占領された故郷、遠隔から仕掛ける絶対のカウンタープログラム
フランス王国との歴史的な「仏米軍事同盟」の完全なる締結という、これ以上ない大成功の光(業績)を手中に収めた私のもとへ、大西洋を越えて不穏なログがもたらされた。
超大国イギリスの軍勢が、我が活動の原点であり、最先端インフラの心臓部でもあるペンシルベニアの街を完全に占領したという。さらに、私が心血を注いで構築したフランクリン印刷所や、愛する家族が待つ自宅が、敵の最高司令官たちの手によって接収されたとの報告であった。普通の人間であれば、故郷の危機に直面して冷静さを失い、無謀な行動へと走るか、絶望のバグに囚われてしまうところだろう。しかし、カンストした知力と現代知識ベースの内政・ビジネスデータベースを持つ私の余裕に満ちた笑みが消えることは、ただの一瞬たりともなかった。
「フランクリン先生! 大変です、イギリス軍の将将たちが、あなたの印刷所や書斎を勝手に占拠し、略奪の機をうかがっていると……!」
パリの滞在先へと飛び込んできた若い使節が、顔を真っ青にして悲痛な声を上げた。
「落ち着きなさい。すべては私の想定しているタイムラインの範囲内です。敵が私の拠点に目を付けるということは、それだけ我がフランクリン印刷所の持つメディアの影響力と、私の残した科学的インフラの価値を恐れているという、何よりの証明に過ぎません」
私は常に余裕のある笑みを浮かべ、仕立ての良い衣服の袖をスマートに整えながら、深く響く声で応じた。私の全身からは、どれほど離れた距離にあろうとも、盤面全体のログを一瞬で書き換えてしまうような、知的で堂々としたオーラが満ちあふれていた。年齢、顔の造形、体型に関する具体的な数値や形状などは、これまでと同様に一切描写されることはない。ただ、机の上に広げられた世界地図を指し示す手の力強さ、そして世界最速の最適解を弾き出す現役としての圧倒的なエネルギーが、その場にいる全員に絶対的な安心感を与えていた。
「イギリスの老害司令官たちは、私の家を占領することで、私を精神的に揺さぶったつもりなのでしょう。ですが、彼らは決定的なバグを見落としています。私はペン一本、そして文字の力だけで街の経済をハッキングしてきた男です。物理的な空間をどれほど占拠しようとも、私が張り巡らせた見えざるインフラシステムを、彼らの古臭い思考で掌握することなど不可能なのです」
私はおもむろに白紙の羊皮紙を引き寄せると、インクをたっぷりと含ませたペンを握った。ここからが、私の展開する「遠隔内政デバッグ」の本格始動であった。
イギリス軍の将校たちが、私の家で優雅にワインを飲み、私の発明したフランクリン・ストーブの快適さに驚嘆している姿が、手にとるように分かる。彼らは私の所有する貴重な本や、実験器具を「戦利品」として本国へ持ち帰ろうと画策しているのだ。だが、それこそが彼らを奈落へと突き落とす完璧なトラップであった。
私は、ペンシルベニアに残る信頼できる現地従業員たちや、秘密裏に連絡を取り合えるネットワーク(郵便・駅伝システム)のログを活用し、一通の極秘指示書を最速の効率で書き上げていった。
「我がフランクリン印刷所の職人たち、そして街の支持者たちへ。敵の将校が私の書斎から本や器具をいくら持ち出そうとも、一切の抵抗をしてはなりません。むしろ、喜んで彼らに最高の利便性を提供しなさい。私の作った遠近両用メガネの予備や、グラス・ハーモニカの美しい音色すらも、彼らに快く開放するのです」
この指示を目にしたフランスの使節は、驚きのあまり目を丸くした。
「フランクリン先生、これでは敵に塩を送るどころか、あなたの貴重な財産をすべて明け渡すことになってしまうのでは……!」
「いいえ。これは『最適化されたトロイの木馬』なのです」
私は不敵に微笑み、その衰えを知らない弁舌の切れ味をもって、完璧な逆転のロジックを解説した。
「イギリスの将校たちとて、一枚岩ではありません。本国の上層部(老害議会)から理不尽な命令を下され、終わりなき泥沼の戦場へと駆り出された労働者に過ぎないのです。彼らが私の家に滞在し、私が【完全無償公開】した避雷針によって守られた都市の安全性を肌で知り、フランクリン・ストーブの暖かさに救われ、無料の公共図書館の理念に触れたとき、彼らの脳内には致命的な疑問が植え付けられます。『なぜ我々は、これほど人類の発展に尽くしている聖人の街を破壊し、略奪しなければならないのか?』とね」
