10 試練に次ぐ試練、その先に。
「ショウマ、本当にこれ素敵ね。」
ノーラたちは、腕のブレスレットをうっとりと眺めていた。キラキラ輝くブレスレットは、実に精巧な繊細な作りだ。鎖の輪一つ取ってみても、とても繊細な装飾が施され、そして飾られている宝石は、細やかな彫刻が施されている。ノーラはうっとりと簡単の声をあげる。
「どうやったら、宝石をこんなふうにカッティング出来るんだろう。」
十二支族会で武術訓練の後、ノーラたちは翔馬の周りを取り囲んで、口々に礼を言っていた。そして、ノーラたちはクスクスと笑って、ことの顛末を話し始める。
*
東條崇斗の取り巻きの一人、春川麗が翔馬に近づくのをやめて以来、別の取り巻き、北見紗英がやたらとノーラたちにつっかかってくるようになっていた。つまらない見栄の張り合いだけれど、十二支族って大したことない、という言葉は痛くノーラの自尊心を傷つけていた。そして新年休暇明けの最初の十二支族会で、憧れのオーシャン・ブルーのブレスレットを貰って、かなり有頂天になっていたのかもしれない。
教室で、ノーラたちが集まって、くすくす笑いながらお互いのブレスレットを見せ合っていると、北見紗英が小馬鹿にした顔で、大勢の取り巻きを連れてノーラたちのそばに歩み寄ってきた。
「あら、シャラポフさん、何かいいことでもあったの?」
「ええ、キタミさん。とてもいいことがあったの。でも秘密。」
「それって、その手首のもののことかしら。おめでたいわね、偽物を身につけて喜んでるなんて。」
「あら、どうして偽物って言うの?」
ノーラたちは一斉に手首を差し出した。北見紗英の目が見開かれ、じっとそれを厳しく検分し、次第に険しい色を帯びる。
「ショウマにおねだりしたの。そしたら、特別にプレゼントしてくれたの。ほら、あのデザイナー、モチヅキのお抱えのデザイナーでしょ?使って欲しい宝石とモチーフを伝えたら、その通りに作ってもらったの。特別製の最新作。やっぱり本物は違うわ。鎖の輪ひとつとっても、とっても綺麗。」
北見紗英が手を伸ばそうとすると、咄嗟にノーラたちは手を引っ込めた。
「触らない方がいいわ。すごい高級品だからって、スターリング先輩に盗難防止の機能をつけてもらってるの。持ち主以外が触ったら、とんでもないことになるわ、きっと。」
そして、気の毒そうに北見紗英を見つめる。
「あなたのには、盗難防止ついてないの?ショウマが言ってたけど、オークションでしか売られてなくて、どれもとんでもない額らしいの。危険だわ、あなたのお友達に頼んで、すぐ盗難防止つけてもらった方がいいわ。」
北見紗英は悔しそうに自分の手首を隠した。本物を前にすると、その違いは一目瞭然だったからだ。両親に強請って買ってもらったものが、オーシャン・ブルーの偽物だったなんて、酷い屈辱だった。そもそも、オーシャン・ブルーの作品が簡単に手に入ること自体、偽物の証拠だった。
「随分、望月家と仲がいいのね。」
「ええ、十二士族同士だから。あなた、モチヅキと仲が良くないの?同じ東大陸出身なのに?仲良くしたら、きっといいことあるのに。私たちみたいにね。」
「ふうん、そんな高価なものをプレゼントされて、誰が望月翔馬の本命なのかしらね?そのうちの四人はダミーってわけかしらね。」
「あら、そんなわけないじゃない。だって、ショウマには婚約者がいるのよ?」
ノーラたちはクスクス笑って、北見紗英を無視して楽しそうに会話を始めている。北見紗英の完敗だった。東條崇斗は同じ教室にいたが、女同士のつまらない言い争いを興味なさそうに聞き流していた。だが、翔馬の婚約者、という言葉には、ピクリと眉を上げて反応したことに、周囲の誰も気が付かなかった。
