理解した。どーひょーさまは、自分のところにおいで、って言っていたんだ。そして、そこにはきっと世界樹があって、女神さまや天使さまたちなどがいるのだろう。一度にいろんな話を聞いて、幼い璃凪には頭を整理する必要があるのか、なんだか急に眠くなってきた。

 神官たちはその様子を見て、微笑む。璃凪の頭を撫でて、絵本を閉じた。

「少しお昼寝をしましょうね。また絵本を読んで差し上げます。」


 そんな風に、璃凪の毎日は過ぎていく。庭を駆け回って遊び、石を掘り起こしては、宝石に変える。神官たちが、宝石を手に、御寄進いただいても?と聞くので、宝石は全部神官たちに渡した。色とりどりの宝石はとても綺麗で、楽しすぎて、たくさん宝石に変えた日は、決まって熱を出して寝込んでしまう。数日寝込んだ後は、なんだか体がスッキリして、熱を出す前より綺麗な宝石にたくさん変えることができるようになる。

 そして神官たちは絵本を最後まで読んでくれた。

 創世神と導きと変容の女神は、何人かの子を設けた。その子供たちは人間と交わり、その末裔は十二支族と呼ばれているそうだ。時に、争いが起き、また、熾天使と智天使の間でも諍いが起きた。

 璃凪は驚いた。なぜ、天使たちが争うのだろう?

「どうして、てんしさまたちがあらそうの?」

「それは必要なことだったのです。運命の輪が時に止まり、輪廻の糸が絡まったしまった時に、何か新しい変化が必要だったのです。それが諍いという形になったのです。全ては道標と審判の神の導きだったのです。」

 そして、どうしても世界が乱れた時に、先祖返りして神に近しい力を持つ金瞳が生まれる。その金瞳の使命は、運命の輪を正しく回し、輪廻の糸を正しく紡ぐこと。道標さまが璃凪に伝えたかったことは、このことなんだろうか?そして世界が乱れているのだろうか?

 璃凪は幼すぎて、神官の話す言葉を全ては理解していない。だけれど、何かとても困ったことが起きていて、璃凪はそれを正すことを要求されていると理解した。ただ、何故それが自分なのだろう?

 璃凪は一人でも繰り返し、絵本を見ていた。いつの間にか文字を覚え、スラスラと読めるようになっている。絵本の内容は全て頭の中に入っている。そして、なぜ自分が金瞳と呼ばれるのか不思議でたまらない。もしかしたら、金色の瞳をしているのだろうか?金瞳は璃凪にとって何か得体の知れない、恐ろしいもののように思えた。

 ある日、璃凪は母親の部屋に忍び込んで、鏡を見つけた。自分の姿を鏡に映してみる。鏡に映った自分の姿はなんだか不思議だ。璃凪は皆から母親によく似ていると言われている。髪の色は母親と同じ赤で、璃凪は嬉しくなる。ただその瞳の色は、淡い琥珀色ではなく、輝く金色の瞳だった。

 その瞳は、幼い璃凪にとって恐怖の対象だ。金瞳。神の末裔。神に似た力。璃凪はまだ幼くて、世界はとても大きくて、そんな世界を相手に何かを成し遂げるには、あまりにも小さくて無力だ。何故、自分の瞳は金色なのだろう?なぜそんな恐ろしいものなのだろう?

 鏡の前で声を上げて泣きじゃくる璃凪を見つけて、母親が抱きしめてくれた。

「りなちゃん、一体どうしたの?」

「ママ、どうして、りなの目はママとおんなじじゃないの?ピカピカ光って、へんな目。」

「大丈夫よ、りなちゃん。みんながあなたを守っているから。」

 璃凪は、家の周囲に感じる複数の気配のことを思い出した。あの人たちは璃凪を守ってくれている?