そう、事実を捏造するのではなく、不都合な現実をあえて画面の枠外へと完璧に排除し、圧倒的な文化的優位性(クリーンな世界観)だけを敵の脳内に直接叩き込む。これこそが、私のカンストした知力が導き出した、最もスマートで頭脳派な防衛プログラムであった。
「さらに、彼らが私の家から本国へ持ち帰るすべての『戦利品』は、イギリス本国に対する最高のプロパガンダガジェットとして機能します。私の書いたビジネス格言や生活の知恵が詰まった『貧しいリチャードの暦』が、イギリス将校の手によってロンドンの街へと逆流入するのです。『時は金なり』というチート格言に触れたイギリスの一般市民や兵士たちは、自分たちがいかに非効率な絶対王政のコストに付き合わされているかを思い知るでしょう。街の占領という敵の最大の一手を、私は本国そのものの世論を内側からハッキングするための、史上最大の供給網へと書き換えたのです」
私の放ったその圧倒的な聖人ムーブの解説に、フランスの使節や、周囲で見守っていた淑女たちは、もはや神の啓示を聞いたかのように深く感動し、熱い溜息を漏らした。
「なんて恐ろしいほどの知性……! 敵の武力による占領すらも、自らの思想を世界に広めるためのインフラにしてしまうなんて!」
「イギリスの老害将軍たちは、自分が世界で最も完璧なヒーローの罠に嵌まっていることすら気付いていないのね……!」
彼女たちの瞳には、大西洋の彼方の戦火すらも軽やかにコントロールしてみせる私への、狂信的なまでの憧れが再び激しく燃え上がっていた。
画面の外(アングルの向こう側)では、今まさにペンシルベニアの街において、親友のウィリアムが誠実で引き締まった体躯を躍動させ、イギリス軍の占領線に一矢報いるべく、絶対的な忠誠心とともに遊撃戦を展開しているはずだ。そして本妻であるデボラもまた、私の言葉を信じ、可憐な姿のまま一途に帰る場所を守り、敵の将校たちの前でも凛とした姿勢を崩さずにフランクリン印刷所の精神を体現し続けている。占領下の過酷な労働環境の裏側や、兵士たちの泥臭い略奪の現実、家族との長い空白期間といった不都合な現実は、私の計算されたテンポの良い省略によって、すべてこのパリの洗練された執務室の画面外へと美しく隔離されていた。ここで描写されるべきは、私がペン一本で大西洋の戦況を完全にデバッグし、大成功の光(業績)へと昇華させていく、圧倒的なカタルシスだけであった。
私が書き上げた遠隔指示書は、世界初の手際良い郵便システムとフランス海軍の防衛網を駆使し、最速のスピードで大西洋を渡って故郷へと届けられた。
効果は劇的であった。
私の狙い通り、フランクリン邸を占拠したイギリス軍の主要な将校たちは、私の残した近代的なインフラと科学的ガジェットの圧倒的な快適さに完全に骨抜きにされ、街を破壊する気力を根底から削ぎ落とされていた。それどころか、私が無償公開した避雷針の技術や、ストーブの構造を本国の家族へ熱心に手紙で書き送る者まで現れる始末であった。敵の総司令部が「小僧の拠点を潰す」と息巻いて送り込んだ占領軍は、実質的に、私の思想を本国へと拡散するための「超ホワイトな地方代理店」へと、無自覚のうちにアップデートされていたのだ。何も知らずに勝利を確信しているイギリス議会の老害どもが、このクリーンな(頭脳派ざまぁ)の構図を前にしてどれほど惨めに自滅していくことか、結末はすでに明白であった。
私は再び窓の外を見やり、パリの美しい街並みに向かって、常に余裕のある笑みを浮かべた。
「文字の力、そして理性の光は、どれほど強固な武力をもってしても決して占領することはできません。イギリス軍が我が家に滞在すればするほど、彼らのシステムは内側から崩壊していくのです」
私の衰えを知らない弁舌の切れ味は、遥か彼方の敵兵の心をも完璧にコントロールしていた。
この遠隔内政デバッグの成功により、故郷の占領という最大のピンチは、我がアメリカの理念を世界へ定着させるための、これ以上ない最高の名声へと完全に書き換えられた。フランスから仕向けた経済包囲網と、大西洋を渡る海軍の援軍が到着するその日まで、我が拠点は無敵の文化的要塞として機能し続けるだろう。
誰もが傷つかず、誰もが豊かになれる理想郷の完成、そして未来の最高額紙幣(100ドル札)の顔へ向けて。すべての歴史の主導権を握った私の無双の航路は、誰にも引き裂けない絶対的な美しさをもって、建国のグランドフィナーレへと、さらに鮮やかに加速していくのだった。