*
その話を聞きながら、翔馬は少しばかり頭が痛くなっていた。その場にいる全員は、ゲイジ・スターリングを通して、聖遺物のレプリカを仕込んだネックレスを渡されている。そのネックレスを手にとって眺めながら、話を聞いていた皆は小さく笑った。出雲が呆れたように口を開いた。
「これもとんでもない品だな。なんかすごい機能がついている。」
「スターリング先輩のお陰ですよ。」
「うん、そういう事にしとこう。望月、これからが大変だぞ。」
「大変とは?」
「女のクチコミを甘く見るなっつうこと。」
その場にいる全員が苦笑しながら頷いていた。果たして、翔馬はその言葉の通りの試練を受ける事になる。
「翔馬様、私たちは翔馬様のお友達では無いんですの?」
その翌日には翔馬たちは、女子学生の一団に取り囲まれていた。彼女たちは、うるうると目に涙を浮かべている。翔馬は少し頭が痛くなってきた。
「確かにノーラ様は、十二支族直系のシャラポフ家のお嬢様です。でも私たちだって、末端とはいえ十二支族の家門なんです。」
それは、つまり。翔馬は学友の一人に目で合図した。彼は、制服の前ボタンを外して、チラリとネックレスを見せる。途端に彼女たちの目が輝いた。翔馬のネックレスは、五個限定の宝石付きだ。迂闊に見せるわけにはいかない。
「ああ、ごめんね。ものがものだけに、渡すタイミングを見計らっていたんだ。もちろん君たちにもあるよ。このネックレスだけどね。同じ形に見えても、ネックレストップの彫金は一つ一つ違うんだ。君たちが一番最初に気に入ったものを選ぶといいよ。スターリング先輩が盗難防止機能をつけてくれて、預かってくれてるんだ。」
女子学生たちは喉を鳴らす。
「これは、もちろん、その?」
「もちろん、それだよ。君たちの友情と、僕や十二支族への協力と結束の証にね。」
スターリング先輩、全部投げます。ごめんなさい。翔馬は心の中で手を合わせた。
それからは大変だった。女子学生たちの身元を確認しながら、少人数ずつ、スターリング家に連れていく。彼女たちは目を輝かせて、じっくりと柄を選び、ゲイジとユリウス、翔馬の立ち会いの下、目の前で、盗難防止の聖遺物のレプリカと契約を結んでもらう。念の為、彼女たちの身元確認を再確認しようと、聖遺物のレプリカをかけた翔馬を見て、女子学生たちは笑った。彼女たちの年齢は意味もなく笑うものらしい。
「翔馬様、眼鏡をかけるんですか?」
「うん、小さいものを見るときはね。」
「まあ、翔馬様、おじいちゃんみたい。」
老眼扱いされてしまった。失礼なことこの上ないが、ここで怒っても仕方がない。彼女たちはあれでもない、これでもないと、熱心にネックレスを物色していた。そして紅潮した顔でうっとりと言う。
「ああ、ああ、とても素敵です。」
ゲイジが人の悪い顔で笑った。
「君たちね、ここにザラザラあるからっていって、どれほどの価値があるかわかる?家宝ものだよ。大事にしなよ。」
「ええ、ええ、わかってます。でもいつかきっと私たちにもあんなブレスレットを・・・。」
女の欲望は止まるところを知らないらしい。
***
璃凪は九歳になった。もうすぐ、翔馬の学年末の休暇だ。
璃凪の体にはいよいよ、世界樹の実八個分の神力が満ちてきている。体の中のナルバスティブ神金もこれ以上増やせないほど増えていた。挑戦の女神の課題をこなす時が来たのだ。
璃凪は両親たちに告げた。
「璃凪ね、これから挑戦の女神様の課題をする。きっと時間がかかるし、体も弱ると思う。でも、必要な事なの。」