「悪い人がりなをさらいにこない?」

「ええ。来ない。皆でりなちゃんを守っているから。だから安心して、毎日楽しく遊んで、やりたいことをすればいいの。嫌なことなんかしなくていいの。それがりなちゃんにとって大切なことで、ママたちみんなの願いだから。」

 ようやく璃凪は落ち着いて、泣きじゃくっていたことも忘れて、朗らかに笑う。金色の瞳をしていても、困難なことをしなくてもいいんだ。毎日、遊んで楽しく暮らしていいんだ。また、パタパタと庭に行っては、石を掘り起こして宝石に変える。

 夕食の時は家族だけでなく、神官たちも加わり賑やかだ。父親も帰宅する日は、皆で揃って食事をする。夕食の時に璃凪はニコニコ笑って、父親に一日の出来事を話すのが日課だ。

「パパ、あのね?りな、たくさん、きれいな石にしたの。いろんな色で、とてもきれいな石。パパはどんな色がすき?」

「そうだね、僕は青が好きだな。海の青。」

「じゃあ、おっきな青い石にする。石がね、かわりたいって、りなにいうの。」

「石が言うのかい?」

「うん。青い石になりたいとか、赤い石になりたいとか、みんないってくるの。でも、りな、青い石にする。」

「そうか、それは楽しみだ。璃凪の名前はね、海の色からつけたんだよ。」

「うみ?」

「いつか連れて行ってあげるよ。璃凪の名前は、瑠璃色の凪いだ海、って言う意味なんだ。」

 不意に、璃凪の脳裏に、穏やかに凪いだ見渡す限りの青い海の光景が浮かんだ。白い波が浮いては消え、太陽の光を浴びてキラキラと光る。いつ、この光景を見たのか、璃凪には思い出せなかった。

「りな、うみにいったことあるの?」

「いや、いつか行こうね。こんな山奥じゃなく。」

 父親の声には、少しの憐憫の色があった。それより璃凪は、初めて知る事実に驚いていた。ここは山奥なの?また不思議な映像が頭に浮かぶ。それははるか上空から俯瞰する視点だ。緑豊かな山の斜面に城壁のような堅牢な白い壁に囲まれた、小さな一軒家。そこが璃凪の全世界だ。そして、外の世界は恐ろしく広くて、恐怖すら覚える。

「ううん、りな、このお家にいたい。出たくない。」

「うーん。璃凪が五歳になったら、本神殿にみんなで行こうね。もうすぐ準備が整うんだ。」

「ほんしんでん?」

「世界樹教の中心だよ。そこは、とても大きな白い綺麗な建物があって、璃凪が安心して遊べるところなんだ。」

 その言葉の裏に、璃凪は何か不安な気持ちになる。この家では安心して遊べないと言っている気がする。何か危険な事が待っているのだろうか?それでも幼い心は移ろいやすい。気持ちはすぐに甘いデザートに惹きつけられる。美味しい美味しいとお菓子を食べる璃凪を、大人たちは微笑んで見守ってくれた。

 お腹いっぱいになって眠くなった璃凪を、父親が抱き上げてベッドまで運んでくれる。そして、璃凪の頭を撫でて、璃凪の隣に大きなぬいぐるみを二つ、置いてくれた。

「今日もお利口さんのりなちゃんに、お土産だよ。」

 璃凪は目を見開き、嬉しそうに抱きしめた。

「パパ、これ、しんじゅうさんだ。そうでしょ?」

「うん、神獣様だ。大事にするんだよ。」

「ありがとう、パパ。」


 神獣のぬいぐるみという璃凪の家族が増えて、ますます璃凪の日常は賑やかになった。流石に庭にぬいぐるみを連れて行こうとしたときは止められたけれど、家の中では璃凪はいつだってぬいぐるみを抱えている。ぬいぐるみは大きくて、小さな璃凪が抱っこしたら、床に引きずるような大きさだ。

 璃凪が庭で遊んでいるときは、ぬいぐるみはリビングのソファでお留守番だ。庭の石を宝石に変えて、手と宝石を綺麗に洗ってから、恭しくぬいぐるみの前に宝石を並べて献上する。

 その中に特大の青い宝石もある。父親が好きだから、掘り起こした石を青い石に変えた。その石は、緑色になりたいと言っていたけれど、璃凪は構わず青い石に変えた。石は最初、ぶつぶつ文句を言っていたけれど、最終的には青い色も悪くない、と言っていた。だったら最初から抵抗しなければ良かったと思う。望みの色以外に変えるときは、いつもの倍以上疲れてしまうのだ。神官たちはニコニコと笑って、また御寄進をと言っているけれど、青い宝石だけは渡さなかった。これは父親へのプレゼントなのだ。

 父親が帰宅したとき、璃凪は神獣のぬいぐるみに献上した青い宝石を小さな両手に抱えて、ニコニコ笑いながら父親に渡した。

「パパ、おっきな青い石、あげる。」

 父親の目が驚愕に見開かれた。母親や神官たちから話は聞いていたが、実際に目にするのはこれが初めてだったからだ。璃凪の手の中で、透き通って輝く青い宝石、その美しさと大きさを見て、改めて自分の娘に畏怖の念すら抱いたのだ。

 固まってしまった父親を見て、璃凪は悲しそうに見上げた。

「パパ、この石、きらい?りな、また青い石、つくる?」

 慌てて父親は、表情を取り繕い、璃凪の手から宝石を受け取った。

「いや、大好きだよ、りなちゃん。あんまり綺麗で、大きくて、パパはびっくりしただけなんだ。ありがとう。」

 そして手にした宝石を試す返す見つめ、表情を引き締めた。

 その夜の夕食は、なんだか変な雰囲気だった。父親が、神官に尋ねている。問い詰めている、と言う雰囲気だ。

「璃凪の能力は想像以上だ。一体これは?」

「おそらく、変容の権能と思われます。記録にもこのような金瞳の能力は残っていません。おそらく、今までで一番強力な神力をお持ちかと。」

「このままここに残していて安全なのですか?」

「まだ金瞳様の存在は、神殿によって秘匿されています。他家に気付かれている気配はありません。金瞳様が五歳になれば、神殿預かりの孤児たちに紛れて一緒に、神聖地区の本神殿に連れて行きます。」

「ですが、どの大陸も、出国する子供に対して戒厳体制をしいています。璃凪を出国させることは危険ではありませんか?」

「金瞳様には、世界樹の実を食べていただきます。一時的に瞳の色を変えて、神力を抑制するものです。」

「なるほど。ですが五歳?もっと早くには無理なのですか?」

「世界樹の実は、金瞳様が幼すぎるとお体に負担がかかります。ですから五歳までお待ちしているのです。金瞳様が五歳になられましたら、神殿の神官長がお迎えにあがります。」

 父親と神官たちの会話は、璃凪にはほとんど理解できなかった。だけど、五歳になったら、どこか別のところに連れて行かれることだけは分かった。神聖地区の本神殿?神殿の神官長がお迎えに来てくれる?両親と離れ離れになってしまうのだろうか?

 不安そうな璃凪の頭を、父親が微笑んで撫でてくれた。

「りなちゃん、五歳になったら、良いおじさんが迎えに来てくれるって。とても素敵なところに行くんだよ。」

「パパとママは?いっしょにいかないの?」

 泣き出しそうな璃凪を、父親と母親が代わる代わる抱きしめてくれた。

「もちろん一緒だよ。必ずりなちゃんのところに行く。だから安心して。」

 璃凪は両親から抱きしめられて安心した。五歳になったら、良いおじさんが迎えに来てくれる。そしたら、両親と一緒にとても綺麗な所に行くのだ。


 そうして璃凪の五歳の誕生日を迎えた。だけど迎えにきたのは、良いおじさんではなかった。 


しばらく、璃凪の幼少期の話が続きます。

少しくどいですが、この世界の世界観も説明が続きます。

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