母親は泣いていて、それを父親が背中を抱いて慰めていた。神官たちはひどく神妙な顔で、入江をはじめとする護衛たちは沈痛な表情だった。前回の出来事を知らない風間親子は、何か不穏な気配を察して緊張した面持ちだった。そこに急遽、望月冬馬も見守ろうと駆けつけていた。
璃凪が両手の平を天にかざす。璃凪の右手からするするとナルバスティブ神金の糸が宙に伸びてきて、クルクルと不思議な紋様を描き始める。所々、糸が絡まって玉になり、そこから何本かの糸が延び始める。そして精巧で美しい立体画と変わっていく。
璃凪の頭の中には、挑戦の女神が示してくれた神聖画の図譜が正確に入っている。幾つかの工程の機能を持つ、複雑な聖遺物だ。それまでの聖遺物と異なり、成長の力を使わないと復元できないものだった。
璃凪はこの時のために、神力を蓄え、ナルバスティブ神金を増やし、何度もイメージトレーニングをしていた。ナルバスティブ神金を成長させるのは神力を極限まで使うので、やり直しは難しく、一回で復元するつもりだ。失敗する気は無いし、許されもしない。
一時間も経っただろうか、するすると糸が美しい立体画を作り、ぷつりと璃凪と結ぶ糸が切れて、まるで仕上がりを確かめるように、クルクルと宙で舞った。そしてぎゅっとそれが圧縮されて、璃凪の手の中にふわりと落ちてくる。
璃凪は神力を極限まで使っていた。搾り取られたかのように、全身が悲鳴を上げる。ナルバスティブ神金も体からごっそり引き抜かれた。両足が、弱々しく薄く神金で覆われているだけで、ひどく空虚だ。
「かはっ。」
璃凪は口を押さえて、血を吐いた。そして体が崩れ落ちるようにソファに倒れ込み、ずり落ちそうになる。慌てて両親と入江が璃凪に駆け寄り、体を支えた。
その場にいた全員が、その神秘的な光景に目を奪われ、続く璃凪の惨状に心をひどく揺さぶられて、涙を流していた。望月冬馬が目にうっすらと浮かんだ涙を拭いながら、尋ねた。
「璃凪ちゃん、これは?」
「ハイドロジェレウム変換器。」
苦しそうに璃凪が返事をした。
「発動条件は?」
「お水につける。お水がある間は変換し続ける。」
そう言い終えると、璃凪はもう一度血を吐いて、意識を失った。
***
翔馬たちが、物理的危険から身を守る聖遺物のレプリカを女子学生たちに渡し終えると、女子学生たちに対する嫌がらせは激減した。彼女たちは決して、その機能を理解しているわけではなく、それを覆ってカモフラージュしている、オーシャン・ブルーの手による装飾に価値を見出していた。そのネックレスは羨望の的になり、しかも持ち主以外が迂闊に触れようとすると、体が麻痺して気を失うという機能までついている。十二支族以外でも翔馬と仲良くなれば、もしかしたら手に入るかもしれないという噂も蔓延していた。
代わりに男子学生に対する嫌がらせは激しさを増し始めていた。思わぬところからボールが飛んできて頭を直撃するなど、日常茶飯事だった。翔馬たちは、男子学生にも聖遺物のレプリカを渡した。十二支族の直系は六年生にはいなかったが、彼らにも被害が蔓延していて、十二支族に連なる家門の全員に渡し終えたのは、春になってからだった。
聖遺物は自動的に発動し、例えば飛んできたボールなどは不自然ではなく少し軌道を変え、難を逃れるようになった。そうなると、これが十二支族の護りで、危害を加えると何か呪いがかけられる、という噂が流れ、嫌がらせは減っていった。
そして、噂といえば、東條崇斗と春川麗が婚約間近という噂も蔓延していた。その出所は、春川麗本人で、春川家は東條崇斗の母方の親戚になり、麗と崇斗ははとこの関係になる。そしてその噂を裏打ちするのは、東條崇斗の態度だった。否定も肯定もせず、曖昧に笑っているのだ。
そしてまた、東條崇斗が翔馬の教室に現れた。大勢の取り巻きに囲まれ、彼はひどく冷たい顔を穏やかな笑顔で覆い、背後に北見紗英と春川麗を伴っている。
「望月翔馬君、ちょっといいかな。」
「はい、どうしましたか?東條先輩。」
東條崇斗は少しうんざりした顔だった。
「俺の家門の女の子に泣きつかれてね。少し困っているんだ。」
「泣きつかれたとは。」
翔馬はわかっていて、少し意地悪い気持ちで聞き返す。東條崇斗も、翔馬の気持ちを察したのだろう、ニヤリと笑った。
「君のグループ会社の専属デザイナー。この二人がどうしても欲しいと泣きついてね。どうにかならないものかな。金ならちゃんと払う。」
翔馬は苦笑した。東條崇斗は家門に属する女の子を道具にしているのに、ずいぶん優しいものだと思う。しかも太っ腹だ。
「先輩、無理を言わないでください。僕が無理を通したせいで、そのデザイナー、へそを曲げてしまったらしいんです。しばらく休業宣言まで出して。芸術家によくある気まぐれです。察してください。」
「そこを何とかお願いできないものだろうか?」
翔馬は元々受ける気はないが、かなり意地悪な気分になっている。
「先輩、頼んではみますが、二つは無理、一つだけと言ってきたらどうします?揉め事の種は避けておいた方がいいのでは?」
「ああ、その場合は。」
東條崇斗は、ふと優しい目で春川麗を見た。春川麗は勝ち誇った顔になり、北見紗英はぎりっと唇を噛み締めた。噂はどうも本当のようだ。春川のような女を好むとは、ずいぶん東條崇斗も趣味が悪い。
翔馬は小さく笑った。
「頼んではみます。でも結果はあまり期待しないでください。」
「わかった。助かるよ。」
東條崇斗は取り巻きを引き連れて、教室を出て行った。翔馬は内ポケットから眼鏡を取り出し、東條崇斗の後ろ姿を見てどきりとした。
その数字は9889/10223だった。
そして、翔馬たちが、出雲家の所有する海岸で、新たにハイドロジェレウム源泉が発掘されたと知らされたのは、学年末の休暇の間際だった。
授業が終わって寄宿舎に帰るなり、出雲が翔馬にいきなり抱きついて、涙を流した。
「ありがとう、望月。俺は、望月家に忠誠を誓う。親父だってきっとそうだ。」
翔馬は出雲の背中をぽんぽんと叩いた。
「共同開発に出資しただけですよ。」
表向きは、資金難に苦しむ出雲家の開発に、オルパパスタイト王金鉱山で潤った望月家が出資したことになっている。だけど、それに金瞳が関わっていることは、十二支族であれば誰でも容易に推測できたはずだ。おそらく東條家も把握しているだろう。ただ、その金瞳が、望月家に保護されているのか、出雲家に保護されているのか、少しばかり情報が混乱しているに違いない。
そして翔馬は陰鬱な気持ちになる。前回、璃凪が復元した聖遺物は、金属をオルパパスタイト王金に錬成するものだった。金属の近くにその聖遺物を置くと、聖遺物がトリガーとなって自動的に金属をオルパパスタイト王金に錬成していくものだ。金属なら何でも構わない。金属が尽きるまで、それは自動的に続いていく。試しに錆びた鉄屑を置いておくと、それが三日もすれば、全てオルパパスタイト王金に変わっていた。最初のトリガーになるだけで、その後は自動的だ。まるで核融合炉のようだが、熱や放射能や電子の放出はない。それはオルパパスタイト王金が、全ての元素から超越したものだからだろう。
対して、ハイドロジェレウム変換装置は一体どんなものだろう?ハイドロジェレウムは、神のもたらした祝福で、エネルギー源となる液体だ。一定の熱を加えると空気中の酸素と反応して高温を発する。ほんの少量で、凄まじい量の電力を発電することができる。そしてそれと付随して光子も発する。いまだに人類は、光子を情報伝達以外には活用出来ないでいる。そして燃焼した後は水になって、環境を一切破壊せず自然に還る。しかも熱を加えるまでは安定で、液体水素に何か別のものを付加したようなものだが、その別のものが何であるかは未だに判明していない。
オルパパスタイト王金錬成装置には、璃凪は四個相当の神力が必要だと言っていた。そしてハイドロジェレウム変換装置では八個相当の神力が必要だと言っていた。確かに不安定なものをより安定したもの変えるより、安定したものを不安定な励起された状態に変える方がより難しい。とんでもない神力を使ったはずだ。前回は、璃凪はまともに歩けなくなり、回復するまでずいぶん時間がかかっている。ようやく回復したばかりで、一体璃凪は今どんな状態になっているんだろう。
でも、璃凪の訃報はまだ聞いていない。それだけが翔馬の心の拠り所だ。
そしてその知らせは、十二支族会にも小さな軋轢を生み出していた。南大陸のカリム・アルアサドが、いきなり出雲の襟首を掴んだのだ。
「おい、アキノブ、お前、どういうつもりだ。」
アルアサドの領土では、ハイドロジェレウムを採掘していて、それを他の大陸に輸出して大陸全体の事業としていた。しかし、アルアサド家に金瞳が生まれなくなって数世紀経過し、やっと現れた今代の先祖返りも、新たな源泉を発見するまでの能力をまだ持っておらず、少しずつ採掘量が減っていたのだ。将来的には別の事業に切り替えざるを得ない状況だった。
そこに、新たなハイドロジェレウム源泉の発見の一報だ。このままでは輸出先を全て失って、事業そのものも無くなってしまうかもしれない。彼としては、落ちぶれた十二支族であるからと出雲を何かと助けていたのに、ひどく裏切られた気持ちだった。八つ当たりに近いが、その気持ちを抑えることが出来ない。
慌ててユリウスと翔馬が引き離し、出雲は小さく咳をしていた。じろりとカリム・アルアサドは翔馬を睨みつけた。
「飼い犬に手を噛まれた気分だな。」
「アルアサド先輩、出雲家の産出量は多くありません。東大陸だけで手一杯なんです。アルアサド家の事業を奪うことはありません。」
出雲はそう言ったが、根拠もなくそれは嘘だと全員が分かっていた。ユリウスはアルアサドの腕を握った。
「先輩、もう少ししたら、主体は中央大陸に移ります。中央大陸は五大陸の均衡を守ります。必ず先輩の力になります。」
ユリウスは、それが何を意味することかはあえて口に出さなかったが、皆が金瞳が中央大陸に渡ることだと理解した。翔馬の心はすうっと冷えていく。璃凪が中央大陸に行く。それは璃凪にとって必要なことだとは分かっているが、自分の手の中から出ていくことに、ひどく抵抗を感じていた。
カリム・アルアサドは少しばかり目が血走っていた。
「それは一体いつの話だ。」
「東大陸が安定するまで待ってください。」
「東條か。」
ふうっとカリム・アルアサドは息を吐いた。金瞳が中央大陸に渡るには、東條家が大きな障害になっている。今では東大陸の大半が、東條家の支配下にあった。金瞳を迂闊に動かそうものなら、その隙をついて東條家が金瞳を強奪していくだろう。
東條による東大陸の支配を弱めなければ、金瞳を中央大陸に移動させることができない。そのための布石としての、望月家の鉱山の発見であり、出雲家の源泉の発見であるとは理解する。だが零落の一途を辿る十二支族としては、その誇りがひどく踏み躙られていくことにやるせない憤りを感じていた。頭で理解しても、どうしても感情が追いつかない。必死に感情を抑えながら、カリムがユリウスに尋ねる。
「それは本当だな。」
「ええ、本当です。先輩、必要な手順だとご理解ください。」
その場は何とか治まったが、また事件が起きたのだった。